鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第43回「資格と死角」

源頼家が遺した子・公暁(こうぎょう)が京都から戻って来ました。

鎌倉を案内するのは三浦義村

御所で鎌倉殿(源実朝)と尼御台(北条政子)に挨拶すると伝え、さらには公暁が鎌倉殿にとって子にも等しい唯一の男子であり、後を継ぐのは他にはいないとおだてています。

他ならぬ公暁もその気です。

必ず鎌倉殿になる。そのために戻ってきたのだと決意を新たにすると、義村も後に続きます。

「必ず、その願い叶えて御覧にいれます」

恭しく公暁に返事をする義村ですが、果たしてその胸中は?

ともかく公暁は絵に描いたような麗しき美僧に見える。父である頼家にも似ている。

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僧侶は頭の形の美しさが大事ですが、その点、演じられる寛一郎さんは理想的。

袈裟にもご注目ください。

ドラマに登場したばかりの文覚は言うに及ばず、阿野全成義円よりも美しく繊細なものとなっています。国家と仏教の興隆が明らかですね。

むろん地位の影響もあります。

二代目将軍・源頼家の息子である公暁ですから、彼は京都の寺院でもそれなりの好待遇を受けてきたのでしょう。

本人にもそんなエリート意識はあったはずですが、例によって長澤まさみさんの不穏なナレーションへ。

嫡男なき実朝。

後継者をめぐって思惑が入り乱れる。

もっとも鎌倉殿にふさわしいのは一体誰なのか――。

鎌倉殿の跡継ぎはほぼ決まっている。

すっかりその気になっている公暁や義村に対し、何一つ定まっていないことがナレーションで念押しされています。

 

公暁は源氏のいいとこ取りか

公暁が御所を訪れました。

出迎えた北条義時が、何年ぶりに戻ったのかと尋ねると、実に6年ぶりとのこと。立派な僧侶姿になっていて、鎌倉殿も喜ばれると如才なく言います。

すると、血筋も良く、智勇兼備だと義村も続く。

なんでも剣の腕前も確かなものだそうで、公暁本人は「悪僧だ」と笑い飛ばしています。

そして早く尼御台に会いたいと言い出すのですが……それにしても日本の仏僧は一体何なのか。

仏に仕える身で、なぜ武術を鍛えねばならんのか、と不思議に思いません?

他国の仏僧からしたら「違う違う」と突っ込まれることでしょう。

修行のため粗末であるはずの袈裟はキラキラだわ。妻帯もするわ。呪詛もやるわ。道教要素も混ざっているわ。

これではいかんと栄西たちが努力して、仏教も変わり始めるのが鎌倉時代です。

なんせ僧兵という強力な軍事力を有していて、武装解除が本格的に進められるのは戦国時代が終わった江戸時代以降となります。

そんな日本史の流れも彷彿とさせる秀逸な描写ですね。

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では実際、公暁のスペックはどうなのか?

品定めを始める義時が、まず初めに頼家の面影を見出すと、すかさず義村が「頼家より賢い」とフォロー。

鼻筋の通ったところは頼朝に似ている。

しかも出家しているので女子で問題も起こさない。

まるで源氏のよいところどりだと義時も返しますが、義村の狙い通りでしょう。

このまま実朝に子ができず、側室も持たれないのであれば、次の鎌倉殿は若君こと公暁で決まりだ。

と、義村が意気揚々としていると、義時が神妙な面持ちで「話がある」と誘うのでした。

 

後継のことを知り反発する義村

公暁が祖母である北条政子に挨拶。

息子と孫の成長を見守ることが生き甲斐だと、彼女が語ると、自身が跡継ぎだと疑わない公暁が満面の笑みで答える。

「尼御台のおかげで心身ともに鍛えられました。いずれは亡き父の思いを継ぎ立派な鎌倉殿になる所存です」

言葉に詰まる政子。

同じように、別室では義村が義時の言葉に衝撃を受けていました。

後継は京都から迎える――それが実朝の意向だと聞かされたのです。

若君はどうなるのか?

露骨に不満げな義村ですが、源頼家は鎌倉を乱した者であり、公暁はその子でるから跡を継がせるべきではないという、実朝の考えを伝えます。

義村は「おかしいだろ!」と反発し、義時も「それでいいとは思っていない」と続きます。

こんな調子では、いずれ鎌倉は西から来た連中に乗っ取られる。

義村は盛大に反発しますが、これは彼の終始一貫した姿勢でもありますね。かつて義時が源頼朝の取扱をどうするかと相談した際、義村は首を取って差し出せばいいと言い切っていました。

表面上、源氏に従うけれども、心酔する気配はないし、そもそも好きでない。

義時にも心服していません。

彼は、義時の亡き兄・北条宗時と同じく、坂東武者の自治を重視する人物です。

器用な性格ですので、それをうまく隠し通してきましたが、そんな本音をぶちまけた瞬間でした。

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二人が言い合っているところに政子も現れ、公暁に何も伝わっていないことを狼狽しています。

きちんと説明すべきだ。政子がそう訴えると、義時は「そもそも話す謂れはない」とふてぶてしく返しますが、政子も「公暁は還俗する気だ」としてことの重大さを懸念しています。

還俗まで覚悟を決めていると義村も同意。

それなのに実朝が京都から後継を呼ぶ気でいることが公暁の耳に入ったらどうなるか。

事は慎重に進めなければまずそうですが、すでに公暁は実朝と対面しているとのこと。

「実朝から聞かされることだけは避けたい」と政子が不安がっています。

鎌倉殿は賢いから軽々しく話すまいと義時はフォローするのですが……。

 

公暁「話が違う!」

義時の希望的観測は大外れ。

実朝は公暁に後継ぎのことを話していました。

京都から迎えた者を鎌倉殿にする。

実朝は大御所になる。

そして公暁は鶴岡八幡宮別当になる。

決まってもいないのにペラペラ話すべきではないと実衣が釘を刺す一方、話しておくことで周りに示しているのだと北条泰時が理解を示します。

心中穏やかではないでしょう。公暁は、動揺を抑えつつも、理解したとしか言えない。

「話が違う!」

実朝との面会を終えた公暁が、義村に憤っています。そして京都へ戻ると言い出す。

しかし、そうなっては三浦の権力を向上させる野望が叶わない義村は、公暁に予定通り千日参籠をさせ、その間に自分が説き伏せると強引に留めさせます。

むろん公暁は半信半疑ですが、「お任せください」と請け負うしかない義村。

そのころ実朝は後鳥羽院の返信を受け取っていました。

次の鎌倉殿が決まりそうだと無邪気に喜んでいる。

源仲章も、これほど素晴らしい知らせはないとホクホク顔。

さっそく皆を集めて実朝の口から伝えると言い出す。

こうした状況を受けて、義時、義村、実衣の三人が話し合い。

実衣は苛立ちながら、どこの馬の骨かわからない奴が来たらどうするのか!と不満をぶちまけています。

貧乏貴族の倅なら目も当てられないと嘆けば、義村も「帝の御子ならわかる」と憮然としている。

同じ懸念を抱く義時も、この話は困るから止める協力をして欲しいと実衣に伝えると、義村は、あらためて「公暁がその気になっている」と主張します。

実衣が阿野全成との間にできた息子の阿野時元を鎌倉殿に据えようとしている野心を見抜き、牽制しているのですね。

二人は競争心をみせ、互いに袖を叩き合っています。性格的に似た者同士なのでしょう。

そしてこの二人のやりとりから、日本ではまだ儒教思想が根付いていないとわかります。

叔父よりも子が上になる――そんな常識があれば、実朝だって公暁に譲っていたでしょうし、義村が実衣を黙らせることもできたはず。

2020年大河ドラマ『麒麟がくる』では、叔父と甥の継承がありました。

明智光安は兄の子である光秀が若いため、一時的に家を継ぐも、自分は中継ぎと理解していて自らを犠牲にしてでも光秀を生かした。

あれは明智一族が儒教由来の道徳心を身につけているという描き方にも思えます。

そういう教養と道徳心が当時の鎌倉にはまだまだ足りない。ゆえに罪悪感が生じようもない。

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困ったことだ。

で、それをどうにかしようと努力を重ねるのが北条泰時という人物です。

 

大江広元の心酔が重い

政子が大江広元に尋ねています。実朝の後継に京都の者を据える。本当にこれでよかったのか。

視力を失い目を閉じたままの広元は、答えます。

「これからも尼御台は思った通りの道を突き進むべきだ」

頼りにしていると言われ、広元はあの酔いしれた口調で告白します。

頼朝様に呼ばれて鎌倉にきた。その後、頼家様、実朝様に仕えたけれど、私が仕えた人はただ一人――尼御台だと。

政子が驚いていると、広元はもう目が見えないけれども、心の目ではあのお姿を見ていると陶酔しきって言います。

「重すぎます……」

「失礼しました」

突然の告白は政子の困惑で終わり、本題に入ります。広元としても、京都から鎌倉殿を迎えれば諍いはなくなり、よいと思うとのこと。

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それにしても大江広元が、ちょっと気持ち悪いくらい酔っ払っていますね。

この冷酷な文士は、その狡猾さゆえの救いを見出そうとしていると思えました。

頼朝にせよ、頼家にせよ。広元はこの主君たちに忠誠を尽くしているとは言えません。

彼らの血を引く者を殺すことに賛同してしまっています。

となると自身をどう正統化するか?

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鎌倉の社稷(しゃしょく)、要するに人間でなく国家基盤に仕えたという誤魔化し方はできます。

それが表向きだとすれば、政子だけに伝えたのが本音ですね。

彼女という存在こそ主人だから、裏切ってはいませんよ。私は忠臣ですよ。そういう自己正統化と愛を絡めてうっとりしているわけですね。

まあ、本人が幸せそうだからよいと思えますが、凄いことになってますね。

忠臣でありながら、親鳥に抱かれる雛鳥になっているような。しかもその親鳥は鳳凰であるかのような。

そんな政子に甘えたい気持ちもあるようで、すごい場面。

栗原英雄さんの極致をみた気がします。

血の中にある熱さを、全部政子に注いでいるよう。そりゃ重いわ。困るわ。

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