るろうに剣心 明治村 コースター 高荷恵/amazonより引用

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『るろうに剣心』高荷恵~色っぽい大人の女設定は会津女性としてどう?

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会津藩の女性はともかく融通がきかず

恵が明治時代の会津女性とはかなりかけ離れたイメージであることも、指摘させてください。

会津藩の女性はともかく融通がきかず、頑固で、堅苦しくて、ああいう「女狐」キャラとはむしろ正反対とされてきました。

新島八重に個人的怨恨を募らせた徳冨蘆花が、フィクションを通して広めた事情もあったりします。

三島弥太郎と三島和歌子とは?三島弥彦の兄と母はどんな人物だったのか

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ああいう蓮っ葉(※色っぽくて軽薄な口調)と、会津弁の相性も悪い。

あの恵の話し方から剣心が会津出身だと見抜くのは相当無理がある――そんな情け容赦ないツッコミもしたくなってしまいます。

アニメにせよ実写にせよ、全然会津弁が出ていないので、もう仕方ないとは思いますが。

 

いろいろと野暮なことを突っ込みましたが、明治時代を代表する医者として会津出身の野口英世がおります。そういう意味では、粋な気遣いがある人物だとは思います。

勉強熱心な和月先生が、会津藩設定の不備に無自覚であったとも思えません。週刊連載ともなれば、多忙でなかなか調べものもできないのですから、仕方ないところはあります。

そんな和月先生の会津藩ルーツの女性として、惜しい存在がいます。

『GUN BLAZE WEST』(→amazon)のコリス・サトーです。

史上初の日系人移民として、会津藩の人々がカリフォルニアに上陸し「若松コロニー」を作りました。

しかし、この移民計画は頓挫して、散り散りになってしまいます。

「OKEI」と刻まれた日本人女性・おけいの墓が発見されるまで、彼らの存在は忘れられていました。

コリス・サトーはそんな会津藩ルーツの日系人であると推察できます。

そんなコリスをどうするつもりであったのか、気になって仕方ないところではあります。

 

明治女医の「ならぬことはならぬ」

野暮なことは書いてきましたが、明治の会津出身者として、女子教育に貢献した人物として、新島八重、大山捨松、海老名リン、若松賤子らがおります。

医者としては、野口英世がいます。

彼らを思い起こさせる恵の設定は秀逸です。

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当時少ない女医を描いたことは、女性応援の意味があるのかもしれない。

そういう見方もできますが、これはどうでしょう。恵が料理上手で、それに対して薫がメシマズという時点で、連載当時らしい残念女性描写だなあ……となってしまう点ではあります。

女は胃袋を掴むという描写に、連載当時の時代性はやはり感じてしまいます。

ただし、繰り返しますが、和月先生一人の問題ではありません。

さらに野暮を承知で、恵には医療従事者として大問題があることを指摘させていただきます。

髪型です。

当時の女性は長髪をまとめました。前髪を作ることもあの年齢ではまずありません。

これについては、デザインのモチーフが小畑健の漫画『CYBORGじいちゃんG』の若いばあちゃんであると和月先生本人が明かしているので、突っ込むのも無粋の極みではあります。

実写版では髪の毛を結う場面が多いようですが、それは適切だと思います。

そもそも、本気で医療行為をする気持ちがあるなら、髪の毛はまとめるか断髪するところでしょう。

会津戦争における新島八重の断髪は、歴史の名場面です。

2020年のコロナ禍においても、看護師が断髪する動画が話題になりました。あの不潔な髪型の時点で、恵は残念ではあるのです。

 

こうしたツッコミは野暮というもので、漫画はあくまで漫画として楽しめばよい。それはその通りです。

ただ、実写映画化、舞台化までされるとなると、ただの漫画では済まされないものがあります。

高荷恵を入り口として、幕末の会津藩、明治を生きた会津人にも興味を抱いていただければ幸いです。

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文:小檜山青

【参考】
コミック『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚―カラー版』(→amazon
コミック『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚・北海道編―』(→amazon
映画『るろうに剣心』(→amazonプライム
映画『るろうに剣心 京都大火編』(→amazonプライム

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