こちらは2ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
【『光る君へ』感想あらすじレビュー第43回「輝きののちに」】
をクリックお願いします。
権力欲を隠せない道長
東宮である敦成親王が、皇太后の前でまひろたちと偏つぎ遊びをしています。
そこへ道長がやってきて、見守り始めました。
聡明な東宮は次々に正解を当ててゆく。「じじもご一緒したい」と言いながら、道長も遊びに参加してきます。
「偏と旁(つくり)が分かれておると分かりにくいのう……」
本気かわざとか、わからない調子で言う道長。どちらとも取れるのがなんともいえません。
「東宮様はご聡明であられますな。おいくつにおなりでございますか?」
「七つ!」
そう言われても、成長を喜ぶ祖父の顔にはなっていない道長。
権力者の目つきで、先帝が即位なさった年だと計算する顔になっています。それをまひろが察知したのか、冷たい目になっている。
「これも楽しゅうございますが、学問はよき博士につかれるのが何より。いずれ帝となられる東宮様にございますゆえ」
すると、それまで黙って聞いていた皇太后が反論します。
「左大臣。藤式部は博士に劣らぬ学識の持ち主であるぞ」
まひろは皇太后の言葉に謝意を示すためか、静かに頭を下げています。
「それはよく存じておりますが、帝たるべき道を学ばれるのは、全く別のことにございますれば」
道長の返答に対し、まひろも皇太后も白けた顔になるも、東宮が無邪気に遊びを促し、なんとなく流されてゆく。
彼女たちの顔に当惑が見られるのも当然でしょう。
為政者の学問とはいったい何なのか。道長に具体的な案があるなら、それこそまひろよりも優れていると思う博士を挙げればよい。
あるいは書物の名前でもよいではないですか。
それこそまひろが何度も暗誦していた『蒙求』でも、子ども向けに習わせるように言えるはず。
『吾妻鏡』には北条政子が我が子の頼家に『貞観政要』を勧めたことが美談として出てきます。
しかし、この道長にできるとは思えません。
なぜか。
彼はろくに学問と向き合ってこなかった。
三男坊だからと遊んでフラフラ、足で文字を書けるとはしゃいでいた姿から、お勉強ができるようには思えません。
まひろと恋文を交わすにせよ、相手が陶淵明を引いてくるのに対し道長は和歌だけ。まひろがどんな思いで「帰去来辞」を引いてきたのか、彼は考えたでしょうか。
何も考えていなかったのでしょう。
相手が大事だのなんだの潤んだ目で語りかけても、結局、彼が一番好きなのは己自身。
無教養という嫌な一面が出ている。そのくせ、権力掌握には執心している。
皇太后がまひろに、道長が帝に譲位を迫ったことを尋ねています。そのせいで帝の具合がさらに悪くなったことも把握している。
「政とはそれほど酷にならねばできぬものだろうか」
聞いているまひろの目がやや泳いでいます。
そこを深掘りしていくと、先帝を追い詰めた道長の不実ぶりも、皇太后の中で蒸し返されかねません。
まひろはここでしみじみと「男だったら政に携わりたいと思っていた」と始め、「しかし今はもうそうは思わない」と語りました。
「人の上に立つ者は、限りなくつらくさみしいと思います」
目を少し潤ませながら語るまひろ。道長の苦しみを思いやっているようです。
「東宮様が帝になれば、父上の思うままになってしまうのであろうか?」
皇太后はさらに懸念を語ります。
「たとえ左大臣様でも、皆をないがしろにして事を進めることはおできにならぬと存じます」
まひろは、自身の懸念を打ち消したくて、材料をかき集めているようにも思えます。
陣定に自ら参加し、長年関白を辞退してきた。たった一人で何もかも手に入れたいと考えているようには見えない。
そう語ると、皇太后はこう返します。
「藤式部は、父上びいきであるのう……」
ここもなかなか毒がありますね。まひろの意見が正しいとも、同意しているわけでもない。ただ相手が見びいきしているとだけ論評しています。
言外に、まひろにしては甘っちょろいことを言うものだ、という戸惑いも感じられます。
まひろは果たして覚えているでしょうか。
父の道長から押し除けられた皇太后が、涙ながらに「女はなぜ政に関われるのか」と嘆いていたことを。彼女はそれを忘れていないからこそ、まひろにも失望しかねないのでは。
実資は道長の器を測る
手を取られつつ、帝が実資の前まできます。
そして左大臣に脅されていると訴える。
目を病み、耳もよく聞こえなくなることがあるけれど、それでも正気でやれることがあると語るのです。
「実資、朕を守ってくれ。左大臣から朕を! 頼む」
目に光がありながら、焦点が合っていない。著しい視力の低下が見てとれます。
木村達成さんの渾身の演技ですね。彼は口髭がとても良く似合う顔立ちでもあります。
帝に懇願され、頭を下げる実資。さぁ、どうするのか。
と思ったら、実資は道長のもとへ向かい、人ばらいをして一対一で向き合います。
「帝に、御譲位を迫っておられるそうですな」
「ああ、そうだ」
あっさりと認める道長。目と耳が悪くてはまともな政ができるはずがなく、譲位こそ正しき道だと主張していますが……いったいどの口が「道」など語るのか。
実資はその考えに理解を示しながら、今はまだ帝の心が譲位に向かっておらず、責めたてたら心身ともに弱ってしまうと説明します。
というより、道長の真の狙いはそこにあるとも思えますね。一条帝もそうして追い詰めました。結果的に崩御してしまったものの、心身衰弱による譲位狙いでしたね。
この道長は一度の成功例を繰り返す傾向があります。
実資もそこは理解しているのか、弱らせることは正しき道ではない、左大臣が己を通せば皆の心は離れると反論します。
「フッ、離れるとは思わぬ。私は間違ってはおらぬゆえ」
悪役そのものの開き直りと鈍感さを発揮する道長。
皇太后ですら、道長の心に疑念を抱いていることすら理解していません。あの行成ですら距離を置いているのに……。
明子がこの場にいたらつかみかかっていたかもしれない。
心が離れるどころか、息子の顕信は実質的な死である出家を選びました。我が子をそこまで追い込んでおいて、この男は何を言っているのか。
「幼い東宮を即位させ、政を思うがままになされようとしておることは、誰の目にも明らか」
実資に図星を刺されたのがチクリときたのか、道長は手にした書状を叩きつけ、こう続けます。
「左大臣になってかれこれ二十年! 思いのままの政などしたことはない!」
言いましたね。言ってはいけないことを。父の兼家や兄の道隆ほどではないと言いたいのでしょうが、果たしてそうなのか。
「したくともできぬ。全くできぬ」
政権の頂点にいてそれができないのは、実力不足か、あるいは?
ここで実資が確信を抉りにきます。
「左大臣殿の思う政とは、何でありますか? 思うがままの政とは?」
迷いながら、こう返す道長。
「民が幸せに暮らせる世を作ることだ」
「民の幸せとは?」
黙り込み、目を瞬く道長でした。
※続きは【次のページへ】をclick!
