

半べー「えっ、マジで? そんなことドコに書かれてんの?」
官べー「主に二つあって、一つは『祖父物語』だね」
『祖父物語』天下一の美人
半べー「『祖父物語』って、なんだか違和感ある書名だな」
官べー「パッと見、お爺ちゃんが成長していく話にも思える」
半べー「老い先短いのに無理すんなよな」
官べー「失礼なこと言うんじゃない!『祖父物語』は尾張の柿屋喜左衛門って人が、祖父から聞いた話をまとめたものなんだよ」
半べー「なるほど。んで、お市の方は何て書かれてんの?」
官べー「ざっくりまとめると、彼女が“天下一の美人で豊臣秀吉と柴田勝家が取りあった”という感じだね」
半べー「天下一?」
官べー「そう」
半べー「オラ、美人だぞ!って?」
官べー「ドラゴンボールの武道会じゃないっての」
半べー「いやぁ、肖像画を見ると天下一どころか、なかなか微妙なんで……」

お市の方/wikimedia commons
官べー「それは当時の絵画の描写方法だから仕方ないだろ」
半べー「シーーー!!! メディアで女性の美醜に触れてはいけません!」
官べー「はぁ?」
半べー「ルッキズムで世間様からお叱りを受けるよ……とにかく落ち着いて」
官べー「お前が言い出したんだろ!」
半べー「まぁ、史料に“美人”と書かれているなら、そこはセーフということで。これって私の感想ではありませんからね」
官べー「ひろゆきかよ。過剰な反応が一番よくないんだっつの」
『渓心院文』ことのほか美しく


半べー「またマニアックそうな名前が来たな」
官べー「渓心院とは、浅井三姉妹の次女・初にゆかりのある女性ね」

浅井三姉妹の次女・初(常高院)/wikimedia commons
半べー「初本人ではなく、ゆかりのある渓心院さんの文(ふみ)ね。んで、そこには何て書かれてたの?」
官べー「お市の方が、柴田勝家と共に自害する前に、姿を見せたんだけど」
半べー「ほぅ」
官べー「その姿が“ことのほか美しく、年齢は22~23歳に見える“と記されている」
半べー「なるほどー。当時のお市は30代半ばでしょ?」
官べー「そうそう」
半べー「それで22~23歳ぐらいに見えるってことは、よほどお肌ツヤツヤで……さては『SK-II』でも使っていたな?」
官べー「は?」
半べー「湯上がりたまご肌の桃井かおりさんでおなじみの化粧品ですよ」
官べー「湯上がりたまご肌、言いたいだけだろ! まぁ、当時、若く見えたほうが綺麗という価値観ではあったようだね」
半べー「でも、お市が天下一の美しさかどうかまでは断言できなくない? 戦国ミスコンでもあったわけじゃないし」
官べー「その通りでさ、『豊臣兄弟』の時代考証・黒田基樹氏は、天下一というのはあくまで喩えじゃないか?と指摘されている」
半べー「どういうこと?」
官べー「『祖父物語』の成立は江戸時代に少し入ってからで、史料価値は下がるんだけど。本能寺の変後に秀吉と勝家が天下争いをしたから、お市も天下一の美しさと記されたのでは?という見方をしている」

柴田勝家(左)と豊臣秀吉/wikimedia commons
半べー「なるほど。でもお市は、負けた勝家と最期を共にしているのが泣かせるね」
官べー「そうなのよ。勝家はお市に“秀吉のもとへ降りなさい”と進めたんだけどさ、彼女が断っている。勝家と結婚したからには共に死ぬのが筋であり、自分は女性だが心は男性に劣ることはない、と言ってさ」
半べー「お市……絶句するしかないカッコよさだわ」
官べー「SK-IIとか言ってて恥ずかしくなったろ?」
半べー「…………ほんとスミマセン」
官べー「ちなみに、信長には“美しき弟”もいたのを知ってる?」
顔形は人に優れて麗しい織田秀孝


半べー「どんな?」
官べー「尾張の守山城に織田信次という、織田信長の叔父がいたのね」
半べー「織田信秀の弟かな?」
官べー「そうそう。その信次が川で漁をしていた。すると、近くをたまたま織田秀孝が馬に乗って通りかかってさ」
半べー「別に普通のことでは?」
官べー「ここからよ。信次の家臣がさ、“殿の前で乗馬とは失礼なやつだ!“とか言って、いきなり弓矢を発射したのよ」

絵・小久ヒロ
官べー「それが秀孝に的中して死んじまった」
半べー「ひゃー! 中世ですのぅ」
官べー「信次も、その家臣も、いざ遺体を確認してから大慌て。信長の弟じゃねぇか!ってガクブル震えて、そのまま逃げ出した」
半べー「えっ、逃げたの?」
官べー「うん。その後、数年間放浪したらしい」
半べー「どんだけ逃げてんだよw」
官べー「天文二十四年(1555年)の事件だから、桶狭間の戦い(1560年)ぐらいに戻ったのかもね」
半べー「でも、この織田秀孝さんのどこが美しいの?」
官べー「『信長公記』に秀孝の死に顔がこう記されているのよ」
「肌はおしろいを塗ったかのように白く、赤い唇に柔和な姿、顔形は人に優れて麗しく、その美しさは例えようもなかった」
半べー「(著者の)太田牛一、テンション上がりすぎでしょ」
官べー「今で言ったら吉沢亮さんとか横浜流星さんみたいなイケメンだったのかもね」
半べー「まさに国宝級……」
官べー「それ、言いたくなるよねw」
織田家は美形の家系?


半べー「岩村城の女城主だっけ?」
官べー「そうそう。結婚をする度に夫が戦死や病死したりして、四度目の結婚で武田家の秋山虎繁と結ばれる」

秋山虎繁/wikimedia commons
半べー「四度目って戦国時代で最多じゃない?」
官べー「しかも最期は信長に処刑されている」
半べー「なんだか戦国漫才どころの話じゃなくなってきたなぁ……」
官べー「美しければ幸せというわけでもない話ばかりで」
半べー「その点、キミはお椀の兜が似合うイケメンでよかったなw」
官べー「ほっとけや!」
了
◆お市の方やおつやの方の詳細については別記事「お市の方の生涯」「おつやの方の生涯」をご覧ください
参考文献
黒田基樹『お市の方の生涯 「天下一の美人」と娘たちの知られざる政治権力の実像』(2023年1月 朝日新聞出版)
太田牛一/中川太古『信長公記』(2013年10月 KADOKAWA)
【TOP画像】お市の方/wikimedia commons
