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【ゲームオブスローンズ シーズン8第1話 あらすじ相関スッキリ解説】
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サーセイの複雑な愛
そんなサーセイは、結局ユーロンと寝て、そのあとワインを飲んでいます。
ティリオンにもそういう傾向がありますが、酒量が増えておりますなあ。妊娠中なのに、飲酒と性行為はありなのか、って話。フェイクだったりして?
ユーロンは、ロバートと比べてどうだったかと聞いています。
ロバートは、毎晩娼婦を抱いていたのに、女体の扱いがまるで駄目だった。そうサーセイは断言します。
じゃあキングスレイヤー(ジェイミー)とはどうよ、と聞かれると、サーセイも憮然としております。
こんな傲慢な奴はいないと。嫌いじゃないけど、って。
用は済んだのならばとっとと出て行け。そう言い切るサーセイです。
サーセイの掛け値無しの愛って、我が子三人と一緒に消えてしまったのかも。
ジョフリーはじめ、我が子の注いでいた愛はもうないように思えるのです。
シオンの長い回り道
ここで、なんとあのシオンが姉ヤーラを救い出します。
前半はよいところがなかったシオン。
ウィンターフェル襲撃時は、憎悪を浴びたものです。
それがサンサ救出、そしてこの姉への恩返しと、着実に自分を取り戻す挑戦を続けています。
グレイジョイ家の鉄諸島を目指す姉に、シオンはスタークへの恩返しを誓います。
ウィンターフェルの留守を襲って以来、シオンは後悔の中で生きてきました。
あんなことすべきじゃなかったんだ。兄のように接してくれたロブ・スタークの隣で、【レッド・ウェディング】で死んだ方がよかったのに。
そんな思いがある。
スターク家にも馴染めず、戻ったグレイジョイ家でも軟弱だと言われたシオン。
自分自身を証明するため、長い回り道をして来ました。
「スターク家を救いに行け。死者は永遠に死せず。奴らをぶっ倒せ!」
ヤーラと抱き合うシオン。
過去と向き合い、前に進むために、シオンはウィンターフェルへ向かうのです。
ドラゴンデートでウフフ♪
デナーリスの元、北部諸侯はまとまるようで、まとまっていません。
北部の結束が乱れていること。
それはここまで描かれて来ました。
・北部の王は、ターガリエン王朝によい感情がない
・ロブがカースターク家等、諸侯をラニスター捕虜殺害の罪で処刑。離反を招く
・【レッド・ウェディング】で北部諸侯当主、多数が殺害される
・ボルトン家の支配下に下るものも多く出た
・【落とし子の戦い】のあと、ジョンを北部の王にしたものの、勝手に退位してしまう
ダヴォスも、ヴァリスも、そのあたり心配そうなのです。
一方でデナーリスも、サンサに嫌われているとジョンにこぼします。せめて敬意を示して欲しいのよね、って。
もおおおおお!
ジョンとデナーリスの甘さにイライラして来ます。
いや、悪い人たちじゃないけどさ。
この二人は、食事中のドラゴンであるレーガル(※デナーリスの兄・レーガーが由来)とドロゴン(※デナーリスの夫・ドロゴが由来)を見ています。
そしてこのあと、二人はドラゴンに乗ってデートをするわけです。
絵は綺麗。
ドラマチック。
ロマンチック。
「もう馬には乗れないね!」
「千年年ここにいても見つからないね」
「お互い老けちゃうよぉ。南育ちには寒いでしょ?」
「ならあたためて……❤︎」
なんだかもう、こいつら呑気で本当にちょっとイライラしてくるな、もーーーー!
そんなことをしている場合じゃないだろー!!
場合というか、血縁関係的にもねえ。
アリアと再会する二人
鍛冶場では、ジェンドリーがドラゴングラス(※黒曜石。ホワイトウォーカーに高い効果あり)で武器を作っております。
それをじっと見るアリア。
キングスランディング逃走で、一緒になった者です。スターク家のお嬢様とからかうジェンドリーに、やめてよと苦笑するアリアでした。
そしてもう一人、ハウンドことサンダー・クレゲインですね。
彼がブリエンヌに倒された際、アリアは見捨てていきました。
「冷酷な、小さなアバズレめ。だから長生きしたのか」
そう言いすてるサンダーですが、そこまで恨んでもいないようです。
戦士として認めているのかな。
アリアはヴァリリア鋼で剣を作らせようとしています。
サンサのストレスが溜まってゆく
サンサは頭痛がしてきそうでしょう。
グラヴァー公は、理由をつけて領地に引きこもっています。ジョンの退位に反発している証拠です。
しかし、ジョンは無反省。
「彼女は父(※暴君であり、エダードの父と兄を生きながら焼き殺した狂王エイリス2世)と違って名君になるさ」とデナーリスにメロメロです。
「断然美人だものね。北部のため? 愛のため?」
サンサの嫌味が炸裂しますが、ジョンには通じません。
このあたり、本作の狙いを感じます。
それはジェンダーの固定観念破壊です。
女性がリーダーになること。
それについては、こんな偏見があります。
・恋愛にかまけてまともな判断ができない
→大野治長はじめ、淀の方には愛人説のある男が多いものです。いかにも豊臣政権は、色香に迷った女のせいと言いたい。そんな誘導です。
・女は月経でイライラするから政治に向いていない
◆舛添氏「女は政治に向かない。生理の時は異常」、高齢者を「ジジイ、ババア」etc 暴言連発で炎上(→link)
しかし、ジョンを見ていると、むしろ***が悪いんじゃないの、と突っ込みたくなりませんか?
アリア役のメイジー・ウィリアムズは、ズバリそう言い切っています。
◆メイジー・ウィリアムズ、ジョン・スノウは「***」で考えているから駄目と批判(英語)(→link)
「枕営業」だの「色仕掛け」なんて言葉もありますが、それもこう返せば終わりますよね。
「枕だの色に迷う奴が一番悪いんだろ。責任転嫁すんなよ」
ここで皮肉なのが、男に自らの肉体を差し出すサーセイの存在です。
サーセイは、***に引っ張られる男を利用しながら、自分はそこにほだされません。
全部***があかん。そう言い切るかのよう。
実はこのことは、証明されつつあるのです。
金融取引のような分野は、男性ホルモンがギャンブラー的な部分を引き出してしまい、むしろ危険なのだとか。
金融業は、生物学的に見て女性のほうが堅実なのだそうです。
※『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』でも扱われています
ジョンが、***のせいで駄目になるリーダーの典型例で、辛いものがあります。
いやいや、まだまだ救いはあるのです。
救いかな?
まぁ、微妙なところです。
ターリー父子処刑の波紋
このあと、デナーリスはサムウェル・ターリーと話し合います。
あー、やっちまった。
この瞬間がいつなのか、来るのが怖かったものです。
サムは、【シタデル(知識の城)】から本を盗んできたことを見逃してくださいね、とデナーリスに告げます。
それと、実家のターリー家から家宝の剣を持ち出したことも見逃してくれと。
「ランディル・ターリー……」
デナーリスは降伏勧告を拒んだため、処刑したと苦い顔で告げるのでした。
そのあと、弟ディコンのことをサムが涙をこらえて持ち出すと、親子ともども殺していると……。
あのターリー父子処刑の場面は、本当に腹が立ったものです。
こうなると思った……。
これは、歴史的に見てもいけません。
ターリー家は、【ロバートの反乱】でエイリス2世が攻められた時、最後まで王の側で戦い続けた忠誠心あふれる家なのです。
総崩れになる中、唯一踏みとどまり、反乱側に土をつけた数少ない剛勇の家です。
そういう当主父子を、問答無用で処刑するとは。
どうやらデナーリスは、歴史学をきっちり学んでいないのだな、と呆れたものです。
あのどうしようもない兄・ヴィセーリオン経由ですから、歪んでいたのでしょう。
もう少し時間があり、学ぶ意欲があれば、ティリオンあたりがしっかり教え込むべきだったのですが。
ティリオンも、あの処刑で失望した顔を見せていましたっけ。
きみはエイゴン・ターガリエンだ
サムは、デナーリスに感情を爆発させてもいい。
ただ、彼はそういう性格ではありません。
その智謀を生かして、最も残酷な手段を考え出すのです。ブランとともに、あの事実をジョンに告げることにしました。
二人は、ジョンの元へと向かいます。
サムは父と弟の処刑をジョンに告げるのでした。
ここでそれは酷いとジョンが怒ったら、この先は違ったのかな。苦しそうな顔ではありますが。
「きみは王だ」
そう告げられたジョンは、王位を捨てたと語ります。
「そうじゃない。七王国の王なんだ」
サムとブランがつきとめた事実。それは、ジョン出生の秘密でした。
父:レイガー・ターガリエン(エイリス2世の嫡子)
母:リアナ・スターク(エダードの妹、ロバート・バラシオンの婚約者)
これも、***のせいで歴史が狂った案件です。
レイガーには、エリアという妃がいました。あの結婚とは別の婚姻が、あったわけです。
エリアとは、彼女の弟が、オベリン・マーテルがマウンテンとの決闘時に名前を絶叫していた、ドーン人です。
サーセイも有力な妃候補で、本人もレイガーに憧れていましたが、叶わなかった経緯があります。
そんなレイガーが、青いバラを捧げて愛を誓った女。それがリアナです。
このせいで、こんな状況が生まれます。
・ロバート、リアナを凌辱した(※同意のもとでの性的関係とは彼は認識していない)レイガーに激怒。反乱の原因に
・サーセイ、レイガーを奪った女2名であるリアナ、エリア、およびその実家(スターク家、マーテル家)が嫌いになる
・ロバート、新婚初夜にサーセイをうっかり「リアナ」と呼んでしまい、夫婦仲が壊れる
・エダード、ジョンを保護するために「自分が浮気してできた私生児」と主張したため、キャトリンがジョンを嫌うことになる
このせいで、何組もの夫婦に亀裂が入ったどころか、全土を巻き込んで戦争になっているのです。
エダードは、ロバートにジョンの身元が判明したら殺されると思い、密かに守り抜きました。ジョンの外見が母方に似ていることが幸いしたのです。
エダードが、ロバートのデナーリス殺害依頼を批判したのも、ジョンのことが念頭にあったからでした。ターガリエン殺しが及べば、ジョンも死ぬことになるのです。
もしも私生児であれば、そこで終わりです。
ジョンとデナーリスの恋愛が、甥と叔母であるという点は残りますが……。
王位継承順位が変わった
この秘密を知ったブランも、そう認識していました。
ところが、【シタデル】でサムが婚姻照明を発見しました。
嫡出であるということは、ターガリエンの王位継承順位が変わります。
【エイリス2世後の継承順位】
◆Before
エイリス2世
1位:レイガー
2位:ヴィセーリオン
3位:デナーリス
◆After
エイリス2世
1位:レイガー
2位:エイゴン(ジョン・スノウ)
3位:ヴィセーリオン
4位:デナーリス
王位継承順位に、変動があったのです。
「叔母と甥でもいい! 隠し通せばいいじゃない」
これさえなければ、そう言えたかもしれない。そんな二人ですが。こうなると、王座を奪い合うことになります。
このシーズンのどこで判明するのか。1話目でした。
さあどうなる!!
このままでは終わらない
さて、壁の向こうで戦っていたベリック・ドンダリオンら【旗標なき兄弟団】は、アンバー公のみせしめのような死体を発見します。
やっぱりナイツキングは本気だ。これはまずい。
そんな中、あの男もウィンターフェルに到着します。
ジェイミー・ラニスターでした。
彼がかつて、サーセイとの愛の秘密を守るために、窓から突き落とした少年。
そのブランが、目の前にいます。
いきなりフルスロットルの1話。次へと続きます!
MVP:サンサ・スターク
いろいろと印象深いスタートの中で、もっとも心に焼きついたのは、チベットスナギツネ顔のサンサでした。
団結してホワイトウォーカーと戦わねばならない。
そのために、王位返上まではいい。
ただ、デナーリスとイチャイチャしている場合じゃないだろうがー!!
そんなジョンとデナーリスへの怒りが、ひしひしと伝わって来ます。
それに気づかず「サンサが俺を見下してぇ〜」と言うジョンに、イライラした方もいるのでは?
それにしても、彼女も成長したものです。
アサシンになったアリアや、三つ目鴉になったブラン。その変化ほど、劇的ではないかもしれません。
ただ、彼女は人生の苦い経験を通して、まるで別人になりました。
ジョフリー王子と結婚したい。
その幼い恋心のためならば、家族を危険に追い込んでもいい。そんな恋愛重視の純粋な少女。
それが宮中での忍耐、さまざまな虐待、家族の惨殺、不幸な結婚……そうした苦難を経て、立派な君主にまでなったのです。
そんな彼女を見ていて悲しくなるのは、評価が不十分だから。
【落とし子の戦い】の勝利決定打は、彼女の策でした。
それなのに、気がつけばジョンが北の王にされてしまいます。
それでもぐっと我慢していたのに、恋愛のために王冠を投げ捨てたようなウキウキっぷりですよ。
そりゃ、静かにキレますわ。
じっと我慢して、嫌味を言い放つ。
サンサにエールを送りたい。そんな視聴者は多いはず。
男の怒声は、一喝としてプラスなのに。
女の怒声は、どうせヒステリックって言われるんでしょ。ケッ。
そんな諦念すら感じます。
女性がリーダーとなるうえで、リアルな苦しみに直面しているのが、サンサでしょう。
デナーリスと違ってドラゴンはいない。
だからこそ、衝動的に処刑もしない。
サーセイと違って、自分の肉体を餌にするつもりはない。
アリアと違って、剣を持ってはいない。
知能で生きていくしかない。
サンサの選んだ、知能、経験、流した涙という武器が、そこにはあるのです。
総評
初回は、過去の清算を示します。
ついにジョンが知ってしまった、出生の秘密。
ターリー父子の衝動的な処刑が祟る、デナーリス。
アリアが向き合うジェンドリーとハウンド。
姉ヤーラに恩返しをして、北へ向かうシオン。
突き落としたブランと顔を合わせる、ジェイミー。
サーセイは、自分を裏切った弟二人に、過去の清算を命でもって迫ります。
もうひとつ。愛。
メイジー・ウィリアムズ流で言うと***の祟りもありますね。
ジョンが生まれたこと自体、そういう部分が大きい。
そのせいで、七王国は大変なことになりました。
そうして生まれたジョンが、***に引っ張られてしまい、デナーリスとドラゴンデートです。
それを冷たい目でじっとみつめる、それがサンサ。
彼女は***を振り回す男(ラムジーやリトルフィンガーことピーター・ベイリッシュ)のせいで、苦難の人生を歩まされました。
王子様に憧れる純粋な少女を、***がぶっ壊した。そんな構図とも言えます。
サーセイ役のレナ・へディは、この作品は#Metooを意識しているときっぱり言い切りました。
◆『ゲーム・オブ・スローンズ』のレナ・ヘディが告白「あの彼のせいで仕事がなかった…」(→link)
その通り。
最終シーズンで、そのことを言い切ると一話目で宣言しました。
それは、被害者が可哀想だとか。
被害者は、がんばってくれとか。
女が、立ち上がれとか。
そこをはるかに飛び越えてゆきました。
***に振り回されて、目の前の脅威すら甘くなるジョンみたいな奴って、本当にバカ。
女の肉体につられて、まんまと乗っかるユーロンみたいな奴って、本当にバカ。
そういう奴のせいで、被害にあうのは誰?
女?
男?
関係ないね。
世界そのものが、滅びかねないんだよ。
そう言い切っている、そんな最終シーズンが幕を開けたのです。
シーズン1~8や前史も含めて全部で14本の解説記事!
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文:武者震之助
【参考】
『剣嵐の大地 (中)〈氷と炎の歌 3〉(ハヤカワ文庫SF1877)』(→amazon)