べらぼう感想あらすじレビュー

背景は喜多川歌麿『ポッピンを吹く娘』/wikipediaより引用

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『べらぼう』感想あらすじレビュー第22回小生、酒上不埒にて「プ♪プ♪……」

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春町先生、吉原で新作執筆

かくして、春町の執筆開始となりました。

女+男=みたて。男が女を見立てる

女(反転)+男=振る。女が男に背を向ける

男+女=後朝(きぬぎぬ)。男と女が一晩過ごした朝のこと

吐+周囲を取り囲む漢字=大一座。盛り上がっている宴

客+男と女が取り囲む=大いざ。男と女を巡る喧嘩。イケメン陽キャの北尾政演が、女を巡って他の客と喧嘩になっておりやす。こいつの家はゆるい教育方針なんで、息子が吉原に入り浸ってもお咎めなしだったそうで

春町の足は、情念河岸の二文字屋へ向かいます。

朝顔が最期にいた店であり、女将のきくが切り回している最下層の店ですね。

ここで、きくや女郎のちどりたちに囲まれ構想を練る春町。

金+死=野暮。金のせいで死ぬということでなく、使い道が間違っていることか

金+生=通

金+無=金を無くすのは「息子」。北尾政演みてえなバカ息子だな

金+番=親父

かくして、なんともくだらねえアイデアが出てくる出てくる。

こうした作品は、時事ネタとあるあるネタだらけだから、後世となれば読まれにくいところもあるんでしょうね。

 


誰袖の手練手管に堕ちる意知

同時進行で誰袖の間者作戦も進行していて、田沼意知が琥珀の腕飾りを手にしています。

土山宗次郎が、誰袖が掴んだ抜荷の証拠として持ち込んだものです。

どうやら松前の弟君が身につけているオロシャ産の琥珀をうまくせしめたようですね。

しかし意知は誰袖に腕飾りを返し、「これでは証にならない」とにべもなく返答。

蝦夷と交易する商人を経由して受け取ったという言い訳が成立するとのことです。あるいは国内でも南部藩の久慈の名産品ですし、シラを切られる可能性はありますね。

江戸幕府初期の頃、徳川家康は、確かに松前藩と蝦夷(アイヌ)の交易を認めました。

この蝦夷を飛ばして直接オロシャと交易していなければ、セーフになるのです。

意知は誰袖のやる気がむしろ危ういと感じたのか、これ以上の間者ごっこはやめておけと釘を刺します。

しかし誰袖は止まるどころか、弟君をけしかけて抜荷をやらせてはどうかと言い出しました。

勝手に使える金がない、本当は吉原などでもっと遊びたいとこぼしていたことを伝えるのです。

そこで廣年に、儲かる抜荷扱いを提案し、話に乗せてしまえばよいのではないか?

確かに誰袖の手練手管で金を吐き出させるのはありかもしれませんが、長谷川平蔵とは話が違いますぜ。松前藩には、えなりかずきさん演じる松前道廣もおりますし……。

「身請けをしてくださるなら、この先を進めてもよろしうありんすが……」

そう覗き込んで迫る誰袖に、意知は困惑するばかり。

「何故、然様に私の身請けを望む? 吉原を出たいというなら、土山にねだった方がよほど早かろう」

「わっちは吉原一の二枚目好みにござんして」

そうしなだれかかり、意知の顔に愛おしそうに触れます。

「このお顔を、日がな一日眺めて過ごす身となりたいのでござりんす」

「花魁……これはそなたが思うよりずっと、きな臭い話で」

意知はそう返すしかない。

まるで巨大な白蛇に睨まれているようにも見えます。

「ここは日々が戦でござりんすよ? 騙し合い、駆け引き、修羅場。わっちの日々はきな臭いことだらけにござりんす」

蛇が相手を締め付けるように返す誰袖。

「それでもご案じなら、スサノヲがクシナダヒメを守るがごとく、主さんがわっちをお守りくださるというのは?」

「よし。田沼意知と申す。見事抜荷の証しを立てられた暁には、そなたを落籍いたそう」

この言葉を引き出し、誰袖はうっとりと嬉しそうな顔になりますが、どうにもおぞましい。恋が叶ったというよりも、蛇が相手の骨をへし折り、呑み込んでいくような……。

月岡芳年『新形三十六怪撰 二十四孝狐火之図』/wikipediaより引用

誰袖は美しい。それなのに、いつもどこかおぞましい。浮世絵の美女の姿をした妖怪画を連想させます。

意知はその美しい顔に、既に死の翳が落ち始めているようにも思えます。

 


江戸版「出版社の忘年会」

年の暮れ、クールポコ。が餅をつく人、こねる人として登場。

「なぁ~にぃ〜!」

おなじみのセリフを言うのは、横を通りかかり、差し出された餅を手に取る北尾政演でした。

「つったじゅうさ〜ん!」

小走りをする政演が、なんとも軽薄でアホみてえな動きなんすけど、これが完璧な所作ですぜ。

着流し和装に草履で、足をチョコチョコと裾がはだけないように動かしていて、実にお見事。

蔦重は裾が割とはだけておりやすが、政演はそうではないのですね。

さて、蔦重は世話になった戯作者や絵師、職人たちを集めて宴会を開いております。フグ汁まで出され、今で言うところの出版社の忘年会なんだそうで。

今、耕書堂で取り組んでいるのは、四方赤良の戯作ですが、

大田南畝(四方赤良)/国立国会図書館蔵

元木網の狂歌指南書『浜のきさご』も大好評なんだとか。

細見、往来物、富本本、全部好調だってよ!

しっかり仕事してるじゃねえか。

「屋台骨が揺らがず過ごせてるのは皆様のおかげ」と持ち上げる蔦重。

「富士より高き、ありがた山です♪」

ポーズ付きで言うところが愛嬌があると同時に、実に江戸っ子らしいんですぜ。江戸からも見える富士山は心の拠り所でえ。

葛飾北斎『富嶽三十六景 礫川雪ノ且』/wikipediaより引用

驚かされるのは、小泉忠五郎がしれっと参加しているところでしょうか。

西村屋の手先となって吉原細見を手掛けていたのに……蔦重の細見改(あらため)を引き受けるとは節操ないようにも見えますよね。

しかし二人とも笑顔ですし、「俺も助かったよ」と忠五郎も言っているってこたぁ、そういうことかねえ。

北尾一門では、おなじみの重政だけでなく、重美も仕事を割り当てたそうですぜ。政演の錦絵も感謝されています。

ただ、その政演は「こっちがよかった」と春町先生の青本『廓費字盡』(さとのばかむらむだじづくし)を見ています。絵より戯作がいいってことかね。

『廓費字盡』(東京都立中央図書館所蔵)出典:国書データベース(→link

蔦重はおもしろそうにこう言います。

「お前でもそういうこと言うんだな」

遊んでばっかりのパリピ扱いされてっけど、地味に働いているとウダウダ言い出しました。

まあ、隣にはず〜っと女がしなだれかかっているのだろうと突っ込まれておりやすが。政演はそのモテモテ自慢も続けてますね。

このリア充自慢に対しては、ドラマ終盤に登場する曲亭馬琴が「爆発しろ」攻撃をするでしょうから、それまで堪えて見守りましょう……。

春町は突如立ち上がり、政演に向き合います。

悔しそうに春町の作品を褒める政演に、春町はこう言います。

「ではいつか、それのおっかぶせでも作ってくれ! 俺の書いた『廓』はきっと吉原の浅いところしか見てない。もっと深く、もっと穿った目で見たそなたの『費字盡』が俺は読みたい!……盗人呼ばわり、すまなかった!」

そう頭を下げますが、政演は無反応。あのときのことは全く覚えていないようで……蔦重も「だから言ったじゃないですか、誰も気にしてねえって」と言います。

かくして、珍しく文も絵も手がける作家同士が和解したのでした。

蔦重は源内の言葉を思い出しています。

「おめえさんはさ、これから版元として、書をもって世を耕し、この日の本をもっともっと豊かな国にすんだよ」

三味線の音が鳴り響き、次郎兵衛が登場します。だいぶ演奏の腕をあげてきてんじゃねえか。

「さぁさ皆様ご注目!」

すると、なんと褌姿の春町が二階から降りてきます。

「これよりお目にかけますのは、一世を風靡しかの名高きへっぴり芸、花咲男! 皆様にはせめて、年のしまいにお笑いいただきたく! いよぉ〜!」

なんてこったい!

源内先生の『放屁論』オマージュかよ!

「ぷぅ〜」と屁の音が響きます。

「これはいけんじゃねえか!」

大田南畝も大喜びだ!

思えばこいつら、みんな源内と屁で繋がってんだよな。

屁をこきつつ、三味線に合わせ、踊る春町。屁が出なくなると「プ」と声に出してなんとかしてます。

すると春町先生を中心にして、屁の踊りの輪ができあがってゆく。

今回は「プ!」「プップ〜!」「プ!」が掛け声だってよ。

烏帽子着る 人真似猿の尻笑い

赤恥歌の 腰も折り助!

そう狂歌を詠むと、狂名は「酒上不埒(さけのうえのふらち/酔ったうえに悪いことをするという意味か)」と発表します。

いや、もう、アホすぎねえか……。二週連続屁でフィニッシュなのかい?

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