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【青天を衝け第20回感想あらすじレビュー】
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パリの博覧会へ急展開
案の定、土方がムッとすると、武州の百姓だと言い出す。
栄一は長ったらしい自分語りを延々と続けます。観客がいて、聴かせるような長い説明です。
土方も(わざとらしく)笑っています。土方も武州多摩の百姓だと言い出して意気投合。自分語りの癖が伝染したのか、カッコつけつつ何かを語り出す。
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何人も命を奪ってきたと言い(土方は現場指揮官タイプなので、実際に彼自身が切った人数はそこまで多くありませんが)、栄一はなんだかそれを聞いている。
この動乱の京都にいながら、新選組副長が人を殺していないとでも思っていたのでしょうか?
いや、それより、栄一の仲間も斬ってきたのが新選組のはずですが……それにしても長い!
武州の風を思い出したとかなんとか。いつまで、よくわからない幕末青春トークをするのでしょう。
前向きに生きるとは言いますが、今、自分たちがいるのは治安の悪い京都です。そこで延々と話しこむ彼らは一体なんなのか?と、突っ込んでいたら本作はストーリーが進まないですね。
このあと、渋沢成一郎は江戸まで大沢を連行するのでした。ここでもまた土方が成一郎を見て「渋沢か……」とかなんだかよくわからんこと言ってます。
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小栗忠順が(わざとらしい)トークをし、慶喜の悪口を言い出します。
幕臣は確かに慶喜を軽蔑していましたが、あまりにストレートすぎませんかね。
パリの博覧会について語られ、慶喜に相談すると言います。
慶喜はそんな中でも渋沢を気にしています。みんな渋沢に夢中ですね。
土方歳三の戦友は永井尚志
今週の栄一と土方のやりとりは、問題はないのか否か?
Twitterで公式が「あれは事実です」と本人証言抜粋を入れれば結構。ただし!
正直に申しますと、汚い手でトシさんに触るなと言いたくもなる。
新選組は2004年大河になった時、国会質問に出たほど政治的な組織です。
栄一と楽しい尊王攘夷テロ仲間、水戸学フレンズも斬られまくっている。
そういう記憶が生々しいころに「土方と気があったんでえ」と言おうものなら、それこそ軽蔑されます。ゆえに栄一は黙っていた。
それが晩年、大正時代に『大菩薩峠』という幕末ものの小説が出てくると、栄一がおじいちゃんの昔話として「小説に出てくる土方に褒められちゃった、友達だよ!」と言い出した。
それだけのことです。
大沢逮捕にせよ、栄一が「いきなり逮捕はどうしたものか」と言ったことは、本人の言によればその通り。
ただし、渋沢栄一は天狗党の一件といい、「信頼できない語り手」であることは踏まえておきたい。
ドラマではさらに大いに盛っています。大沢は寝巻きを着ていて、おとなしくお縄につきました。抵抗すらしていない。
土方との話も踏み込んだことは話しておらず、リップサービス気味に褒められたと言いたいだけではありませんか?
ハッキリいいましょう。渋沢栄一の土方に褒められた話は、上司が接待カラオケで「いやあ〜」と切り出した自慢話の類で、だから何なのかと突っ込みたくもなる。
倒幕前夜の極みだった頃に、なぜ、こんなどうでもいい話をするんでしょう?
要は、土方人気に便乗して「あのトシさんに褒められた栄一スゴイ!」と言いたいだけですよね。
この針小棒大なしょうもない設定のせいで土方を侮辱するような描写を連発する。
イモと言われるほど泥臭く力強い、そんな天然理流の殺陣をダンスめいた動きにした。
振り返ってみれば、池田屋事件の土方からして決定的におかしい。
そのせいで近藤勇、永倉新八、沖田総司ら新選組隊士を侮辱したような描写にした。新選組はあくまで近藤勇が局長なのに、それをさしおいて土方が目立つ。
はなから「倒幕したかったけど、なんだかんだで慶喜に拾われたからついていった」とぬけぬけと言っている。そんな渋沢栄一と、幕府に忠義と誠を捧げ、函館に散った土方を並べて平然としているなんて信じがたい。
これほどの侮辱もありません。
まっとうに土方を弔った永倉新八あたりのことを思うと、腹が立って仕方ない。山川浩・健次郎兄弟と斎藤一の友情とはまるでちがう。
なんでこんな雑盛りトークができるのか? トシさん……。
土方にとって本物の友とは、箱館戦争で戦友だった永井尚志でしょう。
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栄一が晩年に漏らした話を根拠にここまで無神経な話をされたところでどうしたものやら。この記事には詳しく書かれています。
◆ 渋沢栄一と土方歳三は「友達」だったのか? 栄一と新選組の関係性を「大沢源次郎捕縛事件」の“伝えられ方の違い”から見る(→link)
そうそう、永井尚志か。
明治になってから「駿府まで押しかけても会えなかった永井尚志w」と得意げに語り残した渋沢栄一という人間のことを踏まえますと、ますます眉間に皺が寄ります。
結局のところ、渋沢栄一は自分にとって一番都合のいい話を引っ張ってきて、自己顕示欲で言いふらす。信頼できない語り手としか言いようがない。
彼がお好きな『論語』ならば、さしずめ「巧言令色鮮し仁」ってところでしょう。口がうまくてペラペラ話す奴に限って、仁を理解していないってこと。
教育に失敗した毒親・徳川斉昭
なんてことなの!
将軍自ら戦陣に立たねばならないなんて!
そう嘆きだしそうな慶喜。これには幕臣も大名も、武士も、豪農層までもが「ハァ〜?」とドン引きすることでしょう。
そのドン引き代表として連れてきたいのが徳川斉昭です。ドラマではおもしろおじさんですが、史実では政治犯扱いされる人物です。
彼は鹿狩りだのなんだの、ともかくやらかす。鹿狩りってただの娯楽でもなく、結構な出費です。しかもただでさえ水戸藩は金がない。
御三家のプライドで石高を上方修正して申告したうえ、儀礼などでは金を惜しみなく使いまくる。
こういうことをする藩はともかく税率があがって、農民となればたまったものではない。
薩摩藩と仙台藩の官位レースは見栄っ張りのために民を苦しめる悪政でした。『殿、利息でござる!』でもご覧ください。
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そういう薩摩と仙台対決どころではないエクストリーム悪政をやらかす水戸藩。
水戸藩は人口減少幅が全国的にも高い。それもあまりに政治がひどいから、長いことリアル『北斗の拳』状態でした。
孔子だったらさしずめこう言いますね。
「うーん、苛政は虎よりも猛しだね」
(悪政に苦しめられるくらいなら虎に食われた方がマシ!)
そんな苦しい台所でなぜ鹿狩りなんてやったのか?
娯楽ではなく「軍事教練である!」と言い訳できるから。本作でも初回で出てきましたよね。武士の狩猟は、流血に備えるような気構えを養うためにも必要です。
本作序盤でも出てきたあまりに厳しい斉昭の慶喜教育は、そういう武士の気構えを養うためのもの。そんなわけわからん教育の結果があのトンズラ慶喜か……そうあきれられたものですが、本作はその上塗りをしていて半端ないものがあります。
教育に失敗した毒親、って感じですね。
本作は、出番が長ければ長いほど、登場人物に傷がつく恐ろしいシステムを導入しました。
勝海舟のキャストが未定ですが、ホッとしつつこう叫びたい。
「勝海舟さんよ、いっそもう出てこなくていいぜェ!」
もう無血開城の功績は慶喜にくれてやってもいいから。
NHKだって、せっかく『明治開化 新十郎探偵帖』と『小吉の女房』で粋な勝海舟を出してんだ、ここで汚すこたねえや。
『八重の桜』再評価の流れが止まりません
理知的な人物と、荒々しい新選組隊士の対比。
これは『八重の桜』における山本覚馬と斎藤一という先例があり、どうしたって比較してしまいます。
池田屋で顔を見知っていた宮部鼎蔵の遺骸を見つけ、こんな才智あふれる人を斬り捨てたことに覚馬は嘆きと怒りを見せます。
すると斎藤が、そんな覚馬に斬りかかった敵を倒し、甘いと返す。
人物像がぎゅっと濃縮されたような秀逸な場面です。
山本覚馬は武力倒幕へ向かう薩長の動きを察知し、それを止めるべく、このあと奮闘して捕縛されます。群衆に紛れて姿を消す西郷隆盛に追いすがっていたもの。
一方で斎藤は、土方が会津を離れる中、会津に残って戦い続ける。
知に生きる覚馬。剣に生きる斎藤。どちらの生き様も輝きや正義があり、それは見どころがあったものですが……。
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