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【堀尾吉晴】
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吉晴が孫・忠晴の後見人となる
どうにか月山富田城まで戻ってきた忠氏は、そのまま床に就き、27歳という若さで亡くなってしまいます。
新城の場所で揉めていなければ、息子がこんなにも早く死ぬことはなかった……そう考えたら堀尾吉晴も頭を抱えたことでしょう。
まぁ、早逝したからこそ「禁断の神社へ足を踏み入れた」というエピソードが作られたという可能性は否めませんし、そっちの可能性の方が高い気はします。
いずれにせよ吉晴にとっては藩の立て直しが急務。
忠氏の忘れ形見である堀尾忠晴を後見して、松江藩を治めました。
城は結局、忠氏が最初に選んだ亀田山に築かれています。
これが現在の松江城で、山陰地方で唯一の現存天守でもあります。

松江城
残念なことに、吉晴は城が完成する直前に亡くなっていますが、この場所に決めたのは、息子への罪滅ぼしや鎮魂の意味もあったのでしょう。
ちなみに吉晴は、秀吉時代に「アイツは仏様みたいに温厚だな」ということで、通称とあわせて「仏の茂助」といわれていたとか。
むしろイケイケな一面のほうが目立つ気もしますよね。
吉晴とは直接関係ないのですが、松江城の工事に関しては人柱伝説がいくつかあり、物騒なイメージが強い気がします。
時代的に、工事がうまくいかないから人柱を……というのはわからなくもありませんが、松江城の場合、経緯が酷い上に複数の伝説があります。
完全に余談ながら、もののついでに見ておきましょう。
なぜか怪談が多い城
まず一つ目がこちら。
◆盆踊りの日、参加者の中で一番美人かつ踊るのが上手だった少女が、何も知らないうちにさらわれて埋められた
というものです。
この伝説は、以下のような恐ろしい話が続きます。
・城は完成したが、城主親子が急死し、その後改易になった
・天守からすすり泣きが聞こえるようになった
・城下で盆踊りをすると城が揺れるようになった
本当に笑えない三重苦ですね。
もうひとつはこちらの伝説です。
◆吉晴の旧友を名乗る虚無僧がやはり人柱になった
こちらの話の流れは以下の通り。
工事がうまくいかない箇所の地面を掘ってみたところ、槍の刺さったどくろが出てきた
↓
虚無僧が祈祷を行って鎮めようとした
↓
祈祷が効かなかった
↓
「人柱を立てればどうにかなるのでは」
↓
誰も名乗り出る人がいない
↓
祈祷した虚無僧が「私の息子を仕官させてくれるのなら」という条件で人柱に
↓
工事はできたが、堀尾家は断絶・改易になった
というもので、虚無僧の扱いがあまりにも辛いですね。
そして、こんな話もあります。
◆尺八を吹いていた虚無僧を捕まえて人柱にしたら、その後、尺八の音が聞こえてくるようになった
世の中に人柱の伝説は多々あります。
しかし松江城の場合は話の共通点がなさすぎて、事実だったのかどうかが全くわかりません。
中間を取ろうとすると「盆踊りの時期に尺八を吹いていた美人の尼さんが、何も知らされずに人柱になった」みたいな感じになっちゃいますし……。
しかも 松江城の向かいに、怪談話でお馴染み・小泉八雲の家があるというのが、もう箔がつきすぎです。
竹田城の赤松広秀といい、松江城といい、中国地方のお城は幽霊の絡む話が多いんですが……こういうのも地域柄なんですかね。
甫庵太閤記の著者が一時仕えていた
人柱の話で終わるのも何なので、堀尾吉晴の周りにいた人のことを少しだけ触れて〆るとしましょう。
『甫庵太閤記』などの著者・小瀬甫庵が、一時期、吉晴の侍医として仕えていたといわれています。
彼は池田恒興や豊臣秀次にも仕え、秀次事件の後に一時期の蟄居を経て堀尾家に来たのだとか。
堀尾吉晴が慶長十六年(1611年)に亡くなった後、甫庵は再び流浪したようで、幽霊騒ぎを恐れたのか、嫌気が差したんですかね。
その後の甫庵は播磨や京都などに住んだ後、息子が前田家に仕えていた縁で寛永元年(1624年)に金沢へ移ったとされています。
高山右近といい、前田家は何かと行き場に困った人を受け入れている感がありますね。
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長月 七紀・記
【参考】
菊地浩之『豊臣家臣団の系図』(→amazon)
小和田哲男『中公新書 豊臣秀吉』(→amazon)
国史大辞典
日本人名大辞典
世界大百科事典
日本大百科全書(ニッポニカ)
堀尾吉晴/Wikipedia
松江城/Wikipedia
ほか