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『光る君へ』感想あらすじレビュー第10回「月夜の陰謀」

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『光る君へ』感想あらすじレビュー第10回「月夜の陰謀」
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書道と恋愛相談は藤原行成におまかせ

藤原道長は、穏健な友人である藤原行成に相談します。

「おなごに歌を送ったら漢詩が返ってくる。その意味は何だろう?」

そう聞かれた行成はドキッとしています。道長も相談相手を選んでいますね。

もしも藤原斉信辺りなら、こんな風に答えるでしょうか。

「おい、そんなおなごは珍しいぞ。ききょうか? いや、ききょうじゃないよな。流石に可愛げがなさすぎるもんな。ききょうなら、そこは漢詩を元にした和歌にするだろう。なんなんだよ、その嫌味な女。やめとけって」

さらに毒舌インテリの藤原公任なら、鼻で笑ってこう来そうだ。

「あのさ、漢詩って、要するにお前みたいな志の低い相手の恋文なんて、鬱陶しいからやめろってことだぞ。そのくらい見抜けなくてどうするつもりだ?」

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斉信と公任の二人なら、藤原為時の娘が漢籍に詳しいとたどりつき、遠慮もせず、引っ掻き回した上でダメ出しをしそうですが、その点、行成ならば安心です。

おずおずと、どういう漢詩か?と問いかけるものの、答えない道長。好きなおなごがいるのかと問われても黙秘を続けます。

行成はそっと、漢詩と和歌のTPOを説明します。

和歌:恋心やちょっとした気持ちを詠むもの、女性的で柔らかい

漢詩:大志や雄々しい気持ちを歌いあげるもの、男性的で固い

敢えて女性が漢詩を詠むということは、いわば男装しているようなものです。

たしかに本場の漢詩は、恋愛もの、イベントではしゃいだもの、猫を譲って欲しいという依頼などなど、さまざまなジャンルがあります。

宴会で詠むような、軽やかな「詞」というジャンルも生まれ、中国史上に名を残す女性詩人の李清照は詞を得意とします。

しかし、日本ではともかくマッチョな方向に特化したのです。

戦国武将も、戦う気合はやっぱり漢詩!

江戸時代には頼山陽がナポレオンの生涯を漢詩に詠んでいるほどであり、要は日本独自進化を遂げたのです。

ちょっと妙かもしれませんが、道長と行成の二人を今風に例えるならこんな会話でしょうか。

現代版道長「彼女においしいものでも食べに行かないかって誘っているんだ。アフタヌーンティーとか、あんみつとか、台湾カフェとか。かわいい写真もつけて。でも毎回、その日はジムに行くって断られてさ」

現代版行成「どうしてですか? 彼女はダイエットしているとか?」

「どうだろう? 毎回これみよがしにダンベルとか筋トレ中の写真をつけてくるんだよね。激辛火鍋の写真のこともあったっけ。台湾は台湾でもタピオカより台湾ラーメンが好きだとか。辛いものが好きなんだね」

「いや、その、それは遠回しに誘いを断っていますよね……」

「そうだ、今日中に読み終わりたい本があると言われたこともある。上野千鶴子って人の本」(私は上野先生のファンですので、誤解なきよう)

「それは彼女、断固あなたの思いを断っていますね!」

ともかく行成が言葉を丁寧に選んでいて、彼なりの苦労を感じさせました。

一方で道長はしつこい。本当にしつこい。といっても必死なのだから仕方ないですね。

結局、行成がおずおずと的外れかと確認すると、道長は納得したようです。

場面変わって、道長が姉の藤原詮子を訪れます。

このとき一人の女性を見かけました。どうやら詮子の客人のようですが一体誰だろう?

と、詮子が彼女の素性を明かします。

なんでも源高明の娘(源明子)だとか。政変により父が失脚してしまった身寄りのない女性です。

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これも全ては詮子の策であり、父に対抗すべく、彼女は源氏と縁を結ぶことを企んでいました。

道長が、源倫子と、源明子と、両方妻にすればいいじゃない!

そう言い出し、道長は「なんということを!」と驚愕しています。

確かに、そんなブリーダーみたいな発想を姉から聞かされされてもなぁ。それでも道長に対して「考えておくように」と告げ、女房たちを下げさせます。

すると道長が、23日の策をそっと伝えます。

詳細を隠すため、苛立つ詮子。

家族や幼い子の前で眠ったふりなんて気持ち悪いし、それを褒める兄の藤原道隆も、言うことを聞いている藤原道兼も気持ち悪い。

道長だけが信頼できるといい、さらに己の宿命を考えるようにと伝えます。

まるで父上みたいと言う詮子。実際、きょうだいの中で一番父に似ていると思いますもんね。吉田羊さんの演技が実に素晴らしい。

そしてこの姉の企みと言葉は、道長に己の宿命を考えさせてしまったようです。

 

同床異夢

道長は漢文で会いたいとまひろに返事を書きました。

我も亦君と相見(まみ)えんと欲す。

かくしてまひろは応じ、二人は抱き合います。

「まひろ! 会いたかった!」

抱き合い、唇を重ねる二人。その様子を月が見下ろしている。

道長はたまりかねて言います。

「一緒に京を出よう。海のみえる遠くの国へ行く、俺たちが寄り添って生きるにはそれしかない」

もっと早くそうするべきだったと悔やむ道長。

藤原を捨て、まひろの母の仇である兄を捨てる。右大臣の子であることも、皇太子の叔父もやめる。だから一緒にいてくれ!

そう懇願すると、まひろも応える。

「道長様、嬉しゅうございます」

喜ぶ道長ですが、まひろは実際どうしていいかわからない。

前のめりになった道長は、父と弟に別れを告げたいのだろうと察しつつも、捨ててくれと迫る。もしも家に帰ったら戻ってこれないだろうと読んでいる。

堪らずまひろは思いを打ち明けます。

道長が政治を執らねば、直秀のような無惨な死に方をする人はいなくならない。

あのとき、泣いている姿を見て、以前に増して道長が好きになった。前よりずっと好きになった。だから帰り道、このまま遠くへ行きたかった。

でも言えなかった。そのことをずっと考えていて気づいたのだと。

直秀のような理不尽な死に方をする人を減らすには、よい政をしなければならない。

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しかし道長には通じません。まひろに会うために生まれたと訴えます。

まひろはそれを否定します。

高貴な家に生まれたのは、世をよりよいものに変えるためのはずだ。

俺の願いを断るのかと懇願する道長に対しても、とても好きだと言いながら、それでも自分の隣ではないところにいるべきだと突き放す。

諦めきれない道長は、子どもの頃から作り話が好きだから、今言ったことも偽りだと訴えます。

まひろにもわかっています。

幼いころから思い続けた相手と遠くの国でひっそりと生きていくことは彼女個人にとっては幸せかもしれない。

しかし、住む世界が違いすぎる。ひもじい思いもしたことがない道長が、魚を取り、木を切り、畑を耕す姿は想像できない。

まひろと一緒ならできると言う道長ですが、己の使命を貫いて欲しいと再度突き放します。

直秀もそれを望んでいる、と。

遠くの国には行かないけれど、都でずっとあなたのことを見つめ続ける。片時も目を離さず、道長の政治を見ていく。

彼女のそんな決意に対しても、

「一緒に行こう」

と懇願する道長。

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