エドモンド・ハレー

学者・医師

「人類を滅亡させる凶兆の星」と恐れられたハレー彗星は紀元前から確認されていた

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ハレー彗星
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凶兆の前触れや失政に対する天の怒りと思われていた

彗星はどこの国でも凶兆の前触れ、もしくは失政に対する天の怒りと受け止められていました。

要するに、彗星が来て一番ビビっていたのは君主などの権力者たちだったわけです。

そのため、彗星が観測されると、天の怒りを鎮めるために大赦(罪人を刑期前に釈放すること)や免税などを実施。

普段から天に恥じない政治を行えばいいのに……まぁ、思い当たる節でもあったのでしょう。

なお、天変地異のたびに大赦をしていたせいで治安が悪化した、という例もあったようで、いったい善政とは何なのか、考えさせられる事案でもありますね。

また、キリスト教の「ベツレヘムの星」というエピソードの「星」がハレー彗星だったのでは? という説もありました。

この話は、”東方の国でそれまで見たことのない星が登るのを見た三人の博士が、星の動いていく方向へ旅をし、イエス・キリストのところにたどり着いた”というものです。

現在の研究では「ハレー彗星の周期とキリスト誕生のタイミングは合わないだろう」といわれているのですけども、ロマンということで。

まぁ、今ではキリストの生年も季節も、西暦1年でなければ12月でもなさそうだという方向になっていますしね。

 


「地球滅亡を信じて全財産を使い切った」って、えぇ……

ハレー彗星の「尾」と表現しているあの部分、昔は「髪」や「毛」と表現することが多々あったようです。

たなびく部分が髪の毛だとすれば、本体の部分は頭や顔ということになり、デカイ顔が空を横切って行くなんてホラーにも程がありますな。

だから皆、怖がったんですかね?

天体現象でそんな大げさな話になるのは、中世までの話だろ……と思いきや、20世紀に入ってからもハレー彗星が原因で世界が大騒ぎになったことがありました。

1910年の飛来のときのことです。

この頃になると科学もだいぶ進展していて、彗星の尾に含まれる成分なども研究されていました。

が、それが公表されたことにより、世界は大パニックに陥ります。

「彗星の尾には、シアン化合物という猛毒が入っている」

確かにそれは真実でしたが、実際にはごく薄いガスだったため、地表に届くことはありません。

しかし、「致死性の毒」というところからどんどん話がエスカレートしていき、ついには「次のハレー彗星が来たら、地球上の生物は全て死滅する」とまでいわれるようになってしまいます。

いつの時代も、強烈な話ほど光よりも早く伝わるものです。

「地球滅亡」のニュースはあっという間に広まり、酸素ボンベを買い求める者や地下室を作って逃げようとする者、「もうおしまいだー!」と絶望して全財産を使い果たす者も現れたというから罪深いものです。

挙句の果てには、教皇庁が免罪符を発行して荒稼ぎをするという、「オマエは中世か!」な一件まで起きたそうで。

 


次の飛来は2061年

1986年の飛来のときにはそもそも観測に向かない天候だったこと、さらに科学が発展していたことで、ここまでのパニックにはなりませんでした。

実際に猛毒で生物が絶滅するようなこともなかったですしね。全財産を使ってしまった人はどうなったのでしょうか。

まぁそれはさておき、ハレー彗星の次の飛来は、2061年だと予測されています。

36年後となりますので、平均年齢からすれば現在40歳ぐらいの方は見ることができるかもしれませんね。

それまでに医学が発展して、人類の生物的な限界である(と言われている)120歳まで生きられれば、もっと多くの方が見られるでしょう。

今は、そこにロマンを感じておきましょうか。


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長月 七紀・記

【参考】
ROYAL MUSEUMS GREENWICH(→link
天文学辞典(→link

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