本当は怖い平安京のリアル

平安京/wikipediaより引用

飛鳥・奈良・平安 光る君へ

本当は怖い「平安京のリアル」疫病 干ばつ 洪水で死体が転がり孤児がウロつく

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現物支給で生きる人々

『光る君へ』は、食事が細かく再現されています。

貧しい藤原為時の家は粗末な一方、藤原兼家の食事は本当に食べ切れるのか?と思うほど大量の膳が運ばれていきます。

あれを見る限り、なかなか美味しそうで。

平安時代の人は大食いなのか?と思うかもしれませんが、そう単純な話でもなく、あれは食べ残すことが前提です。

食べ残した食事は捨てるのではなく、使用人たちがおいしくいただきます。

当時は貨幣もなく、使用人たちは現物支給により勤務先を決めていて、恩義が定着するまで長い時間がかかります。当時の使用人は、金の切れ目が縁の切れ目そのものといえました。

この「偉い人は下々のものにごちそうしよう!」という慣習が、鎌倉幕府では「旅館振舞」(はたごふるまい)といった、わけのわからぬ悪習となりました。

要するに、坂東のワイルドな人々は御家人に向かって「宴会やりますよね!」と押しかけていたのです。

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当時は貨幣がないっていうけど、和同開珎があると習ったのだが……と思う方もおられるでしょう。

あれは唐を模倣し、国家としての体裁を整えるために造ったものであり、いわば狭い地域の限定クーポンのようなものです。全国的には使えません。

そんな状況の日本に南宋から銅銭を取り入れたのが、平清盛ということになります。

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ゆえに短命だ

平安時代の歴史を見ていると、あっさり人が亡くなっていることがわかります。

紫式部自身も「女は長生きしないもの」と書き記しています。女性の場合は妊娠出産による死のリスクが高かったからです。

男性も、ストレスが溜まったと思ったら、亡くなっていることが往々にしてあります。

藤原道長にせよ、権力者の頂点に立てたのは、二人の兄に対し、長生きできたことが大きい。

そんな道長の持病は糖尿病です。

栄養バランスが悪い当時、白米を食べ続ける貴族は罹患しやすい状態であったのでしょう。

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逆説的に言えば、そうした慢性的な病気に悩まされる程度まで、道長は長生きできたということです。

人間関係でストレスが溜まりやすいうえに、栄養状態も悪い。

平安貴族はなかなか大変な世界を生きていました。

決して優しいとは言えない平安京

それでも当時の貴族からすれば、地方はありえないほど野蛮な土地でした。

地方よりはマシかもしれない。

海を超えてよくわからない船も来るし、武士だの盗賊だのいるわけだし、そんな地の果てに左遷されたらおしまいだとみなしつつ、生きていたのでした。

優雅なようで、実は困難な日常が待ち構えている――それが紫式部の生きた時代でした。

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文:小檜山青
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【参考文献】
安田政彦『平安京のニオイ』(→amazon
繁田信一『殴り合う貴族だち』(→amazon
繁田信一『王朝貴族の悪だくみ』(→amazon
山本淳子『源氏物語の時代』(→amazon
藤川桂介『暮らしの歴史散歩 生き生き平安京』(→amazon

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