ネズミ捕獲長

ネズミ捕獲長ラリー/wikipediaより引用

イギリス

吾輩はネズミ捕獲長である イギリス首相官邸で働く公務猫である

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ウィルバーフォース(1970-88)

奴隷解放運動につとめた博愛主義的な政治家、ウィリアム・ウィルバーフォース(1759-1833)がその名の由来です。

白黒猫の彼は、まだ幼いうちに着任。怠惰な前任者と違い、彼は賢く優秀であり、最高のネズミ取りと評されました。

かの「鉄の女」ことマーガレット・サッチャーも、ウィルバーフォースに魅了された一人です。

サッチャーは外遊先のモスクワのスーパーマーケットで、イワシの缶詰を彼のために買いました。

サッチャーと彼がテレビ出演したところ、彼にはファンレターが送られるようになりました。歴代最長の任務期間を誇った彼が死去した際には、多くのマスコミからも哀悼の意が示されたとのこと。

 


ハンフリー(1989-1997)

白と黒の長い毛並みを持つハンフリー。名前の由来はイギリスの政治コメディドラマ『イエス、ミニスター』、『イエス、プライムミニスター』に登場するハンフリー・アップルビーです。

彼の代から「首相官邸ネズミ捕獲長」は公式な役職とされました。

落ち着いていて気さくな態度の持ち主であり、優秀な職務遂行能力を持つ彼は多くの人から愛されます。そしてハンフリーの輝かしいキャリアには、予期せぬアクシデントがつきものでした。

アメリカ大統領クリントン来訪の際には、あやうく巨大なキャデラックに轢かれそうになりました。

コマドリの雛4羽殺害容疑を、マスコミからでっちあげられ、メジャーに庇われたこともありました。

活発なハンフリーは、セントジェームズ公園等自然豊かな場所にしばしば散策に出かけました。

1995年6月、彼は行方不明となり、3ヶ月後には生存は絶望的と報じられました。

するとその直後、王立陸軍医科大学から通報がありました。彼は大学構内で「PC(パトロールキャット)」と呼ばれ、暮らしていたのです。

ハンフリーが無事任務に復帰すると、クリントン大統領のファーストキャット・ソックスから祝賀メッセージが届いたとか。

そんなハンフリーにも受難の時が訪れます。政権交代後、首相官邸に着任したブレア夫人の妻が猫嫌いだと囁かれたのです。当初は噂は否定されたものの、結局ハンフリーは首相官邸から姿を消します。

「労働党め、保守党政権では任務を全うしていたハンフリーを邪険に扱うとは、残酷な連中だ!」

激しい怒りが保守党政治家からわき起こります。政府の猫は政治にも巻き込まれる、ということですね。

さらには「労働党はハンフリーを謀殺したのではないか」という噂まで流れる始末。その打ち消しのため、政府はハンフリーの生存を発表しなければなりませんでした。

ハンフリーは引退後穏やかな日々を送り、2006年、内閣府職員の家で息を引き取りました。

 


ラリー(2011-現在)

ハンフリーのあとは、黒地に白い模様が可愛らしいシビルが後任となりました。

厳しい政治の世界になじめなかった彼女は早々に引退し、その後夭折してしまいます。ネズミ捕獲長はしばらく空位となりました。

しかし2011年、首相官邸周辺を荒らすネズミの姿が報道されたことを契機として、再度ネズミ捕獲長を雇用すべきとの声が高まりました。

動物保護施設「バタシー・ドッグズ&キャッツ・ホーム」からやってきたのは、社交性と自信、そしてネズミ取りへの意欲に満ちあふれた白キジ猫のラリー。

首相官邸に迎えられるや、早速ラリーは英国民に良い影響を与えます。彼のニュースが報道されてから、保護施設から猫を引き取る人が増加したそうです。

社交性にみちあふれたラリーは、バラク・オバマ大統領らを友好的に歓迎しました。

ウィリアム王子とキャサリン妃の結婚式の際にはユニオンジャックカラーの蝶ネクタイを締め、祝意を表明しました。

ラリーは明るい性格で社交性を発揮する一方、本来の業務に対しては怠惰。ネズミがいても素通りした際には「殺し屋としての本能を失っている」と厳しい批判にさらされたりもしております。

そして2016年、キャメロンがEU離脱問題の引責辞任を表明すると、ラリーの去就に注目が集まるように……。

キャメロンは「彼はペットではなく公務員。首相が交替しても留任する」と表明。また「ラリーを嫌っていたのではないか」と問われて、こう反論もしました。

「私がラリーを嫌っていると言う人もいるが、とんでもない言いがかりだ。私はラリーを愛している。ここに証拠がある!」

そう言ってキャメロンが掲げた写真に映っていたのは、キャメロンの膝の上でくつろぐラリーの姿でした。

ラリーの動向は首相がメイに交替してからも相変わらず注目を浴びています。

2016年冬、彼の首輪がユニオンジャックカラーのものに変更された際には「強い愛国心を感じる。ラリーはUK離脱支持派なのか」等とネットで推察されたとのこと。

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