べらぼう感想あらすじレビュー

背景は喜多川歌麿『ポッピンを吹く娘』/wikipediaより引用

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『べらぼう』感想あらすじレビュー第22回小生、酒上不埒にて「プ♪プ♪……」

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『べらぼう』感想あらすじレビュー第22回小生、酒上不埒にて
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あの男は田沼意次の跡取りだった

盛り上がる宴会をよそに、蔦重が店の外へ。

外は雪が舞う冬の夜です。

「三年か……」

そう呟きながら歩いていくと、店から出てきた男、花雲助に目がゆきます。

瞬時に、蔦重の脳裏に、田沼意次の屋敷で源内の獄死を告げてきた者の顔が浮かんできました。

「あの……以前、田沼様のお屋敷で、お会いしませんでしたか?」

そう声をかけ、二人は九郎助稲荷のもとへ。田沼意知はいつか思い出すのではないかと思っていたのだとか。

蔦重は、野暮なことと前置きしつつ、敵娼(あいかた)は誰かと探りを入れます。

「誰袖花魁だ。どうも顔が気に入られたようでな。どこがよいのやら、まったくわからぬが」

何言ってんだおめえさんよぉ。何がすごいって、宮沢氷魚さんは顔がいいだけでなく、江戸前の分意義があるってことすな。そりゃ誰袖も目をつけるわ。

歌川国貞『河原崎権十郎』/wikipediaより引用

しかし蔦重は気にしています。

誰袖の敵娼は土山宗次郎なので、いわば重婚状態。

土山とも話はつけているそうですが、上司と重婚状態の土山はどんな気持ちなんですかね。それに耐える誰袖もとんでもねえ女なんだけどよ。

蔦重は納得いったような、いかないような返事をしつつ、田沼屋敷の家老か何かか?と確認します。

「いや、跡取り息子だ」

「さよ……えっ! 田沼様の、ご子息……」

驚く蔦重に意知は続けます。

「実は我らは今、蝦夷地を上知(じょうち、幕府天領にすること)しようとしておる。蝦夷地を上知し、国を開き、鉱山を開き、幕府の御金蔵を立て直す。幕府を今以上に揺るぎなき中央の府とし、物の流れもより整え、諸国ももっと豊かな地に育て上げる。最期に源内殿も口にしておった試みだ。どうだ、そなたもひとつ、仲間に加わらぬか? 蔦屋重三郎」

何とも恐るべき提案がなされました。さぁ、どうなる?

 


MVP:恋川春町

人間らしい春町先生でした。

落ち込み、反省していたのは、自分でも暴言がひどいと自覚ができていたからでしょう。

合わせる顔がないモンだから拗ねてしまう。

そんな臍を曲げた彼のために、皆が励ます様にはあたたかいものがありました。

『吾妻曲狂歌文庫』に描かれた恋川春町(狂名・酒上不埒で記されている)/wikipediaより引用

喜三二も歌麿も優しいですね。

毒舌を逆手にとり、皮肉屋として再出発させたのはお見事です。

そうしてスッキリ新境地に突入して吹っ切れたのか。あのお堅い春町先生が放屁芸をしちまうなんて、思いもよらねえことでした。

みなさん、エビス顔で微笑んでいるわけじゃねえですか。

でも、それはこの大河を甘く見ていやしねえですかね?

皮肉屋の恋川春町というのは、果たしてよいことなのかどうか?

その皮肉の向かう矛先が、まずい方向へ行かなきゃいいんですけど……もしも、そうなったとき蔦重はどうするのか。

もうひとつ、歌麿のことです。

蔦重よりも優しく、傷ついた心に寄り添える歌麿。

そんな人情の機微を読み解く歌麿が、蔦重の心に何かよろしくないものを読みとったら、どうなってしまうのか?

オープニングが禍々しくなったこのドラマは、ありとあらゆるところに不穏な何かが仕込まれているんですぜ。

罠っていうのはね、何も切った張っただけじゃねえ。

心情がズレただけで、この世は地獄になりやす。

心して見ていこうぜ。

 


総評

毎回毎回「この珍品大河がよぉ!」と頭を抱えておりやす。

ニュースでも「歴史のしがらみから自由になった」というものと「難解なのに好評」という趣旨のものがあり、珍品としか言いようがねえ!と思うのです。

今年の大河は「堅苦しくないし、歴史ものという感じがしない!」なんて感想もありますが、歴史も歴史、しかもニッチな分野ということですね。

たとえば徳川家康やら豊臣秀吉に関していえば、書店なり図書館なりで関連書籍はすんなり見つかると思います。

しかし、今年はどういう状況でしょう?

吉原をテーマとした本を見つけるのにせよ、そこまで難しくないかもしれません。しかし、ここにきて「江戸のインテリジェンスが大事だな!」という話となると、まず本を探すことからして難易度があがる。そこをどうやってカバーすればよいのか。

当たり前と言えばそうなんですが、諜報活動の記録がまるっと綺麗に出てくるとも限りません。

ましてや民間人まで用いているとなると、その傾向は強まります。

当時のそうした事情がありますので、蔦重周りを諜報戦の舞台にするのはありっちゃありですね。難易度がむちゃくちゃあがっけどな!

吉原は特殊でセキュリティ意識はそれなりは高いということになっているわけですし、そうはいっても誰袖も意知も脇が甘すぎて、この先悪い予感しかしません。

史実を見ても、江戸中期あたりからの出版業者と情報網はわけがわかりません。

幕府も放置せず規制をしているわけですが、潜り抜けるスキルがあがりすぎて「あいつら調子に乗りすぎているし、お上を恐れる気配すらねえ!」という嘆きすら残されているぐらいなのです。

なので、どこからどう情報が漏れて、どんな出版網に乗っかって出回るか。割と好きにできますわな。

こうした情報戦の傾向は、今後ますます強まってゆきます。

松平定信は猜疑心旺盛でして、間者や目付(監視役)を大量に用いた人物でした。

松平定信/wikipediaより引用

おまけに一橋治済が、島津重豪や松前道廣と親しくして何か怪しい動きをしておりますので、もう混沌の極みになってしまう。

それだけでなく、ロシア交易や蝦夷地も出てくるので、実は近年大河ドラマ随一の難易度と言われても腑に落ちます。関連番組も多いんですよ。

『浮世絵EDO-LIFE』(大河放映前から放映、現在はコラボ企画が多い)

『芋ヅル式に学ぼうNHKラーニング』(今年は昨年に続きコラボ企画が多い)

『3ヶ月でマスターする江戸時代』(放送終了、テキストあり)

つくづくしみじみと、実は江戸中期から後期に向かう時代って、重要だと感じてしまいます。

そりゃ「歴史総合」が導入されるのも腑に落ちます。

戦国時代と同じくらい、この時代に入れ込んで、それこそ隔年は無理でも10年に一度ぐらいの頻度で大河にしていれば、日本人の歴史認識ももっと違ったんじゃないかと思う次第。

2027年『逆賊の幕臣』は、幕末といえども幕臣目線なので、ある意味今年の続編になりそうではあります。

しかし民放時代劇がほぼ放映されなくなり、知識が尽きたことの弊害も感じる次第です。

今年の大河が背負っているモノはとてつもなく重く重要だ。

それなのに、屁だのなんだので軽やかに仕上げるところが、まさしく職人芸と言える。

今週も笑って楽しんで感動して、見終えたあと、ますます学ばないとならんと気を引き締めることになる。こんなことそうそうねえ体験っすよ。

大河ドラマはやっぱり唯一無二の魅力があるもんだな。


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文:武者震之助note

【参考】
べらぼう/公式サイト

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