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【伊黒小芭内】
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生きること、愛すること、尽くすこと
炭治郎への態度もネチネチしていて厳しい。見た目もなんだか怖い。何を考えているのかわからない……。
曲者揃いの柱でも、好い印象を抱かれにくかった蛇柱。
そんな小芭内の印象が変わり、存在感が増すのは、その過去が明かされ、一途な愛があるとわかってからでしょう。
最終決戦の場で、彼の魅力と存在意義が炸裂します。
甘露寺蜜璃は、初対面で熱心に猫のことを語りかけてきた。純真で善良な彼女と結ばれたい。この汚い血が浄化されたら、鬼のいない平和な世界で必ず好きだと伝えよう――。
そう思う小芭内の純情に対して、あなたはどう思いましたか?
あなたには汚い血が流れているわけじゃない、そんなことない、そのまま立派に蜜璃に好きだと言えばいいじゃないか、どうしてそんな悲しいことを問いかけるの? いいに決まっているじゃないか!
そういう感情の動きがあっても不思議ではありません。
そんな感情によって、小芭内の、蛇の物語は完成します。
鬼滅ならでは新たな蛇の恋
蛇の恋は、かつて邪悪で淫らで、人にとっては忌むべきものでした。
それがいつしか、困難があっても思い続ける純愛となり、結ばれぬ結末を変えていくようになりました。
誰だって純粋に愛する心があれば、幸せになれるべきではないか?
そんな気持ちが物語を変えていった。
小芭内の物語とは、蛇が淫欲から純愛へと昇華されてゆく、そんな東洋の伝統がこめられたかのような奥深いものなのです。
小芭内の悲劇的な過去。
そしてそんな彼が見出す純愛。
その流れは、蛇伝説を早回しにしたような圧巻の展開があります。
蛇が純愛を捧げてはいけないのか?
そんな切ない問題提起を、小芭内はつきつけてくるのです。
ただ、言うまでもなく小芭内は男です。
女性と結び付けられてきた陰湿さ、淫らさ、しつこさといった蛇らしさを敢えて男と結びつけるあたりに、『鬼滅の刃』のひとひねりが見出せる。
蛇を巻いたビジュアルというのは、伝奇的な女性キャラクターと相性がよいものです。
例えば『バジリスク 甲賀忍法帖』の蛍火が有名です。絵が映えるためか、原作小説版の表紙も彼女が描かれたものが多い。
『鬼滅の刃』では、蛇の恋が女ではなく男であるところが新しい。
そして蛇が愛を捧げる相手も、これまた新たな像です。
小芭内と蜜璃という二人は、悲しいようで幸せで、古典的なようで斬新な二人です。
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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
【参考】
『鬼滅の刃』19巻(→amazon)
『鬼滅の刃』アニメ(→amazonプライム・ビデオ)