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【ポーリーヌ】
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「悪疫の地」サン=ドマングで夫を失う
熱帯の地に着いたルクレールは、厳しい態度で反乱軍に挑みます。
一方で留守を守るポーリーヌは、淫らな行為にふけっていたという噂が流れます。
同性愛、夫の部下との情事、比べるために白人と黒人の愛人両方を試す、乱交パーティ等など。
ナポレオンも心配して「夫にやきもちを焼かせるようなことをしてはいけないよ」と手紙で諫めています。
ただしこうした噂は誇張されていると思われます。
イギリスの反フランス・ナポレオン一族キャンペーンの一環とも考えられるからです。当時、熱帯の気候は人を淫らにするとも考えられていましたので、それもあるでしょう。
ただしポーリーヌが熱帯での暮らしを楽しんでいたのは確かなようです。
現地住民と開いたダンスパーティは大好評でした。
程なくして、ルクレールは反乱軍を鎮圧します。
しかし、待っていたのは反乱軍の将・トゥーサンよりも恐ろしい脅威でした。
黄熱病です。
日本人にとっては野口英世の命を奪ったものとして知られる、

野口英世/wikipediaより引用
この恐ろしい病が、フランス軍とその家族を襲撃。
ポーリーヌとディミルドまでも一時罹患するも、無事回復しました。
しかし大半の人々は病に倒れると命まで奪われてしまうのです。
結果、この疫病の大流行でフランス軍は壊滅的な打撃を受けました。
そして最愛の夫ルクレールもこの病に斃れ、僅か30という若さで帰らぬ人となったのです。
ポーリーヌは栗色の豊かな髪を切り、黒い喪服に身を包みました。
「永遠にあなたを愛し続けます……」
彼女はそう亡き夫に誓いました。
そして残された我が子と防腐処理を施された夫の遺体とともに、母国フランスに戻ることになるのでした。
黒いヴェールに包まれたフランス一の美女
黒いヴェールに包まれたフランス一の美女――。
まだ22才にして未亡人となったポーリーヌを人々はそう噂しました。
そんなポーリーヌの周囲には、夫を支えた勇敢な女性という声もあれば、南の国で乱交に耽った淫らな美女という声も。ナポレオンはそんな妹を、ゴシップと誘惑から守らねばならない、と考えます。
しかし、まだ22才で遊び好き。
美貌を賞賛されていなければ気が済まない、そんな彼女がいつまでも喪に服しているわけもありません。
ルクレールへの永遠の愛とは何だったのか……。まぁ、仕方のないことでしょう。
ナポレオンはイタリア貴族からポーリーヌの再婚相手を物色しました。
とりあえず問題がなさそうだと白羽の矢が立ったのが、28才のカミッロ・ボルゲーゼ大公でした。
地中海風の美貌を誇り、壮麗な馬車を駆るカミッロは女性にとって憧れの的でした。

カミッロ・ボルゲーゼ/wikipediaより引用
当時の馬車は維持費が高く、金持ちのステータスシンボルです。
現在で言うところのフェラーリやランボルギーニのような、いやそれ以上の価値がありました。フェラーリに乗るイケメンセレブですね。
ボナパルト家の面々が見守る中、ポーリーヌとカミッロの出会いは演出されました。
しかしナポレオンはカミッロの欠点に気づいていました。
彼の父は教養ある人物であり、弟も賢かったのですが、彼本人は頭の出来がよろしくない、と言われていたのです。
「ボルゲーゼ公はイケメンだけど、操れるのは馬車くらいだろ。まともな会話すら操れないさ」
そう噂される残念なイケメンだったのです。
しかしポーリーヌは、ナポレオンが「もうちょっとちゃんと服喪しろよ」と苦い顔をするほど前向きに再婚へ向けて突っ走ります。
「あんなアホが相手じゃあ、お前すぐに飽きるんじゃないか」
ナポレオンはそうあきれながらも、再婚を認めざるを得ない……。
その予感は的中することになります。
美しさを永遠に残したい
1804年、ナポレオンはフランス皇帝となります。
あわせてポーリーヌも皇帝の妹という称号を得るのでした。
「皇帝即位を祝うために、何か記念品を作りましょ!」
ポーリーヌは名高い彫刻家カノーヴァに依頼し、勝利のヴィーナス像を造らせることにしました。
モデルはポーリーヌ自身です。
依頼を受けたカノーヴァははじめ断ろうとしています。イタリア遠征の際、ナポレオン率いるフランス軍はイタリア各地から美術品を強奪したことを彼は不快に思っていたのです。
しかし、しぶしぶポーリーヌに出会ったカノーヴァは、その美しさにすっかり魅了されてしまいます。

アントニオ・カノーヴァ/wikipediaより引用
ミルクのように白い肌、均整の取れたプロポーション、形のよいバストにヒップ。
「この美貌を前にして、モデルにしたがらない芸術家はいるだろうか!」
大興奮です。
しかしカノーヴァは、異議を唱えます。
ヴィーナスはいかがなものか?
純潔の女神ディアナの方がよろしいのでは?
「私が純潔の女神って、説得力なさすぎるしぃ!」
ポーリーヌは即断で拒否。確かに美と愛欲の女神の方が彼女にはふさわしいでしょう。
こうしてできあがったヴィーナス像を見て人々は仰天しました。
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