「君らのいる場所は、我々は既に三千年以上も前に通過しているッ!」
そんな台詞が、漫画『グラップラー刃牙』(著:板垣恵介)シリーズにあります。
烈海王という中国拳法の達人がこの台詞を発するのですが、要するに悠久の歴史を持つ中国では「おまえらのやっていることなんてとっくに経験済みだ」ということです。
実際、同様の話は歴史的にも多々ありまして。
中国史関連の書籍を目にしておりますと「えっ、昔からそんなのがあったの?」ということをしばしば目にします。
今回のテーマ『金瓶梅』もそのひとつ。
『水滸伝』をエロパロにした二次創作スピンオフであり、16世紀後半から17世紀前半には既に存在していたのでした。
お好きな項目に飛べる目次
108人もの豪傑が登場する水滸伝 埋没キャラの武松を……
金瓶梅――。
というと、なんとな~くポルノ関連の作品であることを知っている方はおられるでしょう。
日本でも色っぽいお店や映画のタイトルにもありますし、レディースコミック版も長寿連載を保っております。
『水滸伝』が高い人気を誇っていた江戸時代には、滝沢馬琴が翻案を手がけています。
そんな知識がなかったとしても、艶っぽいタイトルでありますね。
金色の花瓶に生けられた梅の花……って、なんともゴージャス!!
もともと本作は、先日当サイトで紹介させていただいた『水滸伝』のスピンオフにあたります。
『水滸伝』ってどんな物語なの?アウトローが梁山泊に集うまでは傑作なんだけど
続きを見る
『水滸伝』には108人もの豪傑が登場するため、埋没してしまうキャラクターも多数います。
そんな中でひときわ目立つのが、行者こと武松。
ボサボサの髪型で、イラストでは虎とともに描かれ、大変人気が高い人物です。
武松は、本編の第23回から計十回にわたり、お尋ね者となる契機が描かれます。
武松が潘金蓮らの殺害に失敗したらどうなった?
武松の兄・武大は弟と比較すると冴えない男でした。
しかし、気のいい饅頭売りで、彼には美人妻・潘金蓮がいました。
潘金蓮は冴えない夫・武大に嫌気が差し、武松を誘惑。しまいには愛人の西門慶と共謀し、武大をまんまと毒殺してしまいます。
武松はこれに激怒し、潘金蓮、西門慶、その仲立ちをした王婆を殺害。
晴れて天下のお尋ね者となってしまうのでした。
『金瓶梅』は、
「武松が潘金蓮ら殺害に失敗したらどうなったのか?」
というif展開のスピンオフエロパロです。
まんまと武松を追い払った潘金蓮と西門慶は、酒池肉林の日々を繰り広げる、というわけです。
豪快な男たちが戦う『水滸伝』を、ぬけぬけとエロパロにしてしまう、その換骨奪胎ぶりには驚愕しかありません。
こんなエロパロを書いた人の素性は不明です。
ペンネームだけは伝わっていて「蘭陵笑笑生」と言います。
現代日本のインターネットスラング風に飜訳するならば「蘭陵在住大草原不可避www」とかそのあたりでしょうか。
彼の素性はわかりません。
ただし文学的な素養、豊かな女性経験、鋭い批評眼、ブラックユーモアのセンスを持っていたことは確かなようです。
※続きは【次のページへ】をclick!