青天を衝け感想あらすじ

青天を衝け第24回 感想あらすじレビュー「パリの御一新」

2021/08/16

パリの栄一と、京都の慶喜――対照的な運命が描かれます。

血洗島では餅つきをしています。正月なのに泥棒が入ったと、セリフで説明。

栄一がいなくなって五度目の正月ですが、そこへ杉浦愛蔵が入ってきました。アポなしなんですね。

杉浦は栄一の手紙を渡しつつ、夫婦愛を強調するようなことを……。まぁ、パリで美女にメロメロだったとは言えませんね。

そしてホトガラ(写真)を見せました。

千代は髷を切っていることが不満だったようで、「あさましい」と浮かない顔。

こんなものは誰にも見せられねえ!

異人と同じ姿になっているなんて!

そうショックを受けます。

実は千代は書物が好きなだけに、尊王攘夷の影響も濃かったのです。本作の描き方だと、そもそも千夜の教養や聡明さがわからないので、その点不明瞭ですが。

渋沢千代
渋沢千代(栄一の妻)は気高く聡明な女性|しかし夫は妾を新居に呼びよせた

続きを見る

 


大政奉還と言われても信じられず

慶応4年(1868年)新年――。

徳川幕府最後の正月とも知らず、パリで祝宴が開かれています。

フランス語で乾杯!

そこへエラールが幕府からの書状を持ち込まれます。

書状には、昨年末に大政奉還が行われたことが書かれていました。政権を朝廷に返し、これからは薩摩等と共に政治を行うことになるとか……。

誰もが信じられないことでした。

フランスとしても

「あれだけ援助させといてそりゃないよ!」

となってしまい、外交的にもマズい。しかしドラマでは日仏関係がしっかり描かれてないので、ちょっとわかりにくいですね。

その後、栄一はプリンスとお散歩しています。乗馬する徳川昭武はフランス語を覚えているそうです。

徳川昭武
欧州視察中に幕府が倒れてしまった!将軍の弟・徳川昭武が辿った波乱万丈の生涯

続きを見る

ここで気になるのは栄一の本心です。

彼はいわばステルス倒幕派。幕府なんて倒れればいいと尊王攘夷テロ計画をし、天狗党ともお仲間でした。

それで捕まりそうになったら平岡円四郎のスカウトを受けてふら〜っと幕府側に着いた、なかなか流されやすい人物です。

当然ながら昭武は焦っています。

彼の地位は将軍の弟。兄・慶喜がそのポジションから追われたらどうなるのか? 不安だらけです。

栄一は慶喜の言葉を思い出します。

日本で何があろうと、無闇に動いてはならぬ。しかし今後は5000ドルの送金だけが頼り。

そこへエラールがやってきます。そして証券取引所へ。

一応エラールが仕組みを説明するのですが、社債とか国債とか、本作は経済の説明もセリフで済ませるため、わかりにくい視聴者も多かったのでは? 役者やファンの熱意でなんとかしている傾向を感じます。

朝ドラ『あさが来た』でも見られた欠点ですので、なぜそこを工夫できなかったのか、惜しいです。

 


不甲斐ない慶喜

そして同年2月。

【鳥羽・伏見の戦い】における慶喜の不甲斐ない行動が、パリの栄一らに手紙で伝えられました。

この辺、ほとんど描写されないのは、慶喜の負の一面を目立たせてしまうからですかね?それとも次週に持ち越しでしょうか。

栄一が手紙を読むのですが、ラベンダーカラーで無地の壁紙がすごすぎてちょっと頭に入ってこない。

当時の壁紙ってこういうものでしたっけ? やはり調度品や衣装の作りの甘さが気になる……。というか場所もいまいち不明です。寝室にしては人が「ボンジュール」と通過してゆくのでおかしい。

ここで尾高惇忠からの手紙の内容が語られます。

平九郎が江戸で頑張っているというは死亡フラグですね。尾高長七郎は元気がないとか。

尾高惇忠
栄一の嫁兄・尾高惇忠は学問に通じるも実業はサッパリ?富岡製糸場で大赤字

続きを見る

尾高長七郎
北武蔵の天狗と呼ばれた剣士・尾高長七郎|渋沢栄一の従兄弟で義兄だった

続きを見る

次はかっさま。家族のほのぼのとした日常トークが続き、そして千代です。

栄一は千代を恋しく思っているのか。ちょっと薄気味悪い一本調子の笑いで「あいてぇなあ、あいてぇ」とセリフを。

史実ではパリで「うっひょー! 美女だらけ!」と鼻の下を盛大に伸ばし、プロの女性をお持ち帰りしようとしていたんですけど……。

しかもこれがなかなか酷い話で。

「愛しているよぉ〜、でも今仕事でここに来ているんだよね。悪いけど、帰国後日本まで追いかけてきて」

「ハァ、日本くんだりまでついて来い? バカじゃないの? 本気で愛しているならここに留まるだろうが!」

ときっぱり相手に振られています。悲しいかな、国語の授業で皆が激怒する『舞姫』未遂をやらかした男だったりするのです。

さらに明治維新などの説明セリフが入ります。

予算、知識、理解をはじめ、色々と足りてない様子がうかがえます。

セリフだけで敗走が語られる幕府軍。劇中では慶喜が頑張って軍事調練していたのになぁ。

慶喜の最低だった敗走も、セリフ処理です。彼の責任放棄についてはきっちり説明するのが誠実な対応だと思うのですが、次週に繰越なんですかね。

今のままですと慶喜=いい人♪という公式が視聴者に浸透して、幕末史が勘違いされてしまいそうです。

史実の重要性に対する取捨選択が無茶苦茶で、悲しくなってきます。

去年の『麒麟がくる』における長篠の戦いや三方ヶ原の戦いをカットするのとはワケが違うでしょう。それこそ桶狭間の戦いや金ヶ崎の退き口をカットするようなものです。

江戸城の無血開城はどこまで触れられるのか。勝海舟の出番がないのもいかがなものでしょう。

勝海舟
なぜ勝海舟は明治維新後に姿を消したのか?最期の言葉は「コレデオシマイ」

続きを見る

 

なぜあっさりと幕府を放棄できるの!

昭武のもとへは、兄の慶喜から手紙が届いていました。

なぜかそれを渋沢栄一に相談する昭武。

にしても調度品やセットの急場ごしらえ感が非常に気になるなぁ。例えば、福島県天鏡閣ロケは無理だったんでしょうか。あそこは定番でして『夏目漱石の妻』でも使われたことがあります。

話を戻しまして、当時の栄一はそこまで重要な役職でもありません。

他の幕臣を押しのけて相談されるのは、主人公補正ですね。そのような主人公持ち上げをするなら、倒幕の経緯を説明してほしいところです。

そこは期待されていたのではありませんか?

私は戊辰戦役がカットされると予想していますが、的中しそうで辛い。上野戦争や会津戦争がどこまで描かれるのか。イケメン土方を散らすため函館戦争だけ大きく取り上げるのだとしたら、あまりに不自然ではありませんか。

慶喜は留学続行を訴えますが、さすがに無理難題でしょう。

まぁ、慶応4年の慶喜も無責任の塊でしたので、ある意味、史実通りですが……さすがに栄一もキレます。

なんでそんなにあっさり幕府を放棄できるのよーッ!

そして、情けないと一気にまくしたてる。もう少し緩急をつけたほうが実感こもりそうなところですが……。

医師の高松凌雲も、なんだか綺麗事を並べて帰国。人道的な治療をする「伏線」でしょう。

高松凌雲
箱館戦争に出向きパリ万博でも活躍した医師の高松凌雲 その後はどうなった?

続きを見る

そして成一郎からの手紙も届きます。

もう慶喜は寛永寺にいるってさ。江戸に戻ったあと、篤姫和宮から怒涛の塩対応を受け、泣きつき、助命されたことは描写されず……。

小栗忠順「なんだこれは」

榎本武揚「なんでぇこれァよ……」

勝海舟「俺のいねぇ無血開城なんて前代未聞だぜぇ!」

脳内で幕臣たちが毒づいていますが、個人的に補完しないとやってられません。

渋沢栄一の振る舞いを免罪するとすれば、分身のような成一郎の奮戦ゆえでしょう。傷を負っても江戸まで戻り、戦うことにします。

しかし、そういう幕臣の思いを無視したのも慶喜。新選組や会津藩を足蹴にして、パークスあたりの思い入れもあって謹慎するのですが、その辺の史実も流されてしまいますね。

『無双』シリーズで、山賊を倒す序盤を思い出す。雑魚を倒して俺TUEEE!か。最強の勇者が転生したなろう系漫画のバナー広告も思い出します。こうやってイケメンが雑魚相手に無双することに需要があるのですね。

 


ご一新だから帰国せよ

このあと、平九郎が唐突に出てきます。

5W1Hも抜きにして、いきなり闇の中で戦う場面が描かれるのでアタマが混乱してしまう。

ちなみにこの使節にいた会津藩士・横山常守と海老名季昌は戊辰戦争に参加し、横山は戦死しています。

『獅子の時代』主人公・平沼銑次は、こうした会津藩士複数名をモデルとしています。

画面を見ながら戸惑っていたら、今度は優雅に栄一と昭武がミルクティーを飲んでいますからね。場面転換が荒業すぎませんか?

ここでまたお手紙が届きます。ご一新だから帰国せよ。

と、ひとつトリビアでも。維新という呼び方は後付けかつ胡散臭く、当時は「ご一新」とされていました。

そして平九郎が突如、妻を思いながら亡くなってしまいます。むずキュンからの圧倒的なスピード死でした。……と思ったら来週死ぬようです。

昭武のもとには「水戸の殿が亡くなった」という一報が届いています。ゆえに戻れと。

情報が得られず、困り果てる一同のもとへ、ロッシュがやってくる。

そして学業継続を主張するロッシュ。日本に帰ったら危ないとか、会津が新政府軍と戦っていると言います。

だから「巻き込まれる」とはどういうことなのでしょうか。色々と説明が省かれすぎて、いまいちピンと来ない方もおおいのではないでしょうか。

それでも昭武はがっかりして「もう帰ろう」と言い出す。

少し話がそれますが、史実における犠牲者の話でも。

水戸では天狗党・武田耕雲斎の孫・武田金次郎(藤田東湖の甥でもある)が、天狗党の乱を蒸し返し、水戸藩から人材が尽きたとされるほどの大殺戮を繰り広げております。

なんせこのときの天狗党ときたら、戊辰戦争まで敵対した諸生党を追いかけて殺しに行ったというのだから、もう血で血を洗う惨劇としか言いようがありません。

しかし、そんな重要なときに、慶喜はじめ、烈公の子たちは沈黙を守るのみ。こうなると我が身可愛さと批判されても仕方のないレベルです。

実際、この惨劇のせいで明治以降、茨城から出世する者は尽きたとまで言われております。

詳しくは『魔群の通過』(→amazon)や『天狗争乱』(→amazon)あたりがオススメです。

 

髷をあざ笑うかのようなマウンティング

栄一と昭武が胸の内を語ります。

こういうことを気にしてはいけないと思いつつ、昭武がつけているネクタイの緩さが気になってしまう。やはり衣装や結髪がどうにも甘く、洋装になってからさらに悪化したような印象。

そしてエラールと証券取引所でやりとりした思い出を回想します。

多くの人から少しづつ金を集めることで、大きなことができる!

ただ、唐突に「capital social」とか言われても、どうしても戸惑いの方が大きい。

歴史でも経済史は難解ですが、本作のメインテーマであるはずです。

「一人が嬉しいのではなく皆が幸せになる、一人一人の力で変えることができる! おかしれぇ! これだ! 俺が探し求めてきたのはこれだ!」

と、役者の熱演で押し切ろうとしている印象と言いましょうか。

ちなみに「おかしれぇ」ってのは江戸のスラングで、史実の渋沢栄一ぐらい教養を自負した幕末人がドヤ顔で使うような語彙じゃなかったりします。

現代舞台のドラマで政府トップクラスの高級官僚が「ちょwwおまww」とか「マジパネェw」と言っているようなものです。

そしてここで水戸藩士のお出迎えが。

「はははは、髷だ髷だ!」

と唐突に抱きしめる栄一。なんだか自分だけ髪型を洋風にして、髷をあざ笑うかのようなマウンティングで見てるのが辛くなります。笑われた人の気持ちとは……。

そして、彼らの帰国場面が長い!

経済人である渋沢を描くなら、商業のこと、幕末の政治事情、日仏関係を描くべきではないでしょうか。

本作では、渋沢栄一のみが西洋の商業慣習を学んだような描き方ですが、実際は小栗忠順や、パリにも同行している栗本鋤雲らだって先行導入しています。

栗本鋤雲
幕府と仏国を結んだ栗本鋤雲は小栗の盟友|明治では二君に仕えず友の志を世に残す

続きを見る

主人公ばかりでなく、当時の状況を真摯に描いてこそ、渋沢の価値も高まる気がしてなりません。

 

総評

回を重ねるごとにロンダリング技術に磨きがかかる本作。

パリからプロの女性を妾として連れ帰ろうとした、渋沢栄一の下半身事情は当然カットでした。

まさかそんな場面を描けるワケないことは重々承知にしても、つくづく難しい人物を主人公にしたものです。

慶喜も同様です。

大坂城から妾を連れで無断逃亡したことは、長く怨恨と共に語られてきました。

こちらも予想通りスルーです。

わざわざ描く必要ないとのツッコミもありそうですが、それにしたって【鳥羽・伏見の戦い】や【戊辰戦争】の不誠実な対応は今後どう処理するのでしょうか。

史実まる無視で楽しんだもの勝ち――そんな状況が見てられない日曜日になってきました。

 

幕臣と死者の名簿

慶喜の情けないやらかしをカットした結果、大勢の犠牲者が存在ごと消えたようです。

前述のように、パリから帰国して戊辰戦争に参戦した者もおりました。

出番が消えた悲しき幕臣リストを作ってみますと……。

◆モブ扱いの幕臣たち

川路聖謨平岡円四郎の恩人であり、慶喜に推挙した人物でもある。本作でも出番はある。江戸城総攻撃予定日に、無血開城を知らずピストルによる自害を遂げる。己を二君に仕えず餓死した伯夷・叔斉(はくい・しゅくせい)になぞらえた覚悟の死であった。

栗本鋤雲:フランス外交の要。溢れる才智があったものの、新政府には仕えず反骨精神を発揮する。

福沢諭吉:幕府にシラけ切っていたとは本人談。とはいえ、政府には仕えない矜持あり。栗本とは仲間。

永井尚志:大政奉還をまとめあげる。函館戦争まで転戦する。

◆出なくてよかったよね、と思える幕臣たち

勝海舟:無血開城は実質、彼のハッタリ、交渉、度胸、幻の焦土作戦ゆえに成功したもの。この無血開城MVPすら出てこないとは一体どういうことなのか? 幕末三舟は全員欠場となる。

榎本武揚:「上様ぶっちゃけビビりっすわ!」と言い、海軍を率いて函館まで転戦。土方歳三は出てきても榎本は出てこない。それが今年の大河だ。

◆イベント感覚で来週死ぬイケメンのみなさん

死人が出ることは、このドラマにとって「快なり!」かもしれません。こういう記事を読んでいるとそう思えてきます。

◆<青天を衝け>まもなく明治維新!渋沢栄一(吉沢亮)を導いた幕末イケメンを振り返る(→link

◆『青天を衝け』プレーバック!吉沢亮、町田啓太ほか名セリフ(→link

「磯村勇斗くん演じる家茂などの登場人物が亡くなっても、間髪いれずにイケメン俳優が注入されますよね。ロスになる暇がないくらいです」

イケメンが死んでもイケメンがまた投入されるから、ロスにはならない――そんな理屈が平然と語られることに、どうしても眉をひそめてしまいます。まるでフルーツタルトを扱うお店ではありませんか。

この先、亡くなっていく方たちを挙げてみますと……。

渋沢平九郎:死ぬために出て来たような親族枠としか言いようがない。平九郎の意義って、ムズキュンと死ぬことだけだったとしか……。

◆見どころ満載だった五輪前最後の『青天を衝け』 平九郎&ていの恋も進展 (1)(→link

小栗忠順:東帰した慶喜に対し、徹底抗戦を主張するも、臆病風に吹かれた慶喜から罷免される。権田村に退き暮らしていたにも関わらず、冤罪で捕縛された挙句斬首。小栗の戦略は的確なもので、あの大村益次郎江藤新平も実行されたら危険だったと思ったとされるほどであった。大隈重信曰く「日本近代化は小栗の模倣に過ぎない」とのこと。そういう死への過程をすっ飛ばし、突如来週斬首される模様。

土方歳三:有名人でイケメン! でも死んじゃう、可哀想〜という枠。成一郎が函館まで行くのでまだしもよいにせよ、天狗党の時といい、成一郎がまるで死神のようでもあり。

功績をことごとく栄一と慶喜のために消されるか吸収され、「号泣!」とツイッターでつぶやかせるために死んでしまう人々。

実際に多くの犠牲者がでた戊辰戦争も、まるでイベントです。

もう忘れ去った歴史だから問題ないという感覚なのでしょうか。

 

コスプレのような洋装

いよいよ後半戦です。メインビジュアルも発表されました。

◆【青天を衝け】吉沢亮「別の色の熱量がこもっている」 後半メインビジュアル全7種解禁(→link

ダメ出しばかりで申し訳ありませんが、これは「明治村の宣伝ポスターでは?」という思いが湧いてしまいました。

テーマが伝わって来なくて、この一枚のために考え抜かれた!という構図には見えない。

そして再開後、確信できたことがあります。

洋装の仕立て、着付け、もろもろがお粗末。ネクタイがちょっと浮き上がっていたり、曲がっていたりする。これではイケメンが台無しで、さらには結髪も問題があると思えるのです。

明治当時の髪型を再現するとカッコ悪いからアレンジをしたのでしょうか。それが中途半端で、特に昭武の髪型はいただけない。

そして来週のこの方。

公式Twitterで、土方歳三の洋装を見てギョッとしました。あまりに安っぽい軍服です。ナポレオン3世の周辺にいる士官もなんだかお粗末だとは思いましたが……。

ちゃんと体の線にあわせて縫製していない、手抜きなのでは? そもそも布の質が悪い?

コスプレレベルというか、予告で見る限り、結髪も今ひとつ。

洋装のトシさんて、むしろ本人が美形であることもあり、よほどのことがなければ失敗はしないシチュエーションです。

もちろん本作の土方歳三が失敗とは言いませんが、ただ、これがトシさんの本気か?と問われると言葉に詰まってしまいます。

軍服や洋装の比較としてBBC版『戦争と平和』でもご覧ください。

 

ではなぜ、洋装の質がこうも落ちているのか。

幕末の軍服はナポレオニックものと比較しやすく、手抜きかどうかわかりやすい。

BBCではなく近年の大河枠では、『八重の桜』における会津戦争の山川浩が比較対象としてよろしいかと思います。

山川浩の軍服も新規で作ったと推定でき、縫製から生地の作りまで、今年の土方よりはるかにしっかりしていました。

本当に、今年は一体なにがあったのでしょう?

驚きなのは、それでも以下のような記事が出ることです。

◆“土方歳三”町田啓太の洋装姿が公開「最高すぎて過呼吸」「完全に目が覚めました!」(→link

どんなにかっこよかろうが、土方の死装束です。

函館まで戦い抜き、近藤への忠義を尽くすため血を流した。土方歳三の生き方に想いを馳せると、どうにも虚しくなってきます。

 

最近『論語』が出てこない 放送回数も減った

本作は『論語』推しであるはずの渋沢栄一が主役です。

それなのに「おかしれぇ!」は出て来ても漢籍引用がほとんど出て来なくなりました。

パリでも「道ゆく女が楊貴妃や西施のようだ」と、教養を見せつけつつ書き記していたはずです。そのヒントをこの記事から見出しました。

◆渋沢栄一署名の掛け軸発見 漢詩「大学」の一説(→link

『大学』は漢詩じゃないんだな……大手新聞でこう書かれるほど、日本人の漢籍教養が尽きたとなれば、『青天を衝け』で出ないこともやむを得ないのかもしれません。

昨年は『麒麟がくる』は貴重な漢籍大河でした。

今週、出てこなかった家康は、もういっそこのまま打ち切りで結構ですが、漢籍はたまには出して欲しいと思います。

明治時代まで「ぐるぐるする!」と言いながら商活動に従事していたら、あまりに稚拙ではありませんか。

漢籍のストックすらなく、史実も踏まえない大河ドラマとは一体何事なのでしょう。

やはり本作はギリギリでやっていて、脚本の仕上がりが遅れているからこそ、他の演出がお粗末になってはいませんか?

そう考えると、この報道はグッドニュースですね。

◆大河「青天を衝け」NHKの年内終了発表に「短過ぎるでしょ」「嫌な予感しながら見たらやっぱり…」(→link

オリンピックにコロナ――そんな状況で短い大河となるのも致し方ないことでしょう。

しかし本作を短い期間で終わらせる理由はそれだけではないかもしれません。

近現代史は、とにかく資料が多い。それを考えると、本作はその読み込みが不十分というか手一杯のように見えます。イケメンのお披露目やムズキュンで尺を稼いでいる場面が毎週あるのはそのせいではありませんか。

小道具や衣装もどこか手抜きなのも、脚本の時点でかなり押していて手一杯だと滲み出ている。

もう限界ではありませんか?

『青天を衝け』は全41回。渋沢栄一の主役説もあった『獅子の時代』は全51回で、かつパリ万博が初回であったことを考えますと、やはりバランスが悪かったのです。

渋沢栄一は、維新後こそが飛躍の時期ですし、実際に功績も圧倒的に多い。

幕末期は、志士としても幕臣としても大物とは言えません。

なんともバランスの悪いドラマです。

今さらそれを言っても、もうどうにもなりませんが。

 

それでも、この誠意なき大河を愛せるか?

それでも、この仁なき世を愛せるか?

これは『麒麟がくる』のキャッチコピーです。

『麒麟がくる』の総集編を見て、改めて思うところがありました。

「去年はあって今年はないもの」があまりに多いのです。ざっと挙げてみますと……。

◆VFXが素晴らしい

『麒麟がくる』のVFXは素晴らしい――こう言うと首を捻る人もいるでしょう。

どこでVFXを使っていたっけ?

というと、遠景で使用されているとわかる場面がありました。しかし、なかなか実写と見分けがつかない。まさにこれこそが良いVFXです。

『青天を衝け』は、パリでのロケができないという事情を察するまでもなく、見た瞬間にVFXとわかります。なんとお粗末なことか……。

全体的な映像処理やカメラワークも『麒麟がくる』の方が上でした。

色彩の彩度を明るくしすぎて話題となりましたが、調整を入れて目立たなくしています。全体的によい仕事をしておりました。

◆人命を重視する

『麒麟がくる』では、比叡山で薬を売っていた少年が惨殺される場面等、生々しい人命の損失が描かれました。

死は決して軽いものではない。主人公たちが何を犠牲としているのか示されていたのです。

◆良心的な作りである

『麒麟がくる』の特徴としては、ストイックな姿勢があります。

有名かつ見所として期待される逸話であっても、創作説が濃い場合は取り入れておりません。

例えば「煕子が髪の毛を売って質に入れた」という有名な逸話も盛り込まれませんでしたね。人質とされた光秀の母・牧が磔刑にされた逸話も同様です。

◆あくまでフィクションの範囲を守る

『麒麟がくる』における最大の良心は、駒、東庵、伊呂波といった架空の人物です。

そのことが散々叩かれる材料となっていて、作る側としては不利といえます。

それでもオリキャラらを取り入れることで「あくまでフィクションである」と視聴者側が認識できるようにしていたのです。

架空の人物は視聴者が信じ込む心理を抑制します。

本作と重なる要素が多い1998年の大河ドラマ『徳川慶喜』でも、架空の人物が大きく取り上げられています。『獅子の時代』は架空の人物がW主人公でした。そういう描き方もありです。

フィクションが無謬であるべきとは思わないけど、歪曲していたり、間違った知識を受け付けてはいけないのです。

なぜ私がこんなことを書くか?というと、次のような記事を目にしたからであります。

◆徳川慶喜の描かれ方とフィクションとしての「御遺訓」──“異色”の大河『青天を衝け』これまでの総括とこぼれ話(→link

イジワルな内容も今回はいろいろと含ませましたが、それだけ『青天~』という作品に期待するところが大きいということです。今後もわれわれをワクワクさせてくれる作品でありつづけることを願ってやみません。

『青天を衝け』は異色なのではありません。良識がないのです。

この作品の“異色さ”を褒められるのであれば、それこそ『花燃ゆ』のおにぎりと松下村塾のマリアージュなんて斬新そのものですし、西郷隆盛をモテモテであると描きたかったという『西郷どん』だって“異色”でよいドラマということになりませんか?

ここで“異色”とされている渋沢栄一のクリーンさにせよ、徳川慶喜の善人ぶりにせよ、そんなものはただのご都合主義でしかありません。

異世界転生したらチートキャラになっていた。そんな展開をするなろう系小説じみた展開を大河でやらかしているだけだと思います。

結局のところ本作は、人の死や尊厳を軽んじているのでは?と思えてきます。

天狗党があんなに酷い最期を迎えた回であっても、慶喜と栄一コンビはえへらえへらしている。視聴者は彼らがちょっと楽しそうにしただけで「よかったー」とSNSに投稿し、それを針小棒大に取り上げたコタツ記事が掲載される。そんなパターンです。

私はそんな軽薄さに付き合うことはできません。

勝海舟抜きの無血開城を描くデタラメ作品にどうすればワクワクできるのか。

そんなものは牛肉を抜きにしたすき焼きを「ヘルシーで異色です」と出されるようなもの。ヴィーガンに配慮とかなんとか言いつつ、肉はなくても牛脂を使っている。そういうデタラメでしかありません。

結局『青天を衝け』には誠意がない。あるのはイケメンぐらいで、その一例を以下の記事に見ることができます。

◆『青天を衝け』の魅力は「幕臣の色っぽさ」にあり 土方歳三に圧倒的に惹きつけられたその理由(堀井憲一郎)(→link

土方は確かに美男でモテました。色気もあったかもしれません。

しかし、なぜそこばかりクローズアップされるのか。

指揮官として、幕臣として、どう生きたのか?

最も大切なのはそこでしょう。

小栗忠順ほどの才能の持ち主をガリ勉扱いするようなことを書き、そんな陰キャをイケメンマッチョにしたんだ、感謝しろと言わんばかりの言い方は流石に悲しいのです。

 

レオポルド2世ショック

植民地化したコンゴ自由国で地獄のような搾取を行い、人口が半減するような悪政を見て見ぬふりをしたベルギー国王レオポルド2世。

レオポルド2世とコンゴ自由国
手足切断が当たり前だった恐怖のコンゴ自由国|レオポルド2世の鬼虐待

続きを見る

本作では、どんな扱いにされるか?

個人的に興味を持っていましたところ、この調子です。

◆ベルギー国王は「エコノミックビースト」? 断髪した篤太夫に聞きたい「幕末は風通しが悪かった?」【青天を衝け 満喫リポート】(→link

◆ 渋沢栄一が「官尊民卑」を嫌い、民間人の人生にこだわったワケ(アーバン ライフ メトロ)(→link

ベルギー国王が直々に「わが国の鉄を買ってくれ」と口にしたことは、渋沢にとって衝撃的でした。現在なら、国王や大統領、首相といった国のトップが、他国と貿易について話を交わすことは珍しくありません。渋沢は驚きつつも、ヨーロッパのビジネス感覚こそが国の発展には重要であると考えます。

時代が十年前ならこの認識で十分かもしれません。

しかし、今世界的に話題になっているBLMや人新世の環境危機を無視してはいませんか?

終戦記念日なので、その辺を掘り下げますと……。

第二次世界大戦の背景には、列強の帝国主義同士による植民地拡張のぶつかり合いと、経済の行き詰まりという要素があります。

ゆえに、帝国主義下での経済活動は大っぴらに誉められなくなった。以前からそうであったものが、BLM運動によりより決定的になりました。

さらにはIPCCの報告によって、そして現在起きている桁外れの豪雨により、経済活動に伴う環境破壊が注目を浴びています。

◆影響は数千年、人類へ「厳戒警報」 IPCC報告を読む(→link

渋沢栄一を無理矢理SDGsと結びつけたり、彼ならきっと環境対策を打ち出せると持ち上げる記事もありますが、通じない理屈です。

帝国主義の資本家なんて、環境に関する知識は薄いし、そんなことより儲けろ!というもの。

渋沢は足尾銅山の元凶に援助しておりますから、問題外の人物です。

なお、コンゴ国民数百万人の身体を切らせたり殺害させたりしたレオポルド2世については、現在のベルギー国王が昨年、同国の国王として初めて「遺憾の意」を表明しております。

◆ベルギー国王、コンゴの植民地支配に「遺憾の極み」表明(→link


あわせて読みたい関連記事

渋沢千代
渋沢千代(栄一の妻)は気高く聡明な女性|しかし夫は妾を新居に呼びよせた

続きを見る

徳川昭武
欧州視察中に幕府が倒れてしまった!将軍の弟・徳川昭武が辿った波乱万丈の生涯

続きを見る

尾高惇忠
栄一の嫁兄・尾高惇忠は学問に通じるも実業はサッパリ?富岡製糸場で大赤字

続きを見る

尾高長七郎
北武蔵の天狗と呼ばれた剣士・尾高長七郎|渋沢栄一の従兄弟で義兄だった

続きを見る

勝海舟
なぜ勝海舟は明治維新後に姿を消したのか?最期の言葉は「コレデオシマイ」

続きを見る

【参考】
青天を衝け/公式サイト

TOPページへ


 



リンクフリー 本サイトはリンク報告不要で大歓迎です。
記事やイラストの無断転載は固くお断りいたします。
引用・転載をご希望の際は お問い合わせ よりご一報ください。
  • この記事を書いた人
  • 最新記事

武者震之助

2015年の大河ドラマ『花燃ゆ』以来、毎年レビューを担当。大河ドラマにとっての魏徴(ぎちょう)たらんと自認しているが、そう思うのは本人だけである。

-青天を衝け感想あらすじ
-

右クリックのご使用はできません
目次