こんばんは、武者です。
前回の視聴率アップ、まずは素直に喜ばしいことだと思います。
殊勲賞は、多くの方が感じられているように二階堂ふみさんの熱演でしょう。
◆不振の大河ドラマ『西郷どん』に“救世主”現る!? 二階堂ふみ登場で視聴率急上昇!(→link)
二階堂ふみさんと奄美の景色は、確かに素晴らしい。
ただ、それって、ステーキハウスで食べたサラダが「彩りよく美味しかった」みたいなものではないでしょうか。
肝心のステーキが、まるでビーチサンダルを噛んでいるような味では話になりません。
視聴率はアップでドラマの注目度が高い。
しかし個人的には、今週も残念ボルテージばかりが上昇中でして……。
奄美の自然LOVEのような温かいレビューを読みたい方はここでページを閉じてください。
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いきなり勘違い男を彷彿とさせる発言から……
はい、そんなわけで。
鈴木亮平さんの熱演が間違った方向へ誘導されてしまわないか。
心配でならない西郷どん南の島ライフが今週も始まりです。
西郷どんはコスチュームチェンジして、とぅまと仕事をしています。
ここでの言動が、なんだかなぁという感じでして。
自分よりキビを刈るのに慣れているとぅまに対して、
「女には女の仕事がある。飯を作れ」
とか言っちゃう。
そういう意図があったにせよなかったにせよ、
「飯つくるのが女の幸せだろ」
みたいな勘違い男を彷彿させてしまうのです。
この台詞を聞いて思い出したのが、昨年の『おんな城主直虎』の井伊直親でした。
三浦春馬さん演じる直親は、逃亡先からひょっこり戻って来ると、直虎の葛藤などガン無視で、
「ねえ俺イケメンじゃん? おとわも俺んこと好きじゃん? なら全部捨てて俺と結婚してラブライフ満喫しない?」
ってな態度でした。
お前の幸せは俺の側にいることだよ、ってドヤ顔で詰めてくる系。
そういう壁ドン勘違い野郎はない。
今時キュンとしない。
と、昨年ダメ出ししました。
ただ、同作品ではその後、直虎たちが「直親のスケコマシが!」とシャウトする熱い展開がありました。
それを今年は主人公が真正面からひっくり返しているんだなぁ、としみじみ脱力。
女がみんな、尽くすこと、男の飯炊きを好きだと思い込んでいるような表現はどうかと……。
それに、とぅまの方が作業はうまいわけですから、そこは島の女だろうと敬意を払って教えを請うとかしたほうがよろしくないですか?
そもそも薩摩藩士っぽくない恋愛路線にしても、見せ方は他にあるんではなかろうか?という話で。
こういうと身も蓋もないんですが、今年の西郷どんは昨年の直親ほどの圧倒的なキラキラ感がないぶん、余計に「何を勘違いしているんだこの野郎」感が増し増しです。
私の指摘が重箱の隅をつつくようだ、と感じられるかもしれませんが、端的に「制作者の勘違い」が発露しているようで、最初に触れておかずにはいられませんでした。長くなって申し訳ありません。
鉄製の車にすればいい
西郷どんは、自分の扶持米を子供たちに食べさせて、龍佐民から島民に夢を見させるな、と釘を刺されます。
まったくもってその通りだと思います。
西郷家が借金をして、いきなり大量の食事を振る舞うことを美談めいて描いた展開が序盤にもありました。
あれも勘違い系の美談精神だと思いました。そこから1ミリも成長しておりません。
ただし、『良いなぁ』と思うところもありまして。
西郷が鉄の車で製糖すればいい――というのは史実準拠の発言です。
史実では島の暮らしをつぶさに観察しから提言したものであって、本作のように、島に来ていきなり言うのは無理があるんですが、放送時間などを考えると致し方ないのでしょう。
ただ、史実の西郷さんにも悪いのですが、この助言そのものが所謂【クソバイス】だなぁと思ったりします(※持論と見せかけて考えを押しつける、ありがた迷惑なアドバイスのこと・そんなことわかっているよ、という内容だったりする)。
黒糖地獄の島民に、鉄製の車を買えるほど金銭的余裕があるようには思えないからです。
とまあ、私には「まったくわからんっ!」西郷どんの魅力が、とぅまの心には刺さるようで。
彼女は西郷から手紙をひったくります。
なんでも薩摩から手紙が来ると狂うから、絶対暴れないと約束してくれと。
そ、それは、さすがに迷惑過ぎでしょ、西郷さん。
ここで【わっぜよかピアノのBGM】が流れます。
大久保正助からの手紙の中身は鉄の車輪のことでした。
第三者の言葉で、島民思いの西郷どん優しさアピールですね。
ただ……そもそも親切の基本となる『鉄の車輪』が、視聴者にとってわかりづらい気がします。
なぜそんなに鉄の車輪が大事なのか?
黒糖作りの過程や木製車輪の不具合が説明不十分で、イマイチよくわからない。
なんとなく歯車のかみ合わせが丈夫になったりするんだろうなぁ、とは想像つきますけど、同時に重くなったりしそうで。何かあったとき、あるいは普段遣いで移動が大変そうです。
こうしたメリット・デメリットを素人の想像に任せるのは少々危険な気がします。
史実に詳しくない人向け――というスタンスのようで、突然出てくる細かいネタが、ある程度基礎知識が必要になってしまう。
そんな本作の一例が出ちゃいました。
まるで昭和ドラマのような悪代官
西郷どんが子供のために寺子屋を開いています。
このへんはホッとすると同時に、面白い場面でもありますよね。ただ、ダラダラ続けなければ、の条件ですが。
とぅまはビーチでユタからまた占いの話を聞いているようです。
これがきつい……。
いったい先週から何度このビーチに来るのでしょう。
たしかに絵としては美しいし、二階堂ふみさんは抜群の魅力。でも、何度も繰り返せばしつこくなってきます。
西郷どんは毎日畑に来て学問を教えている、という説明的な会話のあと、田中代官が来ました。
こんなテンプレ通りの悪代官が、2018年の歴史作品に出てくるってもう絶句でして……。
しかも「砂糖を隠している」ってストーリーなのです。昨年の大河のオマージュみたいな展開まだやりますか。
ここで西郷どんは、悪代官に流人風情と言われております。
初回の流刑は罪を問われてというより幕府からの隠蔽目的ですので、そこまで罵倒されるもんでもないのでは?
奇妙なのは、悪代官がイマイチ西郷の身分を知らないことです。
そのくらい普通は把握しているものだと思います。
薩摩って悪い人ばかり――そんな印象になりがちで
とぅまの兄は悪代官の不正を訴えるといいだします。
そこへ、佐民が砂糖を隠していると悪代官がまたやって来ます。
そして捕まるとぅまの兄・富堅。
乱暴な家探し。薩摩って、あまりにヒド杉ちゃん!
あのぅ、薩摩の大河なのに、主人公の周辺以外みんなゲスばっかりすぎません?
本作は島津斉彬の有能ぶりがさして描かれないうちに「黒糖地獄」の暗黒面に入ってしまいました。
良いところと悪いところを描いてこそだと思うのですが、西郷だけを持ち上げようとするばかりに、現状では薩摩のネガキャンになっていないかと不安です。こういうところも『花燃ゆ』っぽいなあ。
それにしてもこの悪代官、なかなかのマヌケです。
先週は砂糖を舐めた子供一人に大騒ぎ。今週は砂糖をみつけるためだけに大騒ぎ。
エネルギーの無駄遣いです。佐民まで捕まりました。
代官所に襲いかかるとぅまの気合いが凄まじい
そのころ子供に勉強を教えていた西郷。
龍佐民と富堅が捕まったと聞かされます。
こんなもん、絶対に西郷どんは代官所に行くとわかっている――まさしくダチョウ倶楽部の「押すなよ!」状態です。
本作はこういうパターンが多い気がします。なんか言わないほうがよさそうなことを、相手がペラペラ語り出すパターン。
テンプレ悪代官は捕らえた島民を拷問中。
西郷どんは悩んでいますが、私の頭も「?」でいっぱいです。
ナゼだ。ナゼ「安政の大獄」における井伊直弼の暴虐はスルーして、こっちをじっくりやるんだ?
おかしくないか?
幕府じゃなくて薩摩にヘイトが溜まる展開なんだぁあああ?
そして失踪するとぅま。
【わっぜソウルフルなBGM】が流れます。
とぅまは代官所に乗り込んでいました。そこに西郷どんが駆けつけます。
力づくではダメだ、薩摩役人に訴えると言い出す西郷どん。
ヤマトンチュは黙ってろと西郷どんを無視して、スローモーションまで入れて代官所を襲うとぅま。
凄まじい気合い。
いや、それ自体はとても良いのですが、憂慮すべきはこの先のことでして。
西郷の初陣となる「禁門の変」や各種事件など。
いずれも政治的に重要な戦いで、この代官所襲撃より短かいとかアッサリしていたら、許しがたいと宣言したいぐらいです。
って、たぶん、そうなりそうですよね。
なんだか、現段階では、西郷どんより、とぅまの方が強そうに見えがちで……。
とぅまはあっさり悪代官に捕まりました。
殺すにはもったいない、わしのアンゴにならんか、と迫る悪代官。
とぅまは鎌を構え、抵抗します。
どういうドラマなのか理解が追いつかないのですが、薩摩藩士が自顕流をふるう場面がほとんど皆無で、それより島娘の鎌を構えた立ち回りのほうが長いって、あんまりでは。
また土下座かっ!
そこにやってくる西郷どん。
悪代官は「こん男を捕らえろ」と言い出します。
ここで西郷どんのソウルフル土下座。
だめだこの西郷どん……ふきどん身売りの頃から何も成長していない。わっぜソウルフルに訴える手しかないのか。
この調子で江戸城無血開城まで突っ走ったり?
西南戦争の原因が、明治政府に土下座が通用しないから――だったらあまりに斬新な設定ですけど、さすがにそれはないですよね。
なんかうっす〜い悪代官コメディなのに、やたらと【わっぜ盛り上げたかBGM】が流れてくるなぁ。
幕末・西郷さんの物語を見ていて「桜田門外の変」とか望む私が悪いのですか?
これと同時進行で水戸藩が崩壊しつつあります。それも本作では西郷どんがくださせた「戊午の密勅」が原因です。
なんだか色々と泣けてくるなぁ。
そろそろ8時30分。
あと少し時間稼ぎして、何かあって、40分に西郷どんととぅまが結ばれるのが今週のハイライトなのでしょう。
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