モンゴル相撲ブフ

モンゴル相撲(ブフ)/photo by hu:Burumbátor Wikipedia

アジア・中東

最古の歴史は9,000年前だと!モンゴル相撲ブフ 強さの秘訣は伝統か

『なぜモンゴル出身の力士はあれだけ強いのか?』

最近の日本の相撲を見ていれば、誰もが一度はお持ちになる疑問でしょう。

今や横綱のほとんどがモンゴル出身力士という印象があり、白鵬に関しては優勝回数の記録まで塗り替えました。

そこで時折話題となるのが「ブフ」。

日本では「モンゴル相撲」として知られる同国の伝統競技です。

※モンゴル相撲の様子

朝青龍や白鵬の親兄弟も活躍していたブフの一体何がスゴいのか?

歴史や規模はどれほどか。

昭和60年(1985年)3月11日は、モンゴル出身の関取でも圧倒的な成績を誇る、白鵬(現・宮城野親方)が生まれた日。

本稿では、モンゴル相撲の歴史や基本ルール、日本との違いを見てみたいと思います。

※以降、本稿における「ブフ」と「モンゴル相撲」は同じ意味で使用させていただきます

 


日本1,500年 モンゴル9,000年以上の歴史

まずはモンゴルの前に、日本の相撲の歴史を簡単に振り返ってみますと……。

これがかなり長い歴史を有していて、おそらく古墳時代から存在していました。

土器や埴輪に相撲の装飾が施されていたり、垂仁天皇に絡んだ逸話が『日本書紀』に掲載されたりしてまして。

正式な記録は奈良時代になりますが、古墳時代からざっと見積もると1500年ほどの歴史となります(詳細は以下の記事へ)。

相撲の歴史
相撲の歴史は意外の連続~1500年前に始まり明治維新で滅びかける

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では、モンゴル相撲は?

あくまで一説ですが、ブフの起源は……なんと「紀元前7,000年の新石器時代まで遡る」とされていて……思わず絶句……。

モンゴルのバヤンホンゴル県で発見された同時代の洞窟壁画に、

「二人の裸の男性が取っ組み合い、周囲に群衆が集まっている様子」

が描かれているのです。

あくまで一説ですが、これがもし事実であれば紀元後も含めて計算すると9,000年以上の歴史になるワケですから、とにかくもう衝撃というほかありません。

 


中国では秦の時代にも記録あり

次の記録は、時代が進んで紀元前2世紀。

中国が秦の時代だった頃にも、匈奴(きょうど・紀元前4世紀~起源5世紀の遊牧民族)の遺跡で、ブフに取り組むモンゴル人祖先というのが確認されています。

乗馬術、弓術、そして格闘術(ブフ)。

匈奴の戦士にとって必須のスキルとして、彼らがモンゴル相撲で鍛えられていた様子もうかがえるのです。

個人的に『日本の相撲が最も古い』と思い込んでいただけに、勝手ながら軽く目眩を覚えました。

なおモンゴルでは、現在まで続いているナーダム(国民行事であるスポーツ大会)においても、この3競技が実施されておりまして、古い伝統が今なお活きているんですね。

モンゴル・ナーダムの様子/Wikipediaより引用

ちなみに文治5年(1189年)。

源頼朝による上覧相撲で実施された競技も、競馬(くらべうま)、流鏑馬、相撲でした。

源頼朝
源頼朝が伊豆に流され鎌倉幕府を立ち上げるまでの生涯53年とは?

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このころからモンゴルでは世界を席巻するチンギス・ハーンの時代となり、ブフが軍事訓練の一環として盛んに行われていたことが『元朝秘史』等の記述からもうかがえます。

ブフの様子が描かれた絵(16世紀)/Wikipediaより引用

圧倒的な強さを誇ったモンゴル軍の軍事教練だったと考えれば、モンゴル相撲が強いのも納得できますね。

騎馬だけでなく体術的にもワールドクラスの強さ、歴史の裏付けのある強さだったことがわかります。

 


近代化こそ遅れたものの規模は圧倒的!

では、国民的な競技へ発展するために、ブフはいつ近代化されたのか?

というと、これが意外に遅く、スポーツとして整備されたのは20世紀後半、1978年からのことです。

1997年にはリーグ制度、1999年には賞金制度が導入されておりますが、近代化に関しては日本と比べて大幅に遅れているという印象です。

もっとも、日本の相撲界も旧態依然とした体質が大きく問題視され、今なお騒動の渦中にいることは皆さんご存知でしょう。

更に規模の観点から見ても、モンゴルのほうが圧倒的に上です。

2011年時点での、モンゴル相撲は6,002人が所属。

世界最大規模の格闘技団体として、ギネスブックに登録されています。

モンゴルの「相撲宮殿」・日本で言えば「国技館」のような施設です/Wikipediaより引用

一方、日本の力士が、例えば2015年7月時点では659人ですから(参照)、約9~10倍もの大きさになるんですね。

そりゃあ素質を持った選手も多く出てくるというもんでしょう。

ただし、日本には土俵があって(モンゴル相撲には無い)、体重が重い方が単純に有利という一面もあり、誰もが望んで力士になれるわけじゃなく、さらにはレスリングや柔道など他にもお家芸があって、競技人口が分散しやすいという側面もあります。

まぁ、その辺を考慮しても、ブフの層の厚さには驚くばかりですが。

では、競技における共通点や違いも見ていきましょう。

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