麒麟がくる感想

麒麟がくる第2回 感想あらすじレビュー「道三の罠(わな)」

岐阜県で、私の大好きな五平餅と『麒麟がくる』を組み合わせたスタンプラリーをするそうです。五平餅はポテトチップスにもなるとか

もう……。岐阜に行くしかない!

五平餅、明宝&明方ハム、朴葉味噌、牡丹鍋、モーニング、栗きんとん、鶏ちゃん、飛騨牛。いろいろありますけれども、今回は鮎やナマズ等、淡水魚料理をお勧めします。理由はちゃんとあります!

天文16年(1547年)、秋――。

尾張の織田信秀は、二万を率いて国境に布陣。光秀、東庵、駒が直面したのは、戦の構えをする美濃の姿でした。

稲葉山城下は、騒然としています。馬が走り、土埃が舞い、防衛のための備えが整えられてゆきます。

城まであとわずか。
急ぎながら三人は進んでゆきます。

 

彼を知り己を知れば百戦殆からず

城では、戦支度をしている叔父・明智光安がおります。

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光秀が旅からの帰還を報告すると、光安は、尾張が敵、性懲りもなく織田信秀が攻めてきたと説明します。

明智の者は井ノ口を守る。
ここで暗い口調で続けます。

「心しておけ。此度は苦戦。4千と2万……」

どの城も守るばかりで、美濃は兵力不足というのです。2万ともなれば、信秀には何らかの、勝利への確信があるとみた。それゆえ、殿はご機嫌斜めだと説明される。

そんな殿・斎藤利政(斎藤道三)に帰還報告をしなけばならない光秀なのでした。

「面白やこの宿は 縦は十五里 横は七里……」

そう歌う利政。こういうちょっとしたものでも、それらしい歌詞を調べるなり考えて、節をつけるから現場は大変。それでも本作は、やる。

ん? あれ?
なんだかご機嫌よさげですが。

「光安殿。敵をよく知れば、戦を百戦しても負けぬと言った方がいたな……」

光安が戸惑っていると、光秀が正解を出します。

孫子――彼を知り己を知れば百戦殆からず――そう引用してきます。

「それよ!」

利政は喜ぶ。忠実に守ってきた。
そしてこう言います。

「織田信秀のことはなんでも知っておる。夫婦の閨のことまでもな。金はあるがさして人望はない。2万は金が欲しいか、お義理で集まった輩じゃ。脆いぞ。戦は数ではない。そのことを思い知らせてやる。長井と稲葉を呼び戻せ」

そうドヤ顔になってくる。
信秀だけではなく利政(道三)の性格もわかる。

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史実のこと、大河を含めた過去作品は、この際一旦忘れましょう。

利政(道三)こんな人

・愛読書は『孫子』。読むだけではなく、考え方、セオリーが染み付いている ※光秀は『四書五経』

・閨もことまで知っている。つまり利政は乱破を尾張に放っている。情報収集は盤石。鉄砲に関心が薄いように前回思えたのは、フェイクの可能性がある

・「お義理」という軽蔑しきった言葉ひとつとっても、「義」や「道徳」を軽んじているとわかる。

・利政だって、人望はない。信秀のことをどうこう言えない。そのことを本人も意識はしている。そのうえで、開き直っている。

麒麟がくる版の斎藤利政(斎藤道三)の性格が浮かび上がってくる。

三国志演義』なら曹操が大好きとみた。
曹操は『孫子』にガッチリ注釈入れたくらいです(『魏武注孫子』)。

※単独映画主役にもなりました

上司として嫌だと光秀がぼやいていますが、確かに気持ちはわかります。スティーブ・ジョブスと似たタイプかな?

※ジョブスは『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』で出てくる程度には性格がアレでして……

そんな嫌な上司に、出張報告をする光秀。鉄砲をどうしたと聞かれ、差し出します。

ちょっと考えて手にする利政の所作ひとつとってもタメが素晴らしくて、そんな本木雅弘さんに見入ってしまう。

医者は連れて参ったのかと聞かれ、光秀は小見の方の館にいると答えます。

もう容態を見ていると知り、利政は喜びを見せているのです。

彼も冷血にはなりきれない。妻のことは気になってしまうんですね。

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豪快さを前面に出して、柔らかい心を見せないようにするけれども。そこがかえって、哀しい。

 

旅の費用は侍大将の首二つで

このあと利政は、堺を見た感想を光秀に尋ねます。

美濃もあのような豊かな町を持ちたいと思った。そう聞くと、満足げでもある利政。

「その気持ちを忘れるな。豊かであれば、戦もせずに済む」

哀しい話だ。
経済的発展のためには、無駄に金がかかり、農地が荒廃する戦なんてしている場合じゃない。

戦国大名が直面した苦悩――それは軍事力と商業の両立でした。

しかしここで、嫌な上司っぷりを発揮。

「ところでそなたの旅の費用だが、あれで足りたか?」

「はい、十分でございました」

「すぐにとは言わぬ。半分返せよ」

ぎゃー!
皆やったわけではない。金がないから渡した。返すあてがないならいくさで返せ、こたびの戦で侍大将の首二つ取れって。それで帳消しだって。

最低最悪だ。

光秀は、もう侍大将の首を二つとることで頭がいっぱいです。これは危険な瞬間です。

人の命を、金と結びつけてしまった。人間性喪失への第一歩なのです。

光秀は、小見の方の館へと呼ばれていると告げられます。それどころじゃない光秀は、わかりやすい不満を顔に出して向かうのです。

そこにいたのは、いとこの帰蝶でした。

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久々じゃな。そう言い、堅苦しい挨拶はいらぬと本題に入ります。母といっしょに明智荘に行って以来だそうです。

彼女は、母のために名医を連れてきた光秀に感謝を告げます。そのお礼を一言言いたかったそうです。

「武運を祈る!」

別れ際、帰蝶に言われて光秀は出陣を目指します。

「注進!」

そう伝令が告げます。敵は木曽川を渡り、城下に進んできているとか。掛太鼓の音が響く中、光秀も、斎藤高政斎藤義龍)も、そして利政も戦に備えています。

こなれてきたドローンの空撮が美しい。セットも凝っている。ここまでVFXのレベルを上げられるのか!

織田の大軍は、川を渡り城下町まで迫ってきます。村を放火しながら進んでくるのです。

「エイエイエイエイ!」

声を上げつつ進む織田勢に、矢が襲い掛かる。

「伝吾、佐助、いくぞ!」

この市街地戦は、映像技術がものすごくあがっている。

「侍大将ぉー!」

光秀は、侍大将で頭がいっぱいだ。

「侍大将ォー!」

「侍大将はいずこー!」

「侍大将ぉッ!」

「侍大将はいずこー!」

「侍大将ぉお!」

「首二つ! 侍大将!」

しつこい!
連呼してる……ってのも真面目なんですね。

でも、考えてみましょう。言うまでもなく、これは殺し合いです。

槍を投げ、刀を抜く。そういう命のやりとりなのに、首が現金に見えている。これは危険です。

利政も、彼らしい嫌なことをしたと思う。
戦果に賞金をかけるなんて、古今東西多くの将がしてきたことではある。そのことで、どれほど人の倫理観が歪んできたことか。

 

敵を騙すにはまず味方から。それは、己の心すら騙すこと

「エイエイエイエイ!」

そう叫び声が上がる中、使い武者が走ってゆきます。軍議をしている斎藤君臣に、凶報が届くのです。

「注進!」

茜部口、突破。
田代城、大熊城も落ちた。

そもそも、稲葉山城に敵が入っただけで、これはもう相当危険なことです。

本拠地に近い支城が段階で、あっけなく開門することもある。防御がしきれぬとなって、士気が落ちて抗戦できなくなるのです。

ましてや、美濃は川が多い。清流の国です。だから魚釣りに熱中している方が多いし、川魚料理も多いものでして。

防御に有利だった川を越えて、敵はここまで来た。もう震えてしまってもおかしくないところ。

けれども、利政は違う。扇を持ち、前を見据えている。

「兵を城に戻せ。まず引くのだ。退き終わったら全ての門を閉ざせ。篭城致す」

ここでの家臣団の顔をご覧ください。
露骨に嫌そう。すごいとも言わない。さすがとも思わない。むしろ、ついていけないシラケムードが漂っています。

でも、リアリティあるんですよね。

ものすごく強かった将や、英傑とされる人物の伝記を読んでいると、

「賢くとも、ともかく人望がない」

「性格が本当に最低でした」

「友達にしたいタイプじゃないんだなぁ……」

というような、人格最悪表現はしばしば出てくる。

人の上に立つ人は人徳者であって欲しいというのは後付けや願望です。前述したジョブスの伝記にせよ、人間性の問題を避けて通らなくなっているのです。

成功した人間は、人格だってともかく素晴らしい! そんな企業創始者伝説は、眉唾もの――そう踏まえましょう。本作主演俳優が副主人公であった朝ドラは、そういうモデルをクリーンアップしようとして失敗していました。

ともかく、こういう人のもとで働くことは、なかなかつらい。本作のテーマでもあるはず。

その一方で、光秀はまだこれだよ。

「侍大将ッ! 雑魚に用はないわ!」

思い切りヒートアップしているのに、退き鉦を鳴らされて光秀ショック!

本作の光秀は、人間離れした賢さがなくて、かつ感情に流されがちで好きです。

イライラが割とハッキリ出てしまうんですね。長谷川博己さんが、そういう役側の特性にきっちり踏み込んでいく。彼ありきのこの光秀だということは、見ているだけで伝わってきます。

高政も不満そうな顔をしています。

母の看病をする帰蝶も、退き鉦の音を聞いています。

本作はサウンドエフェクトも練り直して、効果をふまえていると伝わってくる。

軍事行動でこういう音での誘導も大事。そこまで、視聴者を引き込む。五感に踏み込む生々しさを感じます。

ちょっと色彩設計は尖っておりますが、春までにはこなれてくるでしょう。

 

神通力では勝てない

その頃、織田信秀は喜んでいます。側には神官がおります。

「千秋殿の神通力もある、もはや勝ちは疑いない!」

でも、これが織田信秀の弱いところではあるのです。

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戦国時代の人だからって、全員が神仏を信じていたわけでもない。同時に占いも気にする。むしろそれが普通。現代人だって地鎮祭に神主を呼ぶし、おみくじも引くし、お守りも身につける。御朱印集めもする。

一方で、時代を問わず、占いをバカに仕切って、信じるつもりがまるでない。そういう人もおります。
信じればかえって負けちゃう。そうバカにしまくる。

占いを信じない人が合理的でクールなわけでもない。
人のお守りを踏んづけ、墓を蹴り飛ばすような人間は、いつの時代だって嫌われます。

そういうことは最近でもある。慰霊施設をポケストップにすると、問題になるでしょう。

でも、そういう暗黙の了解を無視する人もいる……前述の曹操も、占いだの予言だのバカにしまくって生きてきました。

それで「流石ぁ、合理的!」と言われたかというと、むしろ人の心を無視する最低最悪の奴だと当時から嫌われていました。

合理主義だけではどうにもならない――人の心を踏みにじる奴は問題ありだとみなされるのです。

この先、信秀さんの嫡男が墓石をガンガンぶっ壊すようなことをやらかして、両親と教育担当者揃って苦い顔になることも、想像できてきました。

キャラクタービジュアルの時点で、土田御前は顔がうっすらと疲れている。我が子が理由なのでしょう。

「退け退け退けー!」

「十兵衛様、退き鉦です!」

「退き鉦じゃー、退き鉦じゃー!」

「なんだ?」

光秀は納得できない。一方で、信秀の弟・信康は喜んでいます。その理由として、熱田神宮の神通力を強調されるわけです。
源頼朝の母・由良御前はこの宮司の娘とされています。武門にはたまらないパワースポットだ。

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斎藤勢は、燃やした俵を転がして直撃させ、敵兵を燃やす。水に転がってやっと消火すると。

見たかったんですよねえ、そろそろ大河でも人を焼く頃だと思っていた!

気持ち悪い、どんだけ人を焼くのが好きなんだ、『ゲーム・オブ・スローンズ』でも見とけ!
そういうツッコミはあるとは思いますが。それが世界基準だからさ。

※やっぱりそこは燃やさないと

 

側女の子、その苦悩

光秀は水を受け取り飲む。高政(斎藤義龍)は不満を募らせています。
どうせ父上はわしの意見なぞ聞かぬ。そうイライラしているのです。

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これは若いからでもない。稲葉良通のような古参の家臣も不満なのです。

美濃の古くからの領主は、皆そんなものだそうです。コミニケーションに問題ありですね。

利政は、人の心を慰める暇があるなら、もっとマシなことをすると言い切るタイプだ。そのせいで自分自身も追い詰めているけれども、認めるわけにはいかないのです。

光秀はイライラしております。
いくらなんでも退き鉦が早い。蹴散らして和議を結べばいい。それが合戦のリアルではあります。

軍記で全滅だのなんだの書いていても、そういうことは滅多に起こり得ない。全体の数割が死傷するだけでも、軍とは身動きできなくなるものなのです。

稲葉山城には、兵が3千。民が2千避難してくる。
こうなると、物質補給も厳しい。

ジリジリと死ぬのを待つだけなのか?
そう不満を抱いても何の不思議もありません。

ここで高政は、悲痛な声を漏らす。
嫡男なのに言うことを聞かれない理由を光秀に聞かれ、側女の子だからと漏らすのです。

日本を含めた儒教文化圏では、正室以外の出生でも継承権は喪失しません。キリスト教文化圏とは違います。

また『ゲーム・オブ・スローンズ』かよ! そう突っ込まれることはわかっておりますが……あのドラマでは「庶子」が重要な要素でした。彼らは貴族や王族生まれでもその継承権がなく、本人に責任はないにもかかわらず、差別に直面するのです。

それと比べればマシなようで、そうでもないのが日本。

父が同じであれば、母の身分が問題になる。
「劣り腹」(※生母の身分が低い)という嫌な言葉もありまして。徳川将軍生母の身分が低いことが続いたせいか、誤解されがちな点ではあります。

高政は自分の血に対して、誇りが持てないのです。そのことを開き直れる父ほど強くもない。

愚かでもない、暴虐でもない。ただただ傷ついていて、実の親すら信じられない。そんな人物なのです。
彼のような人物は、このあとも出てくるのでしょう。

そのころ、信秀はちょっと集中力が途切れてきたのかもしれない。

でも、本人はそこに無自覚なのです。乱破から敵が飯を食べているという報告を受けて、すっかりガードがゆるゆるになってきました。

山城は攻めるほうも大変です。
ここは休憩して、明朝攻める。そういう妥当な判断をします。

お城といえば千田嘉博先生ですね。彼は山城でアウトドアにふさわしい服装をしています。そうじゃないと辛いから……。
山城は大変だ。休みましょうか。

「今日はここまで。陣を戻せ」

信秀は極めて常識的な判断をしました。

兵も楽勝ムードではあります。ご飯を食べて、戦利品に浮かれているのです。

 

戦国の皆が騙し合いができるわけでもない

一方、斎藤の軍議では。

「よし……一同、杯を置かれよ。水では流石にまずいものじゃな」

利政はそう言い、杯を置く。家臣団もこれには苦笑しています。こんなことに付き合わせるのは人が悪い。そう言っています。

利政は、織田の乱波がうろちょろしているからたぶらかすと言い切ります。

はい、ここでわかりみを感じてニコニコになる。そんな大河のアイツがいる。2016年『真田丸』の真田昌幸だよ!

利政のやっていることは、昌幸とそっくりではある。

アイツも、笑顔で騙しまくっていたじゃないですか。武田勝頼に「武田は滅びませぬ!」と言った直後、それを全否定して視聴者がズッコけた。

※武藤喜兵衛……知らない名前ですね

この違いを、三谷氏がコメディで悪ノリするから、池端氏はシリアスだから。そう処理していると、ちょっと何か罠に引っかかるかもしれない。ともかく、この二人の脳には同じOSが入っていると思いましょうか。

そして、戦国時代だろうとこういうOSで生きている人間は、そこまで多くはないのです。

「芝居はここまでじゃ。今、織田の軍勢は背を向けてのこのこ歩いている。この機を逃していつ勝てる! 篭城はここまでじゃ、全軍を集めよ、門を開け!」

かくして矢が放たれ、油断し切った織田の軍勢に突き刺さってゆきます。

帰蝶も、駒も、東庵も。異変を察知する中、反撃開始です。

馬も走り出し、だらけきった織田勢に襲い掛かるのです。

「侍大将ぉぉお!」

光秀、またブーストかかっちゃってる。

 

勝敗

そのころ、織田信秀と信康は兄弟そろって用を足しておりまして。

「注進! 注進!」

美濃の軍勢が向かっていると知らせが来ます。

「エエトウエエトウ!」

そう声があがる中、「しまった!」と悔やんでも遅いのです。

「信康!」

「兄上!」

兄の信秀はなんとか逃れても、信康はそうはできない。討たれてしまう!

「エエトウエエトウ!」

「侍大将ぉ!」

光秀も、頑張りを再開します。
ちょっといい加減うるさい。一生懸命なんですね。

「侍大将! 名を名乗れ!」

光秀はついに侍大将を押し倒し、とどめを刺そうとします。その相手の顔は、叔父上そっくりなのでした。

偶然似ていたのか、それとも、罪悪感の見せた幻でしょうか?

太鼓が響き、悲鳴が聞こえる中。カッと目を見開き、光秀はとどめを刺すのです。

木曽川にいくつも流れてゆく屍。沈む屍。踏みおられた織田の軍旗。信秀は家臣に導かれ、木曽川を渡る。

それを見つつ、扇をかざし、斎藤利政は勝鬨をあげる。そして……。
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