べらぼう感想あらすじレビュー

背景は葛飾応為『吉原格子先之図』/wikipediaより引用

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『べらぼう』感想あらすじレビュー第10回『青楼美人』の見る夢は 蔦重の夢と共に

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田安の種蒔き

さて、その意次は家治から意外な話を聞かされます。

なんでも、田安賢丸の妹である種姫を、家治の養女とし、徳川家基と夫婦にするのだとか。

意次が理由を尋ねると、なんと家基が賢丸の白河行きを止めようとしたそうで。

家治は家基に怒り、もう止められないと叱りつけておりました。しかし、家基はそれができぬならば田沼を退けろと言い出したのです。

徳川家基/wikipediaより引用

どうやら田沼が卑劣な手段で賢丸を追いやったと信じているようで、喧嘩両成敗だと迫ります。

家治が「これは喧嘩ではない、汚い手を使った証拠もない」と言います。

しかし家基は「身内を切って捨てられても憤るどころか庇われる!」と言い出した。母親によく似た性格のようです。

なんと父親を「成り上がりの傀儡」呼ばわりまでしました。

背後にいる松平武元が言葉が過ぎると嗜めていますが、元々は彼や知保あたりから聞いた悪口なのではないか?と思えてきます。

家基が謝罪すると、温厚な家治も立ち上がって忿懣やるかたない表情を浮かべます。

そこへ武元がフォローするように「田安への慈悲をいただきたい、上様(家治)と西の丸様(家基)との間に禍根を残したくない」と訴えるのでした。

賢丸は、これで家基の義兄となる。種を蒔くとはこのことでしたか。

話を聞いた田沼意知と三浦庄司は「田安の種蒔きか」と笑っております。

しかし、意次は笑い事ではないと苛立っている。

家基が将軍になるのはまだまだ先のことだと意知は楽観視していますが、そうではないと意次が説明します。

「虫はおのずから明るい方へと寄っていく。今のこの話を聞いて田沼のこのさきが明るいと思う者はおるまい。人が離れていく」

意次はそう言いながら武元へ怒りを募らせるのでした。

かくして種姫は江戸城に入り、大奥総取締・高岳の歓迎を受けております。

これに対し賢丸は家治に礼を言い、白河松平家へ向かう。

この一連の流れは「政治劇」と流せそうで、種姫本人の意思は一切見えてきません。種のことを兄に尋ねたばかりに翻弄され、道具とされています。

これも一種の搾取ではないか? そう考えてしまいます。

 


二人の見る夢は

吉原では、ついに瀬川最後の花魁道中を迎える準備が整っておりました。

蔦重は松葉屋に『青楼美人合姿鏡』を託し、瀬川に渡して欲しいと頼む。と、思わぬ答えが返ってきます。

「忙しいから自分で渡しとくれよ」

「えっ! いいんすか」

「えっ? なんでだめなの?」

「ハハハ……でさね! てめえで渡しますわ」

粋な心遣いすね。松葉屋の親父はどうにも気の優しさみてえなもんが微かに滲んでんのよな。

実際のところ、忘八美談の類は残されていないわけでもない。していることは性的搾取っちゃそうですけれども、それでも温情の示し方はあるんですね。

蔦重は、花嫁衣装を用意した瀬川のもとへきます。彼女は売れるものは売り、あげるものはあげて、さっぱりしているのだとか。

そんな瀬川に、蔦重は餞別として『青楼美人合姿鏡』を渡します。

笑う瀬川。

「あんたが何かくれるときは、いっつも本だなって」

瀬川は本を開きます。随分立派な本だと驚いています。

そしてそこには、本を読む瀬川の絵があるのでした。

「これ……わっちも載せてくれたのかい? もう出てくのに」

「そりゃあ瀬川最後の絵姿だってうたわせてもらいますんで」

瀬川は営業トークじみた話を聞いているものの、最初で最後の絵姿に感無量。

しかも、本を読む姿です。

「わっちの絵は、この世でこれきり……嬉しいもんだね。わっち、本読んでんだね」

「それが一番お前らしい姿だと思ってよ」

そこにはのんびりとした、女郎をしていない、女郎の姿があるのでした。

「ずるいよ。こんなふうに描かれると、楽しかったことばかり思い出しちまうよ」

涙を拭いつつ、そう語る瀬川。

「なあ。俺は吉原を、楽しいことばかりのとこにしようと思ってんだよ。女郎がいい思い出いっぺえ持って大門出てけるとこにしたくてよ」

「そんな色里あるわけないじゃないか」

「いい身請けがゴロゴロあって、年季明けまでいるやつなんかほとんどいねえのよ。吉原来りゃ、人生ひらけるなんて言われて、そのうちわざわざ吉原来て、うめえことやろうって考えるやつも出てきてよぉ」

「ハハ……馬鹿らしうありんす」

「馬鹿みてえな昼寝の夢みてえな話だ。けど、お前も同じだったんじゃねえの? こりゃ二人で見てた夢じゃねえの?」

これが幼い頃、苦界で出会った二人の見た夢でした。

見果てぬ夢。おとぎ話。ありえないこと。

でも、叶わないからこそ見続けることができる。理想に手を伸ばし続けることができる。そんな馬鹿な二人の夢です。

でも、その馬鹿な夢を見ているかぎり、二人は繋がれているってことですな。

 


瀬川最後の花魁道中

安永4年(1775年)12月――仲ノ町通りの端から端まで、瀬川最後の花魁道中が始まりました。

花嫁衣装に身を包み、歩いてゆきます。

「瀬川〜!」

「よっ、瀬川!」

「瀬川だ、瀬川だ!」

「粋だねぇ!」

「すげえなぁ!」

「美しい!」

「これが吉原よ!」

「めでてえ!」

「幸せになれよ!」

その後には花魁の姿が続きます。

美しい瀬川の幸福を願う気持ちは、嘘ではないのでしょう。

嘘に塗れた吉原が、真の誠意にあふれる、夢幻のような美しさがそこにはあります。

蔦重はジッとその白鷺のような姿を見ています。彼は言っていました。

「こりゃ二人が見ていた夢じゃねえの? だから、俺は、この夢から覚めるつもりは毛筋ほどももねえよ! お前と俺をつなぐもんは、これしかねえからよ。俺はその夢を、ず〜っと見続けるよ」

「そりゃまあ、べらぼうだねえ」

瀬川はそう笑い、涙を落としたのでした。

瀬川は道中を終え、振り向き、吉原に別れを告げます。

「おさらばえ」

そして同じ夢を見る蔦重の隣を通り過ぎ、大門をくぐり、鳥山検校の前に向かいます。

「お待たせいたしんした」

そう手を執るのでした。

「トウザイ、トウザイ、ご注目!」

声を張り上げる蔦重に合わせて、次郎兵衛と留四郎が太鼓を打つ。

ドドン!

「今日吉原の売りたるは、世にも稀なる女郎絵本!」

「稀なる! どこが稀なるか!」

お、次郎兵衛が珍しく仕事をしだしたぜ。

蔦重は瀬川が載っている、これが最初で最後の絵姿と宣伝。

次郎兵衛が「世にたったの一枚ときたものか!」と続けます。がんばって覚えたな、えらいぜ義兄さん。

さらに、ここでずらりと並んだ花魁たちも漏れなく載っているとか。花魁たちは瀬川に負けじと妍を競います。

するとここで、あの毎週出ているのにレアキャラと話題の朋誠堂喜三二が今回はジッと映ります。やっと久々に確認できた人も多い、つか、大半じゃねえか?

「とどめにこいつは極めつき! うそかまことか、上様もご覧になったという噂〜!」

「上様!?」

すかさず留四郎が、お求めの方は大門をちと出たところ、五十間の蔦屋までだと案内します。

セリフ長えよな。次郎兵衛は覚えきれんかもしれねえな。

かくして江戸っ子が吸い付くように蔦重に殺到すると、鳥山検校はどこか訝しげな顔をしているのでした。

そしてあの西村屋は、須原屋で売っていたと『青楼美人合姿鏡』を鱗形屋と鶴屋に見せています。

「あの小僧が出しやがった、献上本だよ!」

「蔦重の本を書物問屋が? ありえねえだろ!」

なんでも山崎屋と相版元で出したとか。裏をかかれたと悔しそうな西村屋。最近出てくるたび悔しがってんな、こいつ。

なんでも問い合わせがひっきりなしなんだそうで、「『雛形若菜』はどうなるかと焦っております。

「ご案じなく。これは、売れません。売れません」

そう鶴屋がニタニタしています。まァ、高すぎんじゃねえの。

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