青天を衝け感想あらすじ

青天を衝け第20回 感想あらすじレビュー「篤太夫、青天の霹靂」

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青天を衝け第20回感想あらすじレビュー
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五輪・パラ期間中は中止

ここで五輪関連ニュースでも。

◆五輪・パラ期間中は大河ドラマ休止(→link

開催期間中は、大河が中止だそうです。 NHKは大河と朝ドラ枠でまでオリンピック推しですから、黙って受け入れるしかないでしょう。

そして謎解きはできた気がする。

どうにも本作は、準備期間の短さや雑な仕事が目立ちます。

いや、こういう記事を見れば頑張っていると言いたいのでしょうけれども。それは各人の努力不足というよりも、放送回数を何回にするか、どうするのか、不安定な要素があるので仕方ないとは思います。

ただ、それにしてもやっつけ仕事が多すぎる。

◆かくも楽しきドラマ「時代考証」のウラ側(→link

オリンピック負の歴史
オリンピック負の歴史 スポーツと政治・経経・戦争は切り離せず

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まだ龍馬に期待してるの?

そういえば本作には、坂本龍馬高杉晋作も出てきておりません。

◆坂本龍馬が出演しない可能性が濃厚 薩長同盟で江戸幕府危機…NHK大河「青天を衝け」第20回みどころ(→link

龍馬が出ないことは別に仕方ないとは思いますが……『八重の桜』でもそういうアプローチはありました。

まぁ、人気云々ではなく、本作について言えば、ストーリー展開をいちいちぶつ切りにするからわからないことが問題です。

幕末ファンは放置して、コスプレドラマにするつもりなのでしょうか。

むしろ出ないことで守られるものもある。例えば『天地人』では前田慶次最上義光が出なかったことで、彼ら自身の栄誉は守られたと思いました。

『青天を衝け』における小栗忠順なんて出たことそのものが不幸で……。

松平容保の影の薄さにも引っ掛かっていますが、出されたところで不愉快なので(役者のせいでなく脚本と演出のせい)この先もモブ扱いで結構です。

前述の通り、勝海舟ぬきの無血開城にも怖いものみたさで期待したい。

それ以上に、上記のコラムは最後の段落を気にしています。

最後は「視聴率も好評!」と言いたげなのですが、どうにも最近は苦しい。

第19回の世帯視聴率は13・6%。同時間帯ではテレビ朝日系「ポツンと一軒家」に次ぐ高い数字だった。先日、東京五輪・パラリンピック関連の放送で「青天を衝け」の放送が5回分休みになることが発表された。SNS上では栄一風に「承服できねぇ」と怒る声、「えーーーー」と悲しむ意見が相次ぎ、人気の高さをうかがわせている。

『ドラゴン桜』との比較はどうするんでしょうかね。

 

佞言は忠に似たり

推しは褒めるべし。褒めて褒めて、批判はするな!

突然何かと思われるかもしれませんが、こんな記事がありました。

◆ 若者のあいだで「批評」と「スポーツ観戦」が不人気な理由(→link

推しを批評されたくないと若者は思っている――そんな趣旨ですが、果たして正しい指摘でしょうか。なんで若者だけなの?

司馬遼太郎の小説と違うから、と研究者の説に批判する方とか。

独眼竜政宗』で見たのだから、最上義光は悪党だと言い張る方とか。

昔からそうではありませんか?

大河については「ともかく褒めろ論調」が染み付いたらそうなる。今年はなまじ序盤から「成功! 押せ押せ!」ムードが定着したから、強く感じます。

【一貫性】と【承認欲求】の罠。マルチ商法でもよく使われる心理テクニックですね。

一度決めたことはひっくり返せないし、褒めあって楽しんでしまうと、途中から貶せなくなる。

出来では『花燃ゆ』と『西郷どん』と大差はない。

しかし、評価は違う。より悪質性が高まったとは思いますが、こういうときは「褒めている意見」の論旨を突き詰めると見えてくるものがあります。

◆草彅剛がNHK大河「青天を衝け」で見せる“静”の凄み ついに民放入り混じり争奪戦に(→link

こちらの記事を何度か読みましたが、以下の部分が最もよくわからない。

「いまや栄一と慶喜が直接絡むシーンは視聴者が最も待ち望む瞬間です。これまで大河では幕末物は視聴率が取れない上、渋沢栄一という地味な主人公ということで、当初は吉沢だけでどこまで引っ張っていけるのか不安視されていました。しかし、吉沢の演技もさることながら、草彅の慶喜がすごい。吉沢が“動”で“熱”を演じれば、草彅は“静”でそれ以上の“熱”を表現しています」(芸能ライター・弘世一紀氏)

静かで熱があるとは?

それがみどころだとすれば、役の解釈がまちがっているのではないかと疑念を抱いてしまいます。

要するに、論拠が薄弱なまま「よいといったらよい!」と押し切る傾向が強くなると。

 

「反権威主義なのに、内容は権威主義」であること

大河ドラマの話なのに、なぜナチスのことを?

そう突っ込まれそうですが、これは頷くしかない記事でしたので紹介させていただきます。

◆新書の役割――「ナチスは良いこともした」と主張したがる人たち(→link

2ページ目から引用させていただきますと……。

ポリコレへの反発

筆者のツイートに寄せられた批判的なリプライを動機づけているのはおそらく、ナチスを「絶対悪」としてきた「政治的正しさ(ポリコレ)」の専制、学校を通じて押し付けられる「綺麗事」の支配への反発である。ナチスの「良い政策」をことさらに強調することで、彼らは自分たちの言動を制約する「正義」や「良識」の信用を貶め、その「抑圧」からの脱却をはかっているのである。

この「ポリコレへの反発」由来の冷笑系反発は、幕末明治になると会津藩が集中して攻撃される傾向を感じています。

典型が野口英世

彼の借金踏み倒しといった放埒な話を皮肉げに披露されることは多いものでした。

あんな奴を褒める地元民もどうかしている、という侮辱も耳にしたことがあります。

野口のやらかしなんて、渋沢栄一や北里柴三郎と比較すればさしたるものでもありません。

Wikipediaには「観光史学」という項目があります。

観光のために史実をどうこうだとか、そんなことは多くの自治体でしていること。国際的にもあります。

それを会津だけがやらかすように捻じ曲げた項目です。そしてこういう言動もSNSでバズる。

「会津藩には、そもそも新政府は“謝罪し、反省する態度さえ取れば寛大な処置を取る”と言っていますよね、それなのに抗戦したのだから自業自得でしょう」

不正確です。

藩主である松平容保は隠居し、喜徳に家督を譲った。それなのに新政府は執拗に容保の首を求めてくる。家老ではなく、藩主の首を求める時点で非常識です。

そういう幕末当時の価値観や状況を無視して、それこそ新政府が言い張ったことを無批判に受け入るし、バズるんですね。

その根底にある心理がうまく解析されていますので、長いけれども引用します。

だが「ナチスは良いこともした」と主張する人たちにあっては、そうした反権威主義的な姿勢はいわゆる「中二病」的な反抗の域を出ず、歴史から真摯に学ぼうとする態度につながることはほとんどない。

そこでは多くの場合、学校的な価値観への反発が「教科書に書いていない真実」への盲信に直結している。一般に出回っている不正確な情報、怪しげなデマの類でさえ、「教科書的」な見方を否定するものであれば、いともたやすく「真実」と見なされる。

かくも多くの人がこの落とし穴にはまってしまう原因はほかでもなく、そうした情報が権威にとらわれずに「自由」に物を言いたいという欲求と、自分たちは「本当のこと」を知っているという優越感とを同時に満たしてくれる点にある。

「白虎隊だのなんだの言うけど俺らは真実の、教科書に書かれていない歴史を知っているしw」という優越感に会津を小馬鹿にする言動はマッチする。

真摯に学んで訂正するよりも「会津ざまぁw」と言い続けるとスカッとするから、それを続けるのでしょう。

そしてこの『青天を衝け』って、そういう冷笑系歴史スタンスにマッチするんですね。

本作を見ていて引っかかることは山ほどあります。「世間は知らない本当のことを私は知っている……」と慶喜あたりが虚ろな目で言うあたりがなんとも陰謀論じみていて不気味です。雑でキャッチーな新解釈も出してくる。

「そっか! 教科書にはない歴史を大河で学んじゃった!」

そういうニーズにマッチするんですね。

こういう冷笑系にどう対抗するか?

気が重たくはなりますが、やらんでどうするかという気持ちは湧いてきます。

彼らには特徴がある。

「反権威主義なのに、内容は権威主義」であること。

リベラル思想、人権、フェミニズム。そういう考え方のせいでかえって自分たちは苦しいのだから、笑い飛ばしてやるという反権威主義。親が叱りつけるような逸脱をする少年の心……といえばいいけれど、厨二病メンタリティがある。

ヨーロッパの例が示されています。ご参考にでも。

◆ 世界が無視できない「権威主義的ポピュリズム」、こんな人たちが支えている(→link

この手の動きは、結局、権威主義に近づいてしまいます。

会津を小馬鹿にする理論なんて、明治以降、政府主導でやってきた手垢のついた話。新しい理論を生み出そうとして、否定された方向へ向かってゆく。そういう傾向がある。

会津に対して、心底何かを言いたいわけでもなく、ただ逆張りでそう言っているということは、SNSでの会話を見ていれば推察できます。難しい話でもありません。

古の学ぶ者は己の為にし、今の学ぶ者は人の為にす。

自己研鑽ではなく、冷笑主義でバズるために歴史を学べば、何らかの破綻にはぶつかる。もうそれを見逃している場合でもないのでしょう。

 

フォースと共にあれ

 

なぜ大河の話をしていてジェダイが出てくるんだ?

そう戸惑う気持ちはわかります。

小島毅先生の書籍由来で、目次の時点で凄まじい『志士から英霊へ』はおすすめです。

渋沢栄一本人の言葉を読むと、脳裏に何か澱が溜まってゆく。それが解き明かされました。小島先生の言葉を引用しましょう。

◆幕末の志士たちは「テロリスト」だった そしてジェダイはダークサイドに落ちた | ブックス・レビュー(→link

──松陰もジェダイだった?

彼はむしろ偏った見方をする人だ。自分の信念を貫くために、それに従わない人たちを間違いと決め付ける。対話や議論を求めていくのではなく、書物や教えを通じて得たものに基づいて作り上げた自身の信念こそ正しいと突き進んでいく。

儒教の古典『孟子』の中にある言葉、至誠を根拠にして、誠を尽くせば皆わかってくれるはず、と独善的に事を運ぶ。思想史的に位置づけ直すと、兵学をあずかる形で養子に行ったことから、責任感を持って軍学を身に付け、その結果として、正真正銘のテロリストになっていった。

付け加えておきますと、彼らの特徴は陽明学やら水戸学を魔改造気味で学んでいたということ。フォースのダークサイドは水戸にある。

斉昭と藤田東湖の責任は重いでしょう。

そして、渋沢栄一もそんなダークサイドを学んでいる――。

第二帝政のフランスでサン=シモン主義を学んだ。そういうことは確かにあるでしょう。

しかし私はどうしても、自分の興味範囲もあるとはいえ、水戸学のライトセーバーがヴォーンと鳴る音が聞こえてくるのです。

ここで引用したことは、栄一の性格にもあてはまると思えます。

どんな些細なことでも、ともかく自分に逆らったら厳しく徹底して批判する。渋沢栄一の大久保利通評価を信じて良いものかと私には思える。

『青天を衝け』はそんな栄一自伝準拠のためか、バランスが悪いと最初から感じていました。

霊媒師、代官、そして大久保にせよ。栄一はどうにも、自分の信念を妨害したと認定した相手を極悪非道認定する傾向があります。

劇中で家康が「武士は商業を重視しない」と定義しました。あの最大の典拠は渋沢栄一の言葉でしょう。

栄一はずっと不満があった。商人というだけで見下されている、マウンティングしてくる、だから幕府なんて滅びちまえ! そういうルサンチマンありきで自伝が展開されていると思える。

それが基礎にあるドラマならば、そういう見方を醸成しますよね。

実はこういう自己中心的な傾向は、水戸学周辺、幕末の陽明学周辺に漂っています。栄一は朱子学も徹底的に嫌っています。

心即理――自分の心が正しい、そぐわないものは全部否定してやる――そういうダークサイドに落ちる危険性がある。

そして実際のところ、栄一はダークサイドに落ちます。

労働者の権利を軽視し、足尾銅山の惨禍を生み出した。海外でも問題視された行動がある。

そうして人を踏みつけにしたことに対し、彼は真摯に反省したのかどうか?

晩年になって渋沢栄一という人間はおかしくなったのか?

それとも、本質的なフォースに問題があったのか?

答えはおわかりでしょう。

横浜焼き討ち計画といい、天狗党関連といい、栄一は若い頃よりダークサイドにかなり近づいてきた。

彼の本質はやはり、ジェダイです。

晩年までそういう水戸学は捨てていない。藤田東湖の言葉を重々しく引いてみたりする。東湖の息子である小四郎を見捨てておいて、すごい神経だとは思います。

彼のようなジェダイの考えは、到底理解できないのでしょうね。

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さらに心配なことが。

『青天を衝け』では決して主人公たちのダークサイドは描かれないでしょう。ゆえに彼らのフォースが視聴者にも伝染してしまう。

「こんな素晴らしいドラマを楽しむ私たちを否定するのか!」

そんなブォーンという低い音が、聞こえてくるようです。

もう一度、小島先生の言葉を。

──彼はダークサイドに落ちた?

正義のために戦っているつもりが、闇というものに引き寄せられていく。『スター・ウォーズ』でもよく描かれていると思う。

単純な善悪二元論、勧善懲悪ではない。

善の中にすむ悪の魅力、それこそが悪の魔力なのであり、最初から悪だとわかっていたら、力を持たない。日本語でいうところの「心の闇」。それを幕末の志士たちの生き方に重ね合わせると、彼らはなぜテロリストになってしまったのかがわかってくる。

自分たちの目指す正義が阻まれていると感じたときに、妨害するものを力ずくで排除しようとする。結局、自分たちが敵と考えていた人たちと同じ側に立ってしまう。他者を抑圧あるいは弾圧する。それがダークサイド。

大河ファンからすれば、私は悪の帝国なのでかもしれませんが、まぁ仕方ないですね。

ともあれ、皆様はフォースと共にあれ!

※著者の関連noteはこちらから!(→link

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◆青天を衝け全視聴率

文:武者震之助(note
絵:小久ヒロ

【参考】
青天を衝け/公式サイト

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