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【『光る君へ』感想あらすじレビュー第10回「月夜の陰謀」】
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巫山雲雨
まひろが横たわります。そっと身を重ねている道長。
まひろは静かに涙を流します。
「ふったのはお前だぞ」
「人は幸せでも泣くし、悲しくても泣くのよ」
「これはどっちなんだ?」
「どっちも。幸せで、悲しい」
「送っていこう。また会おう。これで会えなくなるのは嫌だ」
そう道長は告げました。まるで消えてしまう、神女と枕を交わしたような、そんな道長の戸惑いがあります。
ここで、今まで使う機会がなかったエロチックな漢籍知識でも。
公任だったら「なんだお前ら、巫山雲雨だな」とまとめたくなるところでしょうか。
巫山雲雨(ふざんうんう)『高唐賦』
昔、楚懐王が夢の中で神女と熱烈な愛を交わしました。
彼女は「巫山の南に住み、朝は雲、夕には雨となるわ」と告げる。
漢籍で「雲雨」と出てきたら、そういうことです。
衣を解(と)くとか。枕で語るとか。婉曲表現はいくつもあります。そういう詩的な風情を映像で見せてくる。実に高度な展開ですね。
耳を噛むとか。これみよがしにサウナに色っぽいお姉さんが入ってくるとか。そういう現代的な感性を時代劇で見せられても面白くありません。
久々に再会した妻に「子作りするべえ!」と語りかける渋沢栄一なんて、もう見ちゃいられなかった。
その点、今年の大河ドラマは、勉強になるし、センスが大変素晴らしい。やはり、時代劇はこうでなくては。
勉強はつまらないというのは、ただの思い込みです。
艶やかな古典文学なんていくらでも見つかるのだから、気合を入れて探し、読んで楽しめばよいのです。
古典ならば中身がどんなに過激だろうが、教養で偽装できます。
まずはやはり『源氏物語』あたりが良さそうですね。
陰謀決行の夜
運命の6月23日がやってきました。
土壇場になって花山天皇は、今宵のことを藤原義懐に相談しようか?と言い出す。
慌てて止める道兼。それでは決心が揺らぎ、忯子様は浄土の道を阻まれてしまうと丸め込もうとします。
そして道兼は袿で帝を覆い、そっと抜け出す。
その途中、忯子の文を持ってくるのを忘れたと花山天皇に言われると、文箱はすでに元慶寺にあると言い出します。
文箱を開けたのか?と花山天皇がひっかかるものの、道兼は必死です。
途中、見つかりそうになると、道兼は花山天皇を抱き寄せ、情事を装います。道長がまひろを抱き寄せた構図を思い出すと、なんというパロディでしょうか。
かくして女車に乗り、二人は元慶寺を目指す。
丑の刻を告げられ門が閉められる中、藤原道隆と藤原道綱は剣璽を手にして廊下を急ぎます。
道綱が転びそうになって謝ると、道隆は「声を出すな」と嗜め、画面の中に緊張感が広がる。
と、剣璽は詮子と東宮のもとへ到着。
それを見届けた道長は、関白・藤原頼忠の元へ向かい、事の経緯を説明すると、頼忠も驚きつつ内裏へ向かいます。
全ては策の通りだと確認するかのような安倍晴明。
まひろは牛車が通ってゆく音を聞いています。
そして花山天皇は剃髪され、僧侶から「出家がかなった」と伝えられます。しかし……。
「道兼、次はお前の番だ」
「私はこれにて失礼いたします」
「お前も出家するのであろう?」
「御坊、あとはお頼み申す」
「おい待て、道兼!」
「おそばにお仕えできて、楽しゅうございました」
「お前は朕を謀ったのか、待て道兼、おい、裏切り者!」
叫んだところで時すでに遅し。
舌なめずりしそうなほど嬉しい顔の道兼は、自分の意思で笑った、義務を為したと思っているでしょう。
実はそうではありません。兼家の育て上げた手駒として完成しただけなのに、それに気づかないものでしょうか。
そのころ藤原義懐は遊女と遊んでいました。そこへ帝の出家という一大事が告げられ、笑顔が引き攣ります。
藤原義懐はなぜ花山天皇と共に出家へ追い込まれた? 何か策は無かったのか?
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寅の刻が告げられ、全ては終わりました。
兼家が高らかに勝利の哄笑をあげ、一家は皆、一仕事終えた顔をしています。
そこへ藤原兼家がやってきて、突然の花山天皇譲位と、一条天皇の即位を告げます。
新天皇の摂政は兼家。
蔵人頭は道兼。
そして他の蔵人が発表されようとすると、実資が「そのようなことはおかしい!」と立ち上がります。
「筋が通らない!」
しかし、無理は通ってしまったのです。
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