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アジア・中東

犬と人の愛憎story お隣の中国・韓国・ロシアではどう描かれている?

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2018年の干支は「戌(いぬ)」ですね。

猫と並んで人にとって非常に身近な生き物……だけでなく都会では家族化しており、ペットフード協会によると2016年時点で987万頭もの飼い犬がおります。
猫は984万匹ですので、いい勝負ですね。

いずれにせよ、あの健気さ、賢さ、愛くるしさは、表現し難いほどの可愛さがあり、思い出すだけで笑顔になる方もおられるでしょう。

しかし、その反面「犬」という言葉は、悪い喩えにも使われがちで。スパイやプライドのない服従者、裏切り者を「あの犬め」と罵ることがあります。

これは民話や神話の世界もそうだったりします。
・神秘的で英雄的な動物
と描かれるかと思ったら
・不気味、凶暴
そんな一面にクローズアップされたりしております。

日本の昔話ですと「飼い主思いの物語」が多い気がしますが、ところ変わればどんな描かれ方になるのか?
今回は隣国(中国・韓国・ロシア)から気になったお話をピックアップしてみました。

 

中国~敵将を討ち取った盤瓠(ばんこ)

――昔、中国大陸に高辛氏という一族がいました。
この一族が犬戎(けんじゅう・西方の異民族)に攻められ、大ピンチに陥りました。

困り果てた帝は、こうお触れを出します。
「犬戎の将、呉将軍の首を取った者に、我が娘を娶(めあわ)せる」
その後驚くべきことが起きました。
五色の毛を持つ「槃瓠(ばんこ)」という犬が敵将の首を持ち帰ってきたのです。

「うーむ、しかし、いくらなんでも犬と娘を娶せるのは……」
帝は流石に渋ります。
が、約束を重んじた姫は犬に嫁いだそうです――って、あれ? アレレ?

どこかで聞き覚えがありますね。
そうです。滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』の冒頭ですね。

『南総里見八犬伝』安西景連の首と八房(月岡芳年)/Wikipediaより引用

盤瓠の方が古いので、もちろん馬琴の引用です。

オリジナルではこの犬と姫の間の子が、異民族の祖先という話になっています。
『八犬伝』では犬と結婚したことを恥じた伏姫が自害したとき、そこから八つの珠が飛び散って、犬士を導くことになります。

人の言葉を理解し、その命令に従い、さらには姫を娶った犬の話。
犬の忠義と賢さと、不気味な怖さが入り混じった、そんな人の目線が感じされる話ではないでしょうか。

 

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韓国~忠義の犬は泥酔の主人を救い

犬が人を助けたという話は、それこそ枚挙に暇がありません。
おそらく忠犬というのは、犬と人がともに暮らし始めた時からいるのでしょう。

韓国の南部に「義狗碑」という石碑があります。
これはある忠犬を讃えるものでして……。

――昔、ある男が犬を飼い、とても可愛がっていました。
どこに行く時も連れて歩き、市場に行くのも一緒でした。

ある日、男は市場で酒をたらふく飲み、ふらふらと酔っ払いながら家路をめざしていました。
「ああ、飲み過ぎちまった……」
男はとうとう、道の側に倒れ込むと、酔い覚ましに眠ってしまいます。

季節は秋で、野火が広がっていました。
すると男の眠る場所にも、火が迫ってくるではないですか!

犬は異変を察して、男を必死で起こそうとしました。
しかし、すっかり眠り込んだ男はびくともしません。

犬はとうとう起こすことをあきらめました。
そして近くの水に飛び込むと、全身を濡らして男の周りを転がり、草を濡らしました。
何度も何度も、犬は水に飛び込み、転がり……飛び込み、転がり……男の周囲の草は水に濡れ、火は燃え移りませんでした。

しかし、それと引き換えに犬は疲れ切ってしまいました。
よろよろと濡れた体でうずくまると、そのまま立ち上がることはありません。

やがて男が目を覚ますと、あたりはすっかり燃えていました。
しかし周囲の草は濡れていて、男は無事。驚いて周りを見回すと、動かなくなった愛犬がいます。

男は愛犬がすっかり濡れていることに気づき、その忠義に涙しながら……その場所に「義狗碑」を建てました――。

全愛犬家が泣いてしまうような話ですね。
犬が我が身を呈して主人を守った話は、世界各地に残されています。

「犬こそ人の最良の友である」
まさしく、そのことを証明する話が伝わっております。

韓国の伝統犬である珍島犬(ちんどけん)/photo by Sysop, WikiDog Wikipediaより引用

 

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ロシア~犬の恨みは百万年

犬は忠誠心に溢れているものです。
その一方で野生の一面も持ち合わせており、牙は鋭く、人に向けられれば殺傷力も高い。噛まれたり、追いかけられたりして、苦手という方もいることでしょう。

そんな犬への恐怖心を感じさせる民話も伝わっています。

――ロシアの猟師が、愛犬と共に森へ狩りに出かけました。
薄暗く陰気な沼のある森で、どこか不気味な雰囲気。獲物もまったく捕れません。

「くそっ、ツイてねぇな……」
猟師はあきらめきれず、夜中まで彷徨い続けました。

やがて猟師と犬は、墓地の側を通りかかります。すると分かれ道に、白い幽霊が立っているではありませんか!
猟師は驚きました。
進むか、迂回するか?

「ええい、ままよ! なんともない、行くぞ!」
猟師は嫌がる犬を引きずるようにして、幽霊の方へと進みました。
すると幽霊は猟師と犬に気づいて近づいて来ます。

猟犬は勇敢でした。
幽霊に飛びかかり、猟師から引き離したのです。

「よし、今のうちだ!」
猟師は犬と幽霊が戦っているうちに、走り去って家までたどり着いたのでした。

犬は、夜が白み、鶏が朝を告げるまで幽霊と戦い続けました。
そして疲れ果て猟師の犬に戻ると、ものすごい勢いで猟師に飛びかかろうとしたのです。
家の人が引き離そうとしても、なかなかできません。

犬は怒り狂っていました。
「一体この子はどうしちまったんだい? 飼い主にこんなふうに飛びつくなんてなかったのに」

猟師の年老いた母が尋ねると、猟師はいきさつを話しました。
「そりゃお前が悪いね。犬が必死で幽霊と戦っていたのにお前だけ逃げたって? 怒るに決まっているさ。犬は恨みを忘れないよ」

母親の言う通りでした。
犬は家族の中で猟師にだけ吠え続け、牙を剥いていたのです。

犬は鎖に繋がれていましたが、その一年後、鎖を噛みちぎって猟師に襲いかかり、ついに殺してしまいました。
そして犬自身も、怒った家族によって殺されてしまうのでした――。

なんとも救いのない話ですが、そもそもは犬の忠誠心を裏切ったことが発端ですからね。
愛犬家でなくとも、犬に対して同情心を抱く方が多いのではないでしょうか。

以上、国の異なる三つの民話をあげました。

犬は健気だったり、ときに恐ろしかったりします。
が、いずれにしても人のために尽くすという点では一致しており、それこそが人類と共に共存してきた成功要因と言えるのでしょう。

戌年の今年も、その先も。
今後も彼らと仲良く暮らしていきたいですね。

文:小檜山青




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