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【モンテスパン侯爵】
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寝取られコメディを見て本人が大爆笑
1669年。
戦場で頑張るモンテスパン侯は、久々にパリへ戻りました。
モンテスパン侯は“寝取られ亭主”を描いたコメディ演劇を見て、観客席で大笑いしていました。
「おい、あの人って確か……」
「まさか、自分の状況を知らないとかって、マジか?」
周囲の観客は袖を引き合い、何も知らずに大口開けて笑っているモンテスパン侯の様子を見ていました。
見かねた彼の友人が、そっと彼に告げました。
「きみ、奥方の噂のことは何も知らないのか?」
「噂って何のことだい?」
ついに彼は知ってしまいました。愛する妻が、国王の愛人になっているということを。
「嘘だぁあああああああああッ!」
国家のために戦った、家臣の妻を寝取る国王の破廉恥!
愛する夫を裏切り、家に恥をかかせた妻の不貞!
モンテスパン侯爵の頭の中をぐるぐると妻の姿が回ります。
そういえば出かける前、なんか訴えてきたっけ。
「なんであのとき、気づかなかったんだ! 俺のバカ!」
モンテスパン侯は慌てて宮中にすっ飛んで行きました。
再会した妻のお腹がふっくら
宮廷では、廷臣たちがニヤニヤ笑い、目配せしながら彼を見てきます。
中には「いやあおめでたいことですなあ。これで出世間違いなしです」と言ってくる者まで。
彼らの態度から、自分が寝取られ男という噂が本当なのだと、モンテスパン侯は悟りました。
パリ郊外の家で妻と久々に再会したモンテスパン侯は、目玉が落ちそうになりました。
妻の腹がふっくらとしていたのです。自分以外の子を妊娠していたのでした。
「なんてことをするんだ!」
カッとなって思わず妻に手を上げてしまいます。夫の怒りに驚き、フランソワーズは急いで逃げ出しました。
寝取られ男になったモンテスパン侯は、パリ中の友人知人の家を歩いては愚痴りました。
しかし周囲の反応は冷たいものでした。
妻の父はじめ一族は「いやあ、これで運が向いてきたなあ」と喜ぶ始末です。
他にも……。
「国王陛下相手じゃ今さら無理だって」
「お前が留守にばっかりしているのも、よくなかっただろう」
「女なんて他にいくらでもいるさ。なんならいい子紹介しよっか?」
こんな調子で、誰もマトモに相手にしてくれません。
一体どうすればいいのだろう?
この時点では、王の公式寵姫はルイーズであり、まだ妻を取り戻せるチャンスはありました。
「どんな手を使ってでも、俺はフランソワーズを取り戻す!」
しかし彼は知らないのです。
フランソワーズの愛は醒め、彼女の狙いはもはや公式寵姫の座にあることを。
それを邪魔する夫に激怒していたことを。
全力で寝取られアピールする男
モンテスパン侯は考えました。
この状況で、どうやって愛妻を取り戻すか?
1. 教皇庁に妻と国王を訴える
2. 愛妻が心変わりして戻って来るのを祈る
3. 愛妻は戻らない……現実は非情である
考えに考えて、彼が出した結論は……
結論は「3」の「愛妻は戻らない……現実は非情である」でした。
もう何をしたって以前のように愛妻は戻らない。とにかく現実は非情だと悟ったのです。
ここらへん、意外と冷静なんですよね。
いったん離れた女性の心を取り戻すのは、そう簡単ではありません。
そこで次に彼が考えたのはこんな復讐作戦でした。
1. 娼婦を抱いて性病に感染する
2. その状態で妻を抱く
3. 妻も性病に感染する
4. 妻経由で憎たらしい国王も性病に感染する
なるほど、完璧な作戦っスねーっ!
不可能だという点に目をつぶればよぉおおおおお!
いや、もう、笑ってしまうほかないんですが、色恋沙汰でメガネの曇った人々は、得てしてこんなものかもしれません。
第一段階で性病に感染するという涙ぐましい自己犠牲までは、なんとかうまく行きました。
そしていよいよ第二段階。
フランスワーズと面会の約束を取り付けたモンテスパン侯は、周囲に人が居るにも関わらず、妻を抱こうとします。
「ギャーッ! 誰かーッ!」
たまらず隣室へ逃げ込むフランソワーズ。
騒ぎを聞きつけて召使いたちが押しかけ、作戦はあえなく失敗に終わりました。
詳細は不明ですが、状況からして下半身剥き出しで捕まったでしょう。
結局、彼に残ったのは凄まじい屈辱と、「あの人ちょっとどうなの?」という恥ずかしい噂、そして妻からの軽蔑だけでした。
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