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【渋沢成一郎(喜作)】
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頭取の成一郎が彰義隊から追い出され
彰義隊の面々は江戸決戦に向けて着々とメンバーを増やしていきました。
ところが、です。
直前になって西郷隆盛と勝海舟(山岡鉄舟)の交渉が開かれ、江戸城の総攻撃は延期。
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新政府軍は「幕府方の完全武装解除」を求めますが、これがなかなか履行されず、予断を許さない状況へと陥ってしまいます。
その間にも彰義隊はどんどん規模を拡大。
気がつけば、上野・寛永寺を本拠地として、新政府軍の警戒対象となるまでに成長してしまうのでした。
新政府軍も焦りがあったのでしょう。
彰義隊のことはさておき、ともかく江戸城へ入城。
その後も新政府軍は江戸にいた彰義隊ら残存勢力たちの武装解除を求めますが、その途中、ついに戦闘が始まってしまいました。
新政府軍と幕府軍は江戸の北方で戦闘を本格化させ、彰義隊のところへも戦火は拡大しつつあるように見えました。
しかし、そこで思わぬ敵が現れます。
内紛です。
彰義隊は頭取の成一郎派と副頭取の天野派に分かれ、内部分裂を起こしかけていました。
そこで慶喜は、頭取の成一郎に対し、隊を統制するように指示。
成一郎もそれに応えようとしますが、すでに千人を超えるメンバーに膨れ上がっていた彰義隊は、もはや頭取の指示に従わないません。
結局、成一郎はドロ沼の権力争いに疲れ、隊からの離脱を決意せざるを得なくなります。
が、結果的にはそれが正解でした。間もなくして彰義隊が壊滅させられたのです。
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最後まで新政府軍と戦ったが完敗
離脱後の成一郎一派は「振武軍」を名乗り、独自の軍事行動を開始します。
ネットワークを通じて金策に励み、田無を中心に東京北部・埼玉南部から多額の資金を獲得。
彼らは江戸から離れた箱根ヶ崎村を本拠とし、彰義隊が立ち上がれば別動隊として戦に加わる方針でした。実際、開戦の一報が入ると速やかに出陣しています。
ところが不幸にも、彰義隊は一日足らずで潰滅。
振武軍を含め、行き場を失った旧幕臣も多かったといいます。
成一郎本人は
「残念だが、戦いが一日で終わったために江戸が火の海にならなかったのは結果的に幸運だったと思う」
と回想しています。
その後は彰義隊の敗残兵らと合流して飯能に向かいました。
が、情報をつかんでいた新政府軍との戦闘で敗北。さらに北へ逃走し、会津の地で振武軍と彰義隊の敗残兵を合わせ、ふたたび彰義隊を結成します。
それでも事態は好転しません。
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ところが、ところが、です。北海道の地で彰義隊は再び分裂してしまうのでした。
旧天野派の隊員たちが反発したとも、金銭問題とも言われますが、いずれにせよ成一郎は我慢のキャパオーバーです。
もはや、やってられん!
とばかりに一人で戦場を離脱すると、結局、捕らえられて東京へと送られるのでした。
赦免後は大蔵省に勤務 実業家へと転身
囚われの身となった成一郎は、やがて罪を許され、パリから帰国した栄一と再会します。
栄一としては「成一郎をどうしたものか……」と悩み、まずは自身の勤務先・大蔵省に紹介しました。
浪人から一転、大蔵省勧業課の職員となった成一郎。
かなり恵まれているようにも見えますが、万事丸く収まったとは言い難いものがあります。
なぜなら栄一が「すでに出世していた私の下で働くことは不快だったはず」と成一郎の心の内を分析しているのです。
長く行動を共にしてきた親戚だけに、直接の上下関係というのは確かに難しいシチュエーションだったことでしょう。
とはいえ、このままでは両者の差はますます広がるばかり。
成一郎にも出世をしてもらうべく、栄一は「蚕産業を調べるという名目でイタリアに留学してみるのはどうか」と勧めます。
養蚕業であれば成一郎も門外漢ではなく、十分に素養がありました。
そこで明治5年(1872年)、満を持して留学へと旅立つのですが……またしても成一郎の未来に暗雲が立ち込めます。
留学中に栄一が大蔵省を退職してしまったのです。
結局、イタリアから帰国した成一郎は「知り合いもいない官界では面白くない」として大蔵省を退職。
再び栄一の推薦で、実業家・古河市兵衛率いる「小野組」に勤めます。
が、なんとなんと、今度は明治7年(1874年)、金融政策の急変により、小野組は倒産に追い込まれてしまうのです。
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