父である渋沢市郎右衛門の葬儀やら初七日が終わりました。
葬列だけの描写でしたが、住職の手配や周辺住民とのヤリトリなど、色々なことも見たかった。
経済・商売に強い栄一であればテキパキとこなす、そういうシーンから垣間見えたはずです。
『麒麟がくる』では宗教考証がしっかりしていました。
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愛人くにが大きなお腹で同居を開始
そんな栄一のもとに、ていの夫として渋沢家を継ぐことになった須永才三郎がやってきました。
栄一は「自分が継がなかった」だのなんだのウダウダ。
この辺り、慶喜と似た君臣だと感じます。
明治になると、天璋院篤姫は宗家・徳川家達の養育に気を配りました。家達も「慶喜が家を潰し、自分が再生した」と口にしていたとか。
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慶喜や栄一の無責任さが表に出ないのは、このドラマが幕末明治の家父長制をないがしろにしているからでしょう。
そして栄一は大蔵省へ戻り……いや、その前に浮気告白タイムだ!
突然すぎて、口ポカーンとなった方も多かったでしょう。
どうせなら開き直って「妻妾同居宣言」をドヤ顔でしてしまった方が良かった気もします。
言い訳はできましょう。大阪で単身赴任で身の回りの世話をする“友人“(渋沢栄一流の“愛人”という意味)が必要だった。それで妊娠しちゃったなら面倒みなくちゃ♪ ということです。
大きなお腹でやってきたくには「一人で産むつもりだった」とかなんとか言いますけれども。
あれでは、まるでくにが誘惑したようなニュアンスにも取れてしまう。
なぜ、手を引っ張っって部屋へ連れ込んだ栄一の責任を最小化するような言い訳になるのでしょう。セコくありませんか?
しかし千代はわきまえた女です。
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このあと彼女から妻妾同居を提案。爽やかに笑顔でそう提案して、あとでため息をついています。
本当に気の毒……生身の人間というよりも、都合のいい女性という概念と言いますか。むしろここで激怒するくらいの方がむしろよいのでは?
おとなしい女性って、日本古来からの伝統でもありません。
「後妻打ち」という、先妻が後妻を襲撃する風習もあったほど。
来年の『鎌倉殿の13人』では、北条政子が亀の前襲撃を命じます。それまで楽しみに待ちましょうか。
あっ、渋沢には後妻の兼子もおりますので、そっちが先ですかね。
成一郎が戻ってきた
シーンは牢獄へ。
幕臣が釈放されます。
忘れられていた永井尚志もやっと出て……こない!
渋沢成一郎だけですか!
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この成一郎との再会で感動させたいようですが……。
ここで脳内コメントでも。
収監中の榎本武揚に差し入れをしていた福沢諭吉さん
「いや、心配しているのであれば、もっと書物や日用品差し入れくらいするもんでしょ? そういう場面ありましたっけ?」
そんな風に思っていたら、説明セリフでぱぱっと差し入れの本や金子があったとされます。うーむ……。
福沢諭吉さんのコメント
「あのですね、私は榎本さんの好きそうな書物をセレクト差し入れしているんです。相手の好みを踏まえたものを選ぶ。そんな場面を入れるだけでも違うと思いますよ」
栄一は道が違ったと言います。
しかし成一郎は「死ね死ねレター」&「薩長と仲良し」だった栄一にムカついてキレます。気持ちはわかります。
しかも栄一の表情は、相手を痛ましいとは露とも思っておらず、いつもの睨みつけるような顔。いったい何を表現したいのでしょう。
まるで成一郎のほうが主役のような葛藤を抱いていて、栄一が敵役にすら見えてきませんか?
栄一は「なんであんなことした」と言い、彰義隊から箱館戦争までどうせ負けただろバーーーーーーカ!みたいなことを言います。
まんまヤンキー漫画のノリ。栄一って、永井尚志らとも面識あったのに、無茶苦茶冷徹ですよね。
しかもまた「は? 俺知らねえし」みたいな感じの悪い顔を作っている。
本当に思い入れができない性格になってしまった……。
しかし、成一郎も成一郎で、突如、泣きだすんだからワケがわからない。
思っていることを全部説明していると、栄一が「生きてるから文句言えるんじゃね? よかった」とか言い出してハグ。本作って、やはり度し難いです……。
ただでさえ彰義隊は動向が追いにくい。それを追える貴重な機会が渋沢成一郎です。にも関わらず、成一郎は土方の添え物でした。
こうなると「生きていたら文句も言える」という栄一のセリフは、土方や平九郎にも失礼千万でしょう。
もちろん戊辰戦争の死者は彼等だけではない。多くの犠牲者に対して、あまりに失礼ではありませんか。
本作は、渋沢栄一が生き延びたことこそが大事だと言い、同時のその価値観は「死人に口なし」と表裏一体に見えてくる。
史実よりも悪化していて、大河の主人公をどう表現したいのか。
例えば、生き延びた成一郎を励ますとか、生きて幕臣の力を見せることが忠義につながるとか、そういう言葉だってあるでしょう。
明治人の行動原理には、そうした価値観があります。
それが栄一にはない。自分が楽しく生きていけさえいればいい、短絡的な価値観ばかりが前面に出てきてガッカリです。
成一郎の妻・およしもやってきて、いきなりハグ。これまた明治人とは思えません。それを見て笑っている栄一もなんだかなぁ。
そして結局、成一郎もコネで大蔵省へ入るのでした。
今日も悪人路線バリバリの大久保
明治政府は岩倉使節団が外遊中。
サラッと流されていますが、もったいない。
この使節団には新札の顔である津田梅子も最年少の女子留学生として参加しています。
女子留学生という斬新なアイデアを出したのは、五代様こと五代友厚と何かと因縁がある黒田清隆です。
もしも津田梅子なり、五代友厚なり、分厚く真面目に描くのであれば、かなり大事なハズ。
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使節団はさておき、留守組をクローズアップですね。
相変わらず風雨が来たら書類が全滅しそうなオープンオフィスで、本作らしい雑魚キャラ感満載の公家・三条実美。
廊下でよく栄一とすれ違って話す西郷隆盛。
であーる!であーる!の大隈重信。
何をした人なのか全然わからない!江藤新平。
栄一になんでもお任せ、下半身事情は描かれない、井上馨。
そして栄一です。
留守だし色々やっちゃえと思っていると、事前に大久保利通が止めていました。留守中は廃藩置県だけにしとけとストップをかけていたのです。
木戸孝允すら出てこないのにクローズアップされる江藤新平については理由も推察できます。
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薩摩閥と佐賀閥の対立なら、江藤新平のことも説明が必要ではありませんか?
新政府のシーンになってから、大久保だけが悪党扱いですが、薩摩閥には西郷隆盛や五代友厚も含まれ、佐賀閥を嫌っているのは長州閥も同じ。
大隈が決定的にしてやられるのは、栄一と親しい長州閥の伊藤博文の手によるものです。
その辺どう描かれるのでしょう。
五代様は陰険大久保と違うのよ!という誘導も随所にありますが、五代と本作で出てきそうにない黒田清隆は大久保路線の継承者です。
にしても今週もゲスな大久保ですね。余計なことをするな、という悪人顔だけクローズアップして、さも権力を振りかざす人物に描かれている。
岩倉使節団があまりにグダグダしていて、予定以上に日程が長引いたことも問題だったりしたのですが、ここは栄一が出し抜いてバンクを作ることにクローズアップするようです。
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