麒麟がくる感想あらすじ

麒麟がくる第42回 感想あらすじ視聴率「離れゆく心」

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嬉しかったと、二度も書いてあった

さて、そんな駒には重要な役目もあります。

彼女は光秀の額の傷に気づく。

光秀は大した傷ではない、放っておけば治るというものの、駒は念のため処置をすると言い、湯を持たせます。

「今日は変わったことでもありましたか?」

「何も」

そう返す光秀に対し、駒は備後の公方様から文が届いたと告げるのです。

二人で釣りをした。一日一匹しか釣れぬ鯛を、十兵衛が釣ってしまった。それがなぜか嬉しかった。嬉しかったと、二度も書いてあったのだそうです。

そして最後には、昔、話した誰も見たことのな生き物・麒麟――十兵衛ならそれを呼んで来られるやもしれぬ。そういう埒のないことを考えてしまう、海辺にいるとそういう夢ばかり見るのだと書いていたのだと。

「公方様が左様な文を……」

「よい文でした」

「公方様が……」

感極まったように語る光秀。その目には、麒麟の姿をした天命が映り込みつつあるようでもあるのです。

 

MVP:該当者なし

なぜか?

それはもう、人の運命を超越したから。ではどうなるのか?

 

総評

「『麒麟がくる』は難解ですね……」

「理由はわかりますとも……それは即ち!」

ある方と、そんな話をしてしまいました。

理由は何か? と考えると、池端俊策さんが漢籍を好きだということに集約できるのではないでしょうか。

本作は『麒麟がくる』というタイトルの時点で、儒教の理想を求める話だと思いました。

ドラマの明智光秀は甘いという感想を見かけますが、それが彼の持ち味です。

儒教の理想に近づけばそりゃ綺麗事になる。

それで失敗したとしても、理想を持っていただけでもよい。

人間は邪悪だからと理想を捨てることは、麒麟をめざす心がけとは反することです。

そんなタイトルなのに、主役の光秀が実益だけを求めるようになったら、メインテーマから外れることこの上ありません……と、いいたいところなのですが。

本作の分析を見ていくと、そもそも漢籍への理解がズレてきているかもしれないとも思うのです。

日本人の漢籍への理解度は、かつてないほど低下しているという指摘があります。

漢文不要論すら出てくる。

もしもそんなことをしてしまえば日本史の理解すら下がってしまうという懸念を、まさか大河を見ていて痛感するとは思いもよらぬことでした。

『麒麟がくる』で用いられる漢籍は、夏目漱石の作品で取り上げられたものも多い。夏目漱石をドラマで描いた池端さんが思い出すのはそれもある。

そんな考察も見かけましたが、作中で取り上げられる漢籍の範囲を見るに、それは池端さんに対しての過小評価でちょっと失礼な気がします。

漱石や池端さんが特殊ということでなく、本来、日本人の教養には漢籍知識があったのではなかったのか――そう戸惑ってしまいます。

本作の光秀には、儒家の理想が背景としてあります。

武士の誇りもあるけれど、それだけでは説明できない理想主義がある。

最終盤、その理想が集約しつつある。

もう、ハセヒロさんは顔が透き通っていて目が離せない境地に到達しました。

理想を見つめる眼差しに説得力があるからこそ、彼が主演に選ばれたのだと思えます。

 

仕掛け謎解きその1:殷周革命

今週は不自然なプロットでした。

鞆の浦でどうして義昭は釣りを楽しんでいて、光秀が鯛を釣り上げるのか?

家康の言動もおかしい。叛くのではなく己を貫くとは?

予告編で帰蝶が「毒を盛る。信長様に」と語る真意は?

黒幕は帝? 義昭? 家康? それとも帰蝶?

その答えはあります。

殷周革命への見立てです。

紂王=織田信長。紂王は愚かであるどころか、智勇兼備でした。それがいつしか驕り、暴君となってしまう。

妲己=帰蝶。ただし、彼女は悪女の代名詞となることを拒み、途中でその座を降りました。

呂尚=明智光秀

周文王=徳川家康

伯邑考=松平信康

周武王=徳川秀忠

麒麟が到来した世=江戸幕府

強引と言えばそうかもしれませんが、そうでないとわざわざ釣りをする理由が思いつかない。

前述の通り、麒麟とは周のような理想の世に現れる聖獣です。

わざわざタイトルに麒麟を入れる理由も、これで説明がつきます。

明智光秀は、ユダ、ブルータスと並ぶ「世界三大裏切り者」という評価もある……とのことですが、日本独自のランキングのような気がします。

それはさておき、なぜあえて光秀が主役なのかと言われてきましたが、太公望が主役とすれば、立派に成立するじゃないですか。

一冊の参考文献を挙げさせていただきますと……『周―理想化された古代王朝』はいかがでしょうか。

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仕掛け謎解きその2:天人合一

最終回間近になって黒幕説が増えちゃった! どうしよう、どうしよう!

そういう考察が止まらないかもしれません。

史実を探るにせよ、プロットを読解するにせよ。もう黒幕論争は終了でよいのではありませんか?

黒幕は人ではない。

ゆえに、論争する意味がない。

なぜなら【本能寺の変】の動機はこの言葉で説明ができるのです。

天人合一

天と人は同じ要素から成り立つ、不可分なものだ。

この思想を習う分野は、日本ですと東洋伝統医学が筆頭にあげられます。人間の肉体も宇宙と繋がっているからには、そのことを踏まえて治療をするというものです。

哲学的に言いますと、人と万物がつながるからには分け隔てなく考えると言うこと。西洋、特にキリスト教との対比に用いるとわかりやすいとされています。

なんでそんな東洋思想の話になってんだよ!

と思われるかもしれませんが……『麒麟がくる』を見ていると、いつの間にやら天人合一がインプットされてしまうのです。

駒や東庵の東洋伝統医術にある根本思想。

虫と己を対比させる秀吉。

百合と己を重ねる藤英。

鳥にたとえられる光秀。

人とそれ以外の動植物を重ね合わせる表現は、まさしく“天人合一”。キリスト教は“人は神が己に似せて作ったから特別”としています。

東洋伝統だけではなく、歴史を解釈する上でも重要です。

人が歴史を動かす――そういう英雄が歴史を作る理論は語られてくるものです。

例えばこんな話がされたりしますよね。

クレオパトラの鼻がもっと低かったら歴史は違っていただろう……」

「織田信長がいなかったら、日本は西洋の植民地にされていただろう……」

私が言うのもおこがましいですが、2020年代ともなると“オワコン”とみなされる話です。

そんな人間一人でそこまで世の中変わらないでしょ。

白人が優れている? 神の御加護? 何を言っているのやら。

そういう人種差別を補強するような歴史論は打ち止めにして、人間以外の要素、人間の集団が形成する価値観や理念を見てみるべし。

そうなりつつあるのです。

もはや定着した代表的な書物としてはジャレド・ダイヤモンド『銃・病原菌・鉄』(→amazon)があります。

白人がどうして世界で優位を保てたかって? 優れた人種だから? いやいや違うだろ。そういう論です。

ダイヤモンドの著作は多数邦訳があるのでおすすめできます。

人が歴史を作るのではなく、歴史が人を作る。

社会の倫理なり規範が変わり、そして歴史も変わってゆく。

本作の結末は、まさしくそこへ突っ込んできました。

どうして同時期に、複数名が、信長への不満を口にするのか?

それは信長への賞賛が反発へ変わっていった。

その社会を形成する空気が、光秀という感受性の人一倍強い器に流れ込み、世界を変えてしまう。

歴史を変えること。それは、天と人、合一してこそ成し遂げられる。そういう流れが見えてきたと思えるのです。

それに、天人合一は便利な概念です。

オリンピックを開催すべきか? あるは夫婦別姓論は?

以前はこんな意見だったけれども、今は違う……そう思うのだとすれば、それは悪いことではありません。

それはあなたが天の声=社会にある空気という天意に触れたということで、時代の流れ、歴史に応じて、自己を変えることは悪いことではありません。人間は誰しもそうしている。

怪しげな宗教や陰謀論に引っかからないために情報の精査は必要ですが、天意を意識すること自体は決して悪いことではありません。

 

追記:2023年『どうする家康』が発表されました

2023年大河ドラマ『どうする家康』(→link)については、現状では情報が少なすぎてどうなるか読めないところはあります。

ただ「もうありがちで意外性のない主人公だ」という否定論には反論したい。

逆に「意外性のある主人公が傑作となる」ならば、吉田松陰の妹、大手新聞記者などが主人公の作品なんて、その時点で社会現象にもなる傑作だったでしょう。

それと……おそらく『鎌倉殿の13人』でもそうなると思うのですが、合戦描写はいちいちそこまでやらないでしょう。

戦いに至るまでの過程や心理戦重視となる。

世界的に歴史劇がそうなっているからには、そんな2020年代のセオリーが通ることと思います。

井伊直政との男色を、『平清盛』の悪左府みたいにガッツリやりましょう!」、「焼き味噌不可避w」的なノリは『西郷どん』の再来になるから採用するとは思いません。

そういう一発芸やネタではなく、プロットとしての整合性を重視することを楽しみにしたいところです。

例えば院政期と戦国期の男色はかなり性質が異なります。

あれからおよそ10年も経過したのに『平清盛』を斬新だと言われても、私にはピンと来ません。

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10年前の大河はさておき、このさき2020年代のことを考えますと……『麒麟がくる』の時点で、徳川家康は評価が高い。

グローバルヒストリーを意識しての歴史観の取り込みを感じる。

むしろ徳川家康が世界で最も過小評価されているのが日本ではないか? と、私は以前から思っていました。

しかし今後は、世界で発信放送しても、それなりに高評価が取れるドラマにするのかもしれない。

私が注目しているキャストは、ウィリアム・アダムス

タレント枠ではなくちゃんとした方を引っ張ってくるのであれば、これはもう世界を見据えた傑作になると思えます。

とりあえず、アダムス待ちで。彼は文字通り、按針(=コンパス)になるのでしょう。

しかし、もしも私の願望ありきで語ってよいのであれば、この大河には大きな要素があります。

それはNHKが大河で酷い目にあわせてきた、最上義光をちゃんと出せるチャンスだということ。

家康と義光の交流は、家康の慈悲深さを示す上で重要です。

小田原参陣といえば、伊達政宗のパフォーマンスが目立ちますが、義光も興味深いものがある。

なんと家康は、わざわざ義光を途中で出迎えているのですね。

上杉が石田三成ルートを使っているから、それ以外を探った義光は、次善のルートとして家康を頼りにしていました。ここから先、秀次事件で愛娘・駒姫を失ったこともあり、義光は大名でも熱烈な家康ファンとなっていくのです。

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キャストは……眞島秀和さんを願いたい。

眞島さんは山形ゆかりの歴史にお詳しい。彼は置賜出身ですので、そこをふまえると上杉の方がよいのかもしれませんが、山形出身ならば最上義光もよいではないですか。

駒姫を失い、焦燥する眞島義光。

慶長大地震のあと、家康警護に駆けつける眞島義光。

直江兼続を熱心に追いかけるあまり、兜に被弾する眞島義光……最高です、何も言うことはありません。

個人的な願いと繰り返しますが、眞島秀和さんにはいつか最上義光を演じていただきたかった。

その好機がこんなにも早く巡ってきただけでも、私は大興奮ですよ。もしも実現したら、芋煮会で祝います!

本郷奏多さんの伊達政宗もいいですね。

小田原に遅れて焦る本郷政宗。二日酔いで政務をしないと言い張る本郷政宗。大坂の陣で味方を誤射して白い目で見られる本郷政宗。いいじゃないですか!

よきドラマとなることを祈念しております。

※著者の関連noteはこちらから!(→link

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文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
麒麟がくる/公式サイト

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