福島正則/wikipediaより引用

豊臣家 豊臣兄弟

泥酔して家臣に切腹させたぁ? 酒豪武将・福島正則のシャレにならない酒乱伝説

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違法薬物と同じ 依存症は止められない

アルコールは合法であるとはいえ「薬物」です。

長期にわたって大量に摂取していると、身体的にも心理的にも「依存症」になります。

こうなると常に「酒が飲みたーい!」状態になってしまい、欲求に負けて昼間から飲んで、仕事にも行かずクビになるという話もあります。

これはその人の意思が弱いからでしょうか?

答えはノーです。

違法薬物などと同じく依存症が形成され脳がアルコールを欲する状態になっているから。

具体的に説明いたしますと、1つはドーパミンです。

アルコールはドーパミンの放出を増やす作用を持っており、「ドーパミンじゅわわ~」は快楽に作用。

これをとにかく再現すべくアルコールを欲する状態となります。

しかし依存症のメインはドーパミンでなく、さっき出てきた「グルタミン酸」と「GABA」です。

少し難しくなりますが、乗りかかった船ですので、船酔いせず最後までお付き合いください♪

ブラックアウトの話で説明したように、アルコールはグルタミン酸のNMDA型受容体の作用を弱めます。

逆に抑制系の伝達物質GABAに対しては受容体の作用を強めます。

総合すると酒を飲んだ状態は、いろいろ抑制されてほわわーんで気持ちい~状態となるのですが、この状態を繰り返すと脳がバランスを取るべくグルタミン酸の放出を増やし、GABAを出すのを控えはじめます。

つまりアルコールが入った状況で脳のバランスが取れている状態になっちゃうわけですが、逆に酒が切れた時には「グルタミン酸(興奮)過剰のGABA(抑制)不足」となるわけなのでイライラ、イライラ!

アルコールが入れば通常状態になるのですから、そりゃあ脳は

「はい、酒飲もう、酒のもう!」

となるわけですね。

 


「ちっちゃな小人さんが」「布団にびっしり虫が」

更に悪いことにアルコールは「耐性」が付きやすい薬物でもあります。

前回飲んだときと同じように酔っぱらうためには、その都度、必要な量が徐々に増えていき、アルコール自体は身体にも有毒ですからそうこうするうちに肝臓が壊れ、消化管がやられ、全身ボロボロになってしまいます。

甘く考えていると、本当に危険なんですよ。

なお、飲酒が長期になると精神依存と同時に身体依存を生じて、手が痺れたり、不安や発汗異常、ひどきときには痙攣まで発症。

ここまで来たら本気で治療をしないと、意識障害や幻覚まで見るようになります。

「ちっちゃな小人さんが~」

「布団にびっしり虫が付いている」

なんて言い出したら、本気で治療モードです。

そうでないと、この時期には「振戦せん妄」と呼ばれるひどい離脱症状が起こる場合があり、死亡率が高いのであります。

ただし、適切な治療を行えば、離脱期に振戦せん妄を起こす確率がぐっと下がりますのでアルコール依存症から脱出を考える方は医師にご相談下さい。

あるいは大酒家が事故や病気などで入院し、いきなりアルコール0になった場合も同症状が起きる可能性は否定できませんので、入院時に医師へ伝えてください。

 


戦国時代のお酒は主に何が飲まれていた?

実は以前に大河ドラマ『真田丸』で「飲んでいるお酒はどんなものでしょう?」というご質問を頂いたことがあります。

ドラマの中で福島正則さんは升を使って酒を飲んでいたシーンがありましたよね。

この時期は米から作ったお酒が主流ですが、濁り酒(どぶろく)から清酒(いまの日本酒に近い形)への過渡期でした。

清酒は濾す分の技術と手間がある分、高級酒。

さらに清酒の中でも、玄米を使うものと精白米から作るものがあり、精白米から作るものの方が高級品でした。

おそらく上田などの田舎で普段使いに飲んでいるのは濁り酒ないし、玄米からの日本酒でしょう。

接待やら秀吉が飲んでいる酒は今のものに近い清酒系が考えられます。

どぶろくはろ過しないぶん米の甘みが残るため飲みやすく、お椀でグイッといくのが適しております。

韓国のマッコリはわりと大きい器で飲むじゃないですか。

まぁ日本酒だって升酒ありますし、お椀で飲めって言われたら私は飲みますけどね♪

焼酎の技術は、14世紀半ばには日本へ入ってきており、九州の大名や新し物好きの伊達政宗が好んだたと伝わっています。

真田幸村九度山から出した手紙にも「焼酎プリーズ」のくだりがありますしね。

ただ、やっぱりメジャー路線ではありません。

拙著『戦国診察室』(→amazon)の中で、

【八丈島に流された宇喜多秀家へ正則の部下が酒を贈った話】

を書いたのですが、正則は江戸にわざわざ良い酒を船で運ばせていたそうなので上等の日本酒派だったのかな。

晩年の記録が少ないため正則の死因は不明ながら、アルコールで酩酊して家臣を切腹させた話や、母里友信へのアルコールハラスメントを考えると、肝臓を壊して亡くなった可能性が高いかもしれませんね。

しかし最期の地となった川中島では、治水工事や新田開発に力を入れるなど功績を残しておりますので、酒と上手に付き合っていたのかもしれません。


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文&イラスト・馬渕まり(忍者とメガネをこよなく愛する歴女医)

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戦国診察室表紙

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【参考】
国史大辞典
福島正則/wikipedia
母里友信/wikipedia
e-ヘルスネット(→link
アルコール健康医学協会(→link
MSD(→link)
名古屋市立大学医学会例会(→link
Rezayof A, Shirazi-Zand Z, Zarrindast MR, Nayer-Nouri T「Nicotine improves ethanol-induced memory impairment: the role of dorsal hippocampal NMDA receptors.」
川合述史「アルコール毒性とグルタミン酸受容体 アルコール中毒にNMDA受容体が関与するか」

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