本郷和人先生と超やばい日本史表紙

豊臣家

本郷和人先生が語る豊臣秀吉の「すごさ」と「やばさ」最新刊『超!やばい日本史』を見よ!

2026/06/01

2026年大河ドラマ『豊臣兄弟』で注目が高まっている豊臣秀吉。

足軽から天下人へ駆け上がった秀吉は、なぜこれほど人を惹きつけるのか。

一方で、文禄・慶長の役や苛烈な処断を強行するなど、危うさを抱えていたのはなぜなのか。

本郷和人先生と超やばい日本史表紙

ダイヤモンド社にて新刊を持つ本郷和人先生

今回は、シリーズ累計97万部というベストセラー『東大教授がおしえる やばい日本史』の監修である本郷和人先生に、秀吉の魅力と、秀吉ネタも掲載された新刊『東大教授がおしえる 超! やばい日本史』について話を聞いてきました!

 


秀吉のすごさは「流れに乗る力」

――まずは新刊『東大教授がおしえる 超! やばい日本史』にも掲載されていました豊臣秀吉の「すごさ」と「やばさ」を一言で表すなら、どこにあると思われますか?

秀吉は、信長のような教養人ではなかったのが大きいでしょう。

信長は相当な知識人であり、茶の湯を政治に組み込むような独創性があった。

一方の秀吉はオリジナリティがない代わりに、色々なことを自分の中に取り込むのが上手い。

地頭が抜群に良いんだよね。

よく知られる“黄金趣味”についても、金箔の美しさそのものは確かにある。黒漆の上に金箔を貼ると、見ていて惚れ惚れしてしまう。

復元された豊臣秀吉の「黄金の茶室」

復元された豊臣秀吉の「黄金の茶室」

ただ、そこには同時に“成り上がり”的な感覚も見えますよね。

それを平気で出来てしまうのが秀吉だった。

ゼロから何かを生み出すのではなく、時代の流れをつかみ、それに乗る力というのかな。

その結果、茶の湯や桃山文化、金をふんだんに使った趣味なども、秀吉らしさとして残ったと思うんだ。

 


平然と「羽柴」を名乗れるすごさとやばさ

――秀吉といえば「人たらし」という言葉で語られる一方、残虐な一面も指摘されます。その人間性をどう見ればよいでしょうか?

大河ドラマで言うと、僕は『黄金の日日』の緒形拳さんが、最も秀吉をよく表しているんじゃないかなぁと感じるんだ。

若いころの秀吉には、商人とも気さくに付き合えるような一面があった。

しかし、権力者になると非常に怖い人でもある。

実例だと石川数正かな。

引き抜くまでは非常に熱心に動く。しかし、いったん自分のものになると、そこまで厚遇しているようには見えない冷淡さがある。

人を惹きつける力はあるけれど、それは出世のために作られた人格でもあり、平然とできるのが「すごさ」でもあり「やばさ」なんじゃないかな。

例えば「羽柴」という名字からしてそうです。

柴田勝家の『柴』、丹羽長秀の『羽』を取って羽柴とする。先輩たちの名前を取り込んで自分の名字にする感覚って、かなり独特じゃない。

名前って自分のアイデンティティに関わるものだから、普通はなかなかできないでしょ?

秀吉は、自分が何者かに固執するよりも、出世のために必要なものをどんどん取り込んでいった。

その柔軟さこそが、すごさでもあり、やばさでもあったんですね。

シリーズ第一弾『東大教授がおしえる やばい日本史』

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慶長の役では目的すら変わっていた

――秀吉は晩年になるほど判断を誤っていく印象があります。特に秀長の死後、政権運営が難しくなったようにも見えます。

うん、それは秀吉というより日本人の特性なのかもしれない。

まず信長には『天下布武』という大きな目的があった。秀吉はそれを受け継ぎ、わずか数年で天下統一を成し遂げた。その点では本当にすごい人物でしょう。

しかし、天正18年(1590年)に天下統一を果たした後、秀吉は次の大きな目的を見失ってしまった。

僕は、目標が設定されていると日本人は非常に力を発揮する反面、そもそもの目標設定が苦手だと思うんだ。

戦後の日本が『アメリカに追いつけ追い越せ』で成長しながら、目標を達成した後、方向性を見失ってしまったのもそう。

秀吉の場合は、次の目的を大陸進出にしてしまった。

最初は明への進出を考え、その通路として朝鮮半島を見た。

しかし当然うまくいかない。ノウハウがないんだから。

結果、文禄の役が失敗し、講和も失敗し、慶長の役になると目的すら変わってしまうんだ。明の征服ではなく、朝鮮半島南部に領地を得るという、当初とはかなり違う目標になってしまう。

負け戦の終わらせ方は難しいよね。

秀吉もまた、始めてしまった戦争をやめることができなくなったんじゃないかな。

――最新刊の『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』でも秀吉が取り上げられ、最近は“秀吉と秀長の関係”に注目が集まっています。秀長についてはどう見ればよいでしょうか?

秀長が名補佐役だというのは、古くからあったものじゃないんだよね。

かつては「豊臣一族には役に立つ人物が少ない」という見方すらあって、その流れが変わったのが司馬遼太郎さんの『豊臣家の人々』や、堺屋太一さんの『豊臣秀長 ある補佐役の生涯』だった。

僕は、そうしたフィクションから名補佐役としてのイメージが固まっていったのではないかと思います。

なんせ史料上で秀長の行動がはっきりするのは、秀吉がかなり出世してからだからさ。

ドラマとして秀長を主人公にするのは面白い。しかし史実だけで見ると、若いころから兄弟で活躍していたように描くのは、かなりフィクションの部分が大きいでしょう。

第二弾『東大教授がおしえる さらに!やばい日本史』

第二弾『東大教授がおしえる さらに!やばい日本史』(→amazon

 


近現代の『やばい日本史』がやばい!

――シリーズ最新刊の『超!やばい日本史』では織田信長や豊臣秀吉だけじゃなく推古天皇や北条政子も取り上げられ、まだまだラインナップは拡大しそうですよね。今後もっと掘り下げてみたい人物はいますか?

近現代の人物がいいよね。

情報量が桁違いに多い。人間にはいろいろな側面がありますから、偉人として語られてきた人物の別の顔が見えてくる。

たとえば森鴎外なんか凄いじゃない。今、教科書から消えそうなんでしょ。

確かに言われてみると、あんなゲスな話ないもんね。自分の出世のために女の人を犠牲にするわけだから。

与謝野鉄幹もだいぶやばい。晶子はどんだけ鉄幹のこと好きなの?って思うけど、明治の「産めよ増やせよ」の流れで、結果として彼女は11人も子どもを産んじゃう。負担かけすぎだろ、って。

しかも鉄幹なんて意図的に女子校の先生になってるでしょ?

なのに晶子はずっと大好き。僕なんて反対の意味で自信あるよ。うちの母ちゃんは僕のこと全然好きじゃないって。

偉人ばかりじゃなくて、庶民の「すごさ」と「やばさ」も面白そうではあるけど、実際は難しいよね。

文字史料を残していないから、歴史学ではなく民俗学や考古学の力も必要になっちゃう。

どうしても本に出てくるのは史料が残っている人物、つまりセレブリティになっちゃうなぁ。

 

歴史が苦手な子どもの入口に

――『やばい日本史』のような本は、歴史の入り口として読みやすいと思います。子どもが日本史を好きになるきっかけとして、どう読めばよいでしょうか?

本はまず「楽しく読むこと」が一番大事だよね。

ちゃんとした知識を身につけたいなら、中央公論『日本の歴史』シリーズのような通史を読むのはよいと思います。各先生たちが本気になって書いてるわけだから名著揃いです。

ただ、子どもたちには難しいよね。

その点『やばい日本史』シリーズは“歴史の入口”には最適かもしれない。

隅々まで読んでピンとくる人物や出来事があったら、そこから自分で調べたり他の本を読むのが最も自然な勉強だよね。歴史に入るキッカケとしては、とてもよいと思います。

今までは言えなかったんだけど、僕は「受験科目から日本史を外して欲しい」と思っているんだ。

そうすれば「嫌々ながら目を通す」なんてことも「暗記しなくちゃいけない」なんて苦しいこともなくなって、日本史が楽しくなるでしょ。

「この人物、なんだか面白い!」

「この話、もっと知りたい!」

そんな入口があれば、自然と深く入っていけるじゃない。

超やばい日本史表紙

最新刊『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』(→amazon

ということで絶賛発売中のシリーズ最新刊『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』のコンテンツ(の一部)は以下の通り。

いきなり雄略天皇から飛ばしてくれます。

◆雄略天皇

すごい:自分のすごさをアピールしたナンパ歌が万葉集にのる

やばい:ナンパした女性がおばあちゃんになるまで存在を忘れる

大河ドラマ『光る君へ』ファンの方はご存知ですか?というのが次のネタ。

◆藤原道綱母

すごい:『蜻蛉日記』で紫式部や清少納言に影響を与える

やばい:息子のラブレターを勝手に暴露する

そういえば劇中では藤原伊周のラブレターもさらされていましたよね。

戦国武将からは3名がラインナップです!

細川藤孝

すごい:スーパー文化人すぎて命が助かる

やばい:教養が高すぎて人を見下す

◆織田信長

すごい:西洋文化を受け入れ利用したファッションリーダー

やばい:お城の見物料をとって石を神としておがませる

豊臣秀吉

すごい:お金配りやコスプレ大会が大好きな元祖パリピ

やばい:愛する妻に「うんこ」連発の手紙を送る

なんだよ織田信長、意外とチャッカリしてんな、さすが名古屋人……と言ったところでしょうか。

大河ドラマ『べらぼう』からは2名の選出となりました。

◆蔦屋重三郎

すごい:江戸の出版文化をプロデュースしたカリスマ編集者

やばい:「おもしれえ」を追求しすぎて作家に迷惑をかける

◆曲亭馬琴

すごい:長編小説でヒットを連発したベストセラー作家

やばい:賢い女性にイライラし、絶縁状をたたきつける

ご覧のようにタイトルだけでもニヤニヤできてしまう。

『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』は電子書籍でもご覧になれまっせ~(→amazon)。


参考文献

『東大教授がおしえる やばい日本史』(→amazon
『東大教授がおしえる さらに!やばい日本史』(→amazon
『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』(→amazon

※本記事は、武将ジャパン編集部が本郷和人先生に取材し、『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』の内容も踏まえて構成しました。

【取材協力】ダイヤモンド社

※弊サイトの関連記事は以下からご覧ください

豊臣秀吉の生涯
豊臣秀長の生涯
本郷和人先生の記事一覧
出版・メディア掲載・記事協力の実績
戦国時代|武将・合戦・FAQをまとめた総合ガイド
『豊臣兄弟』総合ガイド|登場人物・史実・出来事を網羅

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五十嵐利休

武将ジャパン編集管理人。 1998年に早稲田大学を卒業後、都内出版社に入社し、書籍・雑誌編集者として20年以上活動。歴史関連書籍からビジネス書まで幅広いジャンルの編集経験を持つ。 2013年、新聞記者の友人とともに歴史系ウェブメディア「武将ジャパン」を立ち上げ、以来、編集責任者として累計4,000本以上の記事の編集・監修を担当。 月間最高960万PVを記録するなど、日本史メディアとして長期的な実績を築いてきた。 戦国・古代・幕末・世界史の広範な執筆とSEO設計に精通。 ◆2019年10月15日放送のTBS『クイズ!オンリー1 戦国武将』に出演(※優勝はれきしクン) ◆武将ジャパン(団体)国立国会図書館典拠データ https://id.ndl.go.jp/auth/ndlna/001159873

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