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【『べらぼう』感想あらすじレビュー第10回『青楼美人』の見る夢は】
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MVP:徳川家治
公方様と江戸っ子の関係性が垣間見えましたね。
実際に徳川家治が本を読んだのかどうか、そこはわかりません。
ただ、家治は絵も好む、文化好きで有名ですので、見ていても不思議はありません。
将軍家が見るような絵師は、狩野派あたりと決まっております。
蕎麦一杯の値段で売られている浮世絵なんざ、手に取るわけもない……はずだったんですが、だんだんとそれが変貌していくのが江戸時代の面白さでして。
そういう説明に『べらぼう』は使えるんだよな。
そんなわけで献上されただけでもドーッと江戸っ子は買い漁る。そういう権威の示し方もあると示しました。
家治の治世に対する憎悪や軽蔑は、田沼に向かっているところもわかります。
家基が口走ったように、田沼の言いなりだという噂は広く流れているということですな。
これが今後の展開にも繋がってきます。
喜多川歌麿が売れっ子絵師となった際、西村屋が売り出したライバルが鳥文斎栄之。彼は家治と絵の談義をしたという点が、セールスポイントとされます。
時代が下りますが、公方様と浮世絵といえば、家茂上洛を描いた『御上洛東海道』があります。
江戸っ子たちはこの絵を見て「今頃上様はこういう景色を見てんだね」と想像を膨らませていたというワケです。
ときに憎らしくもあるけれど、愛着もある。
江戸っ子の誇りたぁ将軍様のお膝元だったってことでさ。
てなわけで、今年の花見は、将軍家菩提寺のあった上野なんかどうですかね。江戸っ子気分になれるぜ。
総評
見果てぬ夢でしたね。
このチームは『麒麟がくる』に通じるものを感じます。
あのドラマも、光秀自身は麒麟が到来する様まで生きてはいなかったと思えます。
ラストで駆け抜けていたものの、あれは彼の志か何かと思った者です。
蔦重も瀬川も、馬鹿な夢、到達できない夢を見ています。
彼らが生きているうちに、夢は果たして叶うのか――。
その日は訪れません。それでも夢をみる理由はある。人と人をつなぐ。
そう示す、大変美しい回でした。
うん、こういうのが見たかった。そうしみじみと思える回です。
夢が実現するか、そんなの愚かだって言われますけどね。
理想や夢のない人生って、パッサパサのガサガサ、つまんねえもんだと思いますぜ。
そう思い出させてくれてありがた山。
国際女性デーが過ぎたばかりでやんす
今年も国際女性デーが過ぎましたね。あ、国際男性デーは11月19日な。
国際女性デーにウダウダ言っている暇があるなら、西村屋みてえに、対抗策を練りゃいいじゃねえですか。団結してよ。
さて、そんな記念日を過ぎまして、私にも見えてきたことがあるんすよ。
女郎の地獄ぶりを余さず描いた本作。
むしろ吉原を本気で取り扱っていると広まりつつあり、性差別的だという批判は下火になってきております。
ただ、それでもしつこく打ち切りを求める意見はあります。
書店から吉原やドラマを開設する本を撤去しろと言わんばかりの話でして、その意見を読みつつ、私の中で答え合わせができました。
蔦重はじめ、江戸時代にいかに苦しむ人がいるか、本作は描かれています。
しかし、打ち切りを強く、しつこく主張する人って、対象が男性だとそれが透明化されてんじゃねえか?って仮説を立てたんす。その通りやんした。
フェミニストっつうことでよ、女性差別には怒る。強い言葉で反論する。
でも女性以外の差別は無関心どころか、むしろ率先してやるみてえなムーブをしてんすよ。
自分とは真逆すね。あっしゃー、女性差別に反対しておきながら、別の被差別者を踏んづけるようなこたぁ避けたいんすけどね。
ただ、過激な強い言葉でなんか言ってりゃ、フォロワーには受けるんでしょうよ。持ち上げられて天狗になるってもんだ。
けどよ、こいつぁ実にあぶねえ話なんすよ。
女性を守るという名目は、他の差別の隠れ蓑に使われやすいんでね。
なんつうか、吉原を扱う大河をぶっ叩き、ガイドブックを撤去せよとスマホでポチポチと檄を飛ばし、それで何かと戦ったような気分になれる世界観が羨ましいというか。
今年の大河の考証先生なんかと比較したら、こっちゃーせいぜい、昨日オムツが取れたばかりの泣き喚くハナタレですぜ。
そういう人にケチつけるってえのも、暴虎馮河つうかよ。
それに吉原文化というのは、日本史の構造を踏まえて考えていかねえと読み解けないところが大きいんすよ。
今の性産業とは異なる要素もある。
そこをすっ飛ばして、見もしない、調べもしないで打ち切りを求めるって、何がしたいんでしょう?
あぁ、わかってらぁ。フォロワーにアピールしたいんすね。
これはキッパリ言っておきたいすけど、江戸文化を扱うなら、当時の差別性も入れねえと骨が抜けます。
このあいだ、葛飾応為の絵本を見てガッカリしました。
海外のものを邦訳したものでして、これだと北斎が幼いうちに応為の才能を見抜いて、自慢の娘だとして育てている内容なんです。
北斎は絵師としては超一流でも、人の親としてはサイテーとしか言いようがない放任主義者なんですけどね。
それに応為が絵師として名を残せたのは、結婚生活が早々に破綻したという要素も大きいんすよ。そういう差別構造を全部ぶち抜いて、現代の父と娘みたいな絵本にして何がしてえのよ? 子ども向けの絵本だからいいって?
だったら作品だけ紹介するとかできるんじゃねえのか。そういうしょうもねえ嘘はバレた時かえってムカつかれるもんだぜ。
そういう骨を抜いてグッチャグチャに咀嚼したみてえな江戸時代を描いて欲しいんすか? そんなのやりてえなら、架空世界にしてくれよ。
そして気づいたことがあるんすね。
江戸中期の田沼時代をやるなら、田沼意次を主役にしてもいい。
それがどうして蔦屋重三郎なのか?
というと、これがジェンダー的にむしろプラスになるとの判断かもしれません。
フィクションにおいて男女平等が進んでいるかどうかの指標として、キャストやスタッフ、劇中におけるセリフや出番の男女比構成があります。
田沼にするより、蔦重にした方が、女性比が高くなるんすよ。
スタッフについていえば、脚本家と考証筆頭が女性なのは、今作が初めてです。
それに、性搾取が悪とするならば、される側の本音を入れねえとうまくいかねえんです。
吉原をバッチいもん扱いして入れなかったら、いつまでたっても進まないんですよ。そういう意味で、歴史とジェンダーを考える上で、本作は画期的なんですけどね。
あともうひとつ。
アカデミー賞で二年連続、性産業従事者役が主演女優賞を獲得しました。
これも色々保守的だのなんだの言われておりやすが、
「海外では性産業を扱う作品なんてありえない!」
という『べらぼう』叩きの意見は、なんか証がないという話だったってオチでいいすかね。家治も言ってたじゃねえか、家基に、証がないってよ。
再来年大河の発表とその反応を見ていて、気づきました。
かつて、女性脚本家だと発表されると「スイーツw」と揶揄する声が湧いた。
それが今回は見えてこない。大河周りのジェンダー観も、いい方向に進んでんじゃねえかな。
ちなみに幕末は、幕府側で描いた方が天璋院篤姫と和宮が目立ちますんで、ジェンダーバランスはよくなります。
志士側は性的規範が日本史上最低クラスの連中ばっかりだしな。
ま、とにかく、国際女性デーのあと、自分なりに結論が出てスカッとしたぜ。
こちとらミモザを飾るほどおしゃれでねえんで、おでんのゆで卵をミモザに見立てて食べたけどな。
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【参考】
べらぼう/公式サイト