麒麟がくる感想あらすじレビュー

麒麟がくる第9回 感想あらすじ視聴率「信長の失敗」

天文18年(1549年)、帰蝶織田信長に嫁いでゆきます。

帰蝶の乙女心(そもそもそんなもんあったっけ?)はともあれ、これは外交的に怖い。

何が怖いって、今川義元太原雪斎からすれば、むしろ織田信秀が追い詰められているとわかってしまうから。

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そして今川義元は、三河の松平広忠を焚きつける。

一つの点が動くことで、いろいろ局面が変わる――本作はこういう難しいことをやらかします。

しかも視聴者の目を先入観で曇らせている。

恋愛、役者の顔、昭和のようなサラリーマン劇を想像するか。脚本家の年齢を理由に「どうせジジババ向けで目新しさなんてない、ベタなものでしょ」と半笑いでいるか。

本作の謀将たちのように、作り手は罠をしかけまくるのでしょう。

ちょっと『三国志』の話でも。

【定軍山の戦い】で、夏侯淵が討ち死にし、自軍が大敗した時、魏の曹操は敵軍に法正という知謀の持ち主がいると知り、こう漏らしました。

「そんなことだろうとは思ったぞ……劉備には、こうもできないだろう」

曹操の強がり?
いえ、彼なりに敗因を考えて、誰か策略を巡らす人物がいるという仮定を見いだしていたのでしょう。

思考回路を組み立てると、相手が何をしているのかがわかるようになる。

天才だから?
知略が高いから?
ゲームならばそれで話がつきますが、現実でもそういうことはできると解明されつつあります。

大河を見ながらそういうことを考えてみると、他の場面でも色々と効率化できる気がしてます。

 

松平広忠、討たれる

今川義元から戦の準備をするよう焚き付けられた松平広忠は、山道を移動しております。

近習が「そろそろ日が落ちまする」と声を掛け、麓で日暮を待ってから移動することを提案。鬼が出ると怯えている者もおりました。

これはただの臆病でも何でもない。鬼の正体が猪だろうと熊だろうと、あるいは夜盗だろうと、危険なのです。夜間の移動は避けるべきである。

「そち一人で戻れ」

広忠はそう言う。
今こうして読み返していると、広忠が愚か者に思えるかもしれない。

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人間の判断力って、いつも100パーセント出せるものでもありません。

何か不安があったり、油断があると、正しい判断ができなくなる。広忠は、あの義元の迫力に怯えていたのか?  それとも好機到来と思ったのか? ともかく冷静さを失っている可能性は否めません。

そのとき!
茂みが動いて飛び出すのは、ただの兎でした。

そしてその直後、矢が放たれて近習が倒れていきます。

「殿ッ!」

やはり本作は殺陣が生々しく、抜群の進歩を感じます。そうそう、弓矢は発射音が微音ですから急襲に向いています。

やはり、戦国ものならばこういう生々しいリアルな暗殺劇が見たいところです。乙女心? 振られたみたいでほっこりきゅんきゅん? そういうのは現代劇でいいじゃないですか。

世界のトレンドは『ゲーム・オブ・スローンズ』。日本流の残虐劇を見たいニーズに応じたいところですよね。

日本人が心清らかだの、自慢したい英雄の話だの、その手の需要は国内だけだから。がんばれ、殺陣チーム!! やはり、日曜この時間は殺伐としないとなぁ。おにぎりマネージャー、スポーツ促進ドラマはニーズがないんですね。

そこは抜かりがない本作。広忠が木の幹にもたれたところで、何物かが喉首に刃を当てます。襲撃者はただの夜盗ではありませんね。

このあと、菊丸がやってきて屍を発見。脇差を見るところが細かいですね。

顔では判別できない。首はもうない。そして持ち物で誰かがわかるほどに、広忠を知っているということです。プロフェッショナルだな。

菊丸は、三河の刈屋城へ向かいます。広忠の妻である於大の方(竹千代=家康の母)はこう言います。

「これはまごうかたなき、広忠様の脇差……」

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あまりにつらい遺品確認です。

於大の方の兄である水野信元(竹千代=家康の伯父)は、菊丸に殺害犯について尋ねます。

ポイント

◆松平広忠殺害犯は?

・菊丸の推察では、織田の者。織田の手の者が、広忠周辺に潜伏していました

◆さて、今後どうなるか?

・今川義元は黙っていられない

・今川義元相手に勝利はできない

・しかし、そうなると織田信秀の元にいる竹千代が殺害されかねない

菊丸は、竹千代様を守ると誓います。

「広忠様がお亡くなりになれば、その後をお継ぎになるのは竹千代様。いずれ三河一の大名となるべきお方を織田方が抑えたことになりまする。我らは竹千代様の影となり、命に換えてもお守りいたします」

「そなたが頼りなのじゃ。竹千代を頼んだぞ」

そう信元と於大の方は念押しします。

ただの三河の農民から、後の権現様を守る者へ。素晴らしい転換点が見えました。菊丸はじめ、オリジナルキャラクターはさんざん叩かれます。

くどいようですが【廟堂(為政者)】と【江湖(民衆)】の対比は意識しましょう。自分自身が【江湖】に住みながら、【廟堂】を目線で見下す視点は、正直、理解できかねます。両方なければ世の中は成立しないのです。

でも、ちょっとわからないことはありますよね。

織田の意図は何でしょうか?
わざわざ危険を冒して、今川義元に喧嘩を売る必要もないでしょうに。

 

夜明けに来た夫

那古屋城では、白無垢の帰蝶が一睡もせずに将来の夫を待っておりました。

そしてここで、波の音が聞こえてきます。【波音=金・未知の何か】と共に、朝日を背景にしながら彼は来ます。

帰蝶にとって未知のもの。彼女は初婚ではありませんが、誰も知らないその相手をここで見ることとなるのです。

その男は、いきなり帰蝶に顔を近づけてきました。しかもドスドス歩く。

はい、今週も信長うつけチェック!

信長うつけチェック

「距離の取り方がおかしいぞ!」

信長……いきなり顔を近づけるなぁ! 相手が困るだろ。ん? 蝮の娘はなんだかそうでもない?

→信長くんは、距離の適切な取り方がわからないんですね。これは蝮さんもそうで、いきなり「でかした十兵衛ぇ!」とスキンシップしますからね。その娘である帰蝶さんなら、対応できそうです。よかったですね!

「嫁いでくるのは蝮の娘と聞いていた。いかなる蛇女かと思うたが、ふふふ、いらぬ心配だったようじゃ。わしは織田三郎信長。この城の主じゃ」

どかっとくつろぐ信長です。

信長うつけチェック

「余計なことを言うなよ!」

普通に褒めろ、普通に! 美人だと言えばそれでよかろう。

→信長くんは、本音剥き出しで喋ることで相手がどう思うか、理解できないんですね。でも帰蝶さんなら対応できる予感がありますよ。そして相対的に、光秀くんのジェントルマンっぷりがわかります。

一方の帰蝶も気が強い。

普通の女だったら、泣いていてもおかしくはないはず。それが姿勢を正して座り直し、「信長が来るのを今か今かとお待ち申し上げておりました」と、きつい口調で言い切る。

それに、帰蝶は全然信長にときめいてないようです。まだ、この段階では。

さて、信長はどうしてすっぽかしたのでしょう?

信長のUMAチェック!

「あまが池の化物とは?」

又左衛門が、池に化け物がいると言った。城下は大騒ぎだ。

ひと抱えほど大きく、鹿の頭、目は星のように光り、その目に睨まれた途端、真っ赤な舌が伸びてきて池に引き摺り込まれそうになった!

そういうたわけた話を信じたわけじゃないけど、村の者は心の底から怖れている。化け物が出るから外に出られぬ。畑を耕せぬ。

そこで!

わしが池に入った。村の者と同じ心にならないと、UMAは見つからない。わしが池に入れば、皆安心するだろう。

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おっ?
なんだか帰蝶は呆れるどころか興味津々ですよ?

それにしてもこの二人、色気がないと思いませんか?

帰蝶は明智光安が先週言ったように、頬を赤らめておりません。信長も、別に帰蝶が美人だからとデレデレしているわけでもないのです。

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むしろ本作って、色気や恋心を強調していないと思います。そこばかりの話をしたいのだとすれば、何か誤誘導されているか、先入観の仕業でしょう。ドラマの感想って、解析することができるので、実はそこまで無害なものでもないですね。

信長は、子どものように「そちには悪いことをした。すまぬことをした」とションボリしてはいます。そのうえで、何か欲しいものがないか聞いてくる。遠慮はいらん。

ここで帰蝶は、メイク道具だの着物だの要求しない。お腹が空きましたと言う。

これはかなりぶっ飛んでいるんですよ。まっとうな婦人は、食欲をそうおおっぴらにしないのが、日本の伝統でして。

源氏物語』のような平安文学において、下品で非常識な設定をされている近江の君のような人物には、食欲もりもりしているという設定がありがちなのです。

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そういう生理的な欲求を出すことは、恥ずかしいわけでして。平安時代から時代が降れば薄くなるものの、上流婦人が「腹減った!」とストレートに言えないことは、なんとなくわかりますよね。古いドラマあたりだと、お腹が鳴って女性が恥ずかしそうにすることもあります。

そこで信長が普通の性格なら「下品な女だな〜」と、タピオカ叩きをするSNSユーザーみたいな反応をしそうなところですが(現代でも女性の食欲は咎められる?)、まるで違う反応です。

「ふふ、わしもじゃ。さりとてここで腹を満たすのはもったいなきことかも知れぬ」

末盛城で、父上がご馳走を用意していると言い出すのです。

子どもっぽいな〜。結婚式そのものより、ご飯に興味あるとか? この調子で、甘いものをもりもり食べて、家康をもてなすのでしょう。

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「今はこれでしのぐがよい」

そう差し出すのは、干し蛸。海を知らぬ帰蝶は未体験の味です。

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空き腹が紛れると勧められ、帰蝶は噛み締めています。固くて塩辛いと感想を言いつつも、海の味だと言われて興味が湧いてきます。

信長は帰蝶の隣に座り、こう言います。

「よし、お前たち、もうよいぞ! みんな参れ! これがわしの嫁じゃ!」

ここで民がぞろぞろと入室。

「色の白きおなごじゃ〜」

「たいした器量じゃ、尾張にはおらん」

のっぽの末吉。ちびの平太。槍の太助は大飯ぐらい。

「わしは今日忙しいのじゃ、お前たち帰れ!」

「白いのう、白いのう〜」

そう言いつつ、民は帰ります。これは帰蝶だからよいようなものを……。

信長うつけチェック

「嫁の顔を見せるなぁ!」

嫁いできたばかりの嫁を、いきなりわけわからん連中に見せるって、何を考えているんだ?

→信長くんは、とことん帰蝶さんの気持ちに寄り添えないんですね。平安時代ほどではないとはいえ、当時の上流女性が顔を見られるのは、恥ずかしいことです。まぁ、帰蝶さんでよかったとは思います。

信長と帰蝶は、すっかり気が合っています。もしも相性が悪ければ、最低最悪のところへ向かうほどでした。

こんな信長が出てくる戦国乙女ゲーにハマれますか?

なまじ染谷将太さんだけに、かわいいだの、イケメンだの、丸顔で迫力がないだの、言われておりますが……。

視聴者が絶望する、いい信長だぁ!

毎週のように絶望しましょう。これぞ誰も見たことがない信長だ!

信長はわかりやすすぎたかもしれない。岐阜駅前のライトアップゴールデン信長像すら、もう珍しくないもんね。そこで、頭の中身を新解釈し、入れ替えたと。

でも、本作スタッフは適当にぶっ飛んだ造型にしたわけでもない。理詰めで造型してますね。

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そうそう、帰蝶は「男前!」と言われておりますが。女性は男前な行動を取らないもの、女性がサバサバすることをいちいち男性性と結びつけるのは誤解のもとかもしれません。

帰蝶は、帰蝶ゆえに。信長は、信長ゆえに、ぶっとんでいるのです。

ついでに言いますと、信長がそこまで情に篤いかどうかも注目したい。ただの好奇心からかもしれませんから。

信長の行動だからと、なんでもプラスにしようと考えるとか。従来の信長像との比較をする意見はたくさんあるのでしょうけれども、一回全部忘れるくらいの方がよいかもしれません。

 

うつけ者からの祝いの品

末盛城にて、結婚報告です。信長と帰蝶夫妻を見て、父の信秀と母の土田御前も満足げではあります。

土田御前も帰蝶も立て膝ですが、当時の女性は正座ではありません。これが正しい姿勢です。

平穏な時が流れております。

信秀は、斎藤利政(斎藤道三)が育てた見事な松にご満悦。

へぇ〜、蝮にガーデニング趣味が。彼なりにリラックスしたかったのかな。なんでも、その松と帰蝶は背比べをしてきたとか。

帰蝶の成長と嫁入りに合わせて育ててきたとか?

どうですかね。帰蝶は初婚でもないですし。

枯れぬ松はめでたいもの。よい心がけだと信秀もうれしそうになっております。

帰蝶が松に寄せてめでたいことを言うものですから、土田御前も頼もしいと安心感を見せております。

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美濃とはいろいろあった。

されどこれを機に、水に流していこうじゃないか!

信秀はホクホクムードです。

ここで信長は、自分もサプライズギフトがあると言い出す。

「この尾張の繁栄には欠かせぬものでございます!」

若侍が持ってきた箱を、信秀は開けます。

まぁ、そこはね。貝合わせとか? 何かめでたいもの? そう思いたいじゃないですか。

それが、生首でした。

信秀はため息をつく。そしてこう宣言します。

「そなたらには、座を外してもらいたい」

土田御前は立ち上がりながら、中が見えたのでしょう。

うれしそうな信長に、嫌悪感を出して去ってゆきます。

ここまで怒っていても所作が美しいところに、檀れいさんの真価を見ているとは思えるのですが。帰蝶も出て行きます。

こうなったら、信長は何か嫌な予感があってもよいところです。

けれども、ニコニコしてる。

「なんのつもりや! これを見せればわしが喜ぶとでも思うたか? 松平広忠の首など! このうつけが!」

信秀は現実を認めたくないのか、うううぅう……と困っております。

信長……無駄に頑張ったな。臭いしないように塩漬けにしたりして、血抜きもして、努力はしたんだとは思います。そういう努力を評価されなくて、信長ショック!

「解せませぬ! 広忠は今川に擦り寄り、この尾張に攻め込もうとしていた。広忠を倒し竹千代を抑えたのは、三河を抑えたのも同然!」

信長が、ただのうつけならばどれだけマシか。どうでもいい農民の首だったら、どれほどよいことか。なまじ、説得力はあるんだよなぁ……。

信秀は、もう道徳教育はあきらめているのか、時機があると怒ります。

「今川に勝てるか?」

信長は、尾張は備えているし、美濃が黙っておりませぬと反論。

彼なりに考えたんですね。美濃の同盟がある今こそ広忠を殺そう! 彼なりにがんばったね……。

信秀は、そこまで美濃を信じられぬと言います。まだ日が浅い。こちらが危うくなれば噛み付いてくるのが蝮だと。

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だんだんと、信長は理詰めで負けるとわかってきたようです。

「この首、持っていけ!」

そう言い切られ、信長は悲しそうにこう言います。

「わしは父上に褒めてもらえると思って……」

そんな我が子を、信秀は「このうつけが!」と打ち据えます。

「愚か者……」

信長は首をもっておとなしく去ってゆくしかありません。

信秀、不安そうな顔でため息をつきます。病状は進行中のようです。

 

暗殺の流儀

最近、レビューを書いていて気づいたことがあります。

皆さん、ハセヒロさん光秀とのバーチャル恋愛に夢中で、帰蝶に号泣したとか(そもそも帰蝶はそこまでショックだったのか? そこは気になります。戦国大名の娘が?)。

染谷さんがかわいいとか(確かに実写版ピーターラビットのよう)。

そういう意見を見かけますが、私が同じところに着目しても、安心感はあっても斬新性はない。そこで、もっと別なことを真剣に考えたい。せっかくの大河ですからね。

テーマはスマートな暗殺について。
戦国の世の中だからこそ、どうやって敵を始末するのが最善なのか、考えてゆきたいところです。
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