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軍師連盟/amazonより引用

歴史ドラマ映画レビュー

三国志長編ドラマの傑作『三国志〜司馬懿 軍師連盟〜』は鎌倉殿ファンにもオススメ

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三国志〜司馬懿 軍師連盟〜
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失敗を繰り返し、人は進歩する

鎌倉時代と同時代の宋は、忠義心の美しさが称揚されてきました。

南宋に殉じた文天祥『正気歌』は日本でも敬愛されています。

なぜ、宋の人々はこれほどまでに高潔であったか?

様々な理由が考えられますが、その一つ挙げるとすれば、魏から晋への不快極まりない歴史を経て、それを阻止する仕組みを考え抜いた結果であるとも言えるでしょう。

トライアンドエラーを重ねて、人は進化します。

特定の国や民族だから高潔というものではありません。

別に鎌倉幕府がことさら邪悪ということもなく、坂東武者の経験値が不足していただけでしょう。時代がくだると、関東の水戸藩は、宋の忠臣が抱いていた忠義心に深い敬愛を寄せています。

文天祥の『正気歌』のような忠義心は、我が国にもあるはずだ――そう藤田東湖は日本版の『正気歌』を作詩したのです。

この詩は維新を担う志士たちに愛されました。

忠義の心は、さまざまな悲劇と失敗を経由し、どちらの国にも根付いたのです。

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人々は歴史を学び、痛感してきました。

司馬懿の政権簒奪過程は本当にどうしようもない。忠義も何もないではないか!」

「それを言うなら北条義時もけしからん!」

そう怒り、眉をしかめ、批判してきた。

しかし、それだけでは足りないとも思えます。

彼らには、彼らなりに悪を為す理由があったのではないか?

悪に突き進み、止まれない理由もあったのではないか?

周りに問題はなかったのか?

彼らだって純度100の悪ではなく、美点もあったのではないか?

そうしたことも踏まえて初めて歴史は教訓となりましょう。

それが日本と中国の歴史作品で、しかも最近はVODですぐに視聴できるのですから、我々は幸せかもしれません。

ただし、鑑賞後の後味の悪さに疲れ果てること、人間不信が生じかねないことは、注意点としてあげておきます。

他ならぬ『軍師連盟』の製作者も疲弊したのでしょうか。

司馬懿を主役としながらどこか救いのある『三国志 Secret of Three Kingdoms』(→amazon)が、共通するキャストとスタッフで作られています。

疲弊しきったら、こちらを見ることもオススメです。

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相州簒奪つながりの両雄

最後に、ドラマだけではない歴史的な司馬懿と北条義時のつながりをみてゆきましょう。それは……

「相州の簒奪つながり」です。

どういうことか?

◆魏の首都圏が「相州」と呼ばれるようになった

洛陽や鄴(ぎょう)があった魏の本拠地は、南北朝時代から金代にかけて「相州」と称されました。現在の河南省安陽市近辺です。

◆相模国は「相州」と略される

そんなダジャレめいたつながりなんて話を作っていない?

そう疑念に思うとすればもっともなことです。

しかし、鎌倉を鄴と結びつける発想は実際にあったのです。

鎌倉公方である足利基氏が、天下の名宝「銅雀硯」を愛用していたとか。

この銅雀とは、曹操が鄴に築いた「銅雀台」を示します。

「鎌倉公方には、相州の英雄・曹操ゆかりの銅雀硯がふさわしい」

そういう発想があってもおかしくはありません。

戦乱で崩壊したものの、廃墟にはこの高層建築に用いられた瓦が残っていました。

これを「銅雀瓦」と呼び、実に硯に向いている。材質もよいうえに、歴史的な意義もある。

厳密に銅雀瓦は少なく、近い時代の瓦を代用した贋作も横行したとされますが、ともあれ「銅雀硯」は英雄ゆかりの名宝として垂涎の的となったのです。

それがめぐりめぐって鎌倉へ渡った。

なんでも徳川家康も愛用したとかで、ロマン溢れる伝説ですね。

※原題『銅雀台』

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このことを踏まえますと、ダジャレとはいえ、司馬懿と義時をこう呼んでもよいのです。

相州にて、主家簒奪を成し遂げた梟雄――。

まぁ、それで二人の名声があがるかどうかの判断はみなさまにお任せします。


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文:武者震之助
※著者の関連noteはこちらから!(→link

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【参考文献】
杉原たく哉『中国図像遊覧』(→amazon

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