牧谿作の国宝「煙寺晩鐘図」(畠山記念館蔵)/wikipediaより引用

信長公記 文化・芸術

信長の手に足利将軍も愛蔵した絵画が!超わかる信長公記66話

織田信長って、率直に言って、どんなイメージをお持ちですか?

現代の我々は、なんとなく
「乱暴な人で、戦や焼き討ちばかりしていた」
という印象を抱いてしまいがちではないでしょうか。

特に宗教に対しては、
・比叡山延暦寺の焼き討ち
・各地の一向一揆を殲滅
・本願寺との全面対決
と言ったように、仏教に敵対する「魔王」という表現が、フィクションでは度々用いられますね。

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しかし、彼は単に攻撃的な人間ではありません。

むしろ保護政策も積極的に行っており、神仏への信仰心や、文化財の価値を認識していたと思われる行動もたびたび見せています。

 


友閑と長秀を堺へ派遣して

元亀元年(1570年)の春頃、信長は再び名物狩りを行いました。

堺の茶人たちが所有している名物を召し上げるべく、松井友閑と丹羽長秀を使者として遣わしたのです。
こういうときに丹羽長秀が出てくるのは、もはやお約束ですね。

丹羽長秀
丹羽長秀は安土城も普請した織田家の重臣「米五郎左」と呼ばれた生涯51年

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松井友閑は元々、室町幕府の幕臣です。
十二代将軍・足利義晴と、その息子である十三代・足利義輝に仕えており、【永禄の変】で義輝が暗殺されてから下野していたと考えられています。

どのような経緯で織田家に仕えるようになったのか?
という点については信長公記にも書かれていません。

幕臣ですから、畿内や近郊の武家に対しては、何らかのツテがあったのでしょう。
いつしか信長の信頼を得て、京都近辺の政務に携わるようになっていました。

彼は信長の右筆(書類や手紙を作成する人)の一人としても知られている人物ですので、信長からの信頼度も割と高かったと思われます。

 


金は払っているぞ!(金額は不明)

まずは、このときの名物狩りの対象となったものをリスト化しておきましょう。

【名物狩りの対象1570年】

・天王寺屋宗久(津田宗及)→菓子の絵
・施薬院所蔵→茶壺「小松島」
・油屋常祐→花入「柑子口(こうじぐち)」
・松永久秀→絵画「煙寺晩鐘図」

信長公記では
「彼らは信長の力と威光を恐れ、逆らわずにこれらを献上した」
とあります。

それと同時に
「金銀を下げ渡した」
とも書かれていますので、以前と同様、召し上げというより買い上げといったほうが正確でしょうね。

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ただし、
【何をどれくらいの金額で買ったのか?】
ということについては前回同様に書かれておりませんので、対価としてふさわしい金額だったかどうかは不明です。

 


あの義満も愛蔵していたという

簡単に名物の説明をしておきますと……。

「柑子口」は作品名ではなく、花入(茶室に飾る花瓶のようなもの)の形式の一つです。

こちらは花入のイメージです

柑子とは、果物のみかんのこと。
花入の口の部分に、みかんの外側の皮を剥いたときのような装飾が施されているものをいいます。

「煙寺晩鐘図」は、南宋時代の画僧・牧谿もっけいが作者と伝えられていて、もともとは足利義満のものでした。

牧谿作の国宝「煙寺晩鐘図」(畠山記念館蔵)/wikipediaより引用

それが戦乱の中で巡り巡って松永久秀へと渡り、以降は、織田信長の次に徳川家康、そして紀州徳川家から加州前田家へと伝来したとのことです。

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現在でも所在がはっきりしており、東京都港区の畠山記念館に所蔵されています。

ただし、2019年6月現在は工事により長期休館中のため、しばらくは見学できなさそうです。
ご興味のある方は、工事の終了と展示をじっくり待つのが良さそうですね。

菓子の絵と小松島の茶壺については、詳細が伝わっていません。

長月 七紀・記

※信長の生涯を一気にお読みになりたい方は以下のリンク先をご覧ください。

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【参考】
国史大辞典
『現代語訳 信長公記 (新人物文庫)』(→amazon link
『信長研究の最前線 (歴史新書y 49)』(→amazon link
『織田信長合戦全録―桶狭間から本能寺まで (中公新書)』(→amazon link
『信長と消えた家臣たち』(→amazon link
『織田信長家臣人名辞典』(→amazon link
『戦国武将合戦事典』(→amazon link


 



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