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【映画『鬼滅の刃 無限列車編』レビュー】
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厳しい現実よりも、甘い夢と嘘を
魘夢は、夢という嘘を見させて人を操る。
夢なんて現実ではないのに、どうしてそんなものにひっかかるのだろう……ご都合主義のようで、実はとても社会風刺として鋭いと思えます。
インターネットが発達し、真偽のほどがわからない情報が拡散する。
シェアされていいねの数が稼いであると、これはきっと役立つことだと、拡散してしまいませんか？
真偽を確認する前に、気持ちがよくなるからと事実として扱ってしまってはいませんか？
本誌連載当時ではなく、公開時のコロナの時代に、本作は不気味なまでに噛み合ってしまっています。
コロナはただの風邪？ たいしたことはない？ ワクチンは効くの？ 特効薬は？ オリンピックは開催できるの？
そう不安でストレスがかかった心に、情報がぬるりとはまりこんでゆきます。
お湯。お茶。うがい薬……そんなものが効くと信じて、それが幸せだと言い張る心理。
そんな心理と、無限列車で幸せな夢を見たがる人々の距離は、実はそんなに隔たっていないのかもしれません。
列車という乗客を多数乗せた舞台装置も秀逸です。
この列車と乗客は、まるでインターネットとその情報に踊らされている人々のようにも思えなくもありません。
『鬼滅の刃』は、戦闘に一般人を巻き込まないように気を配り、犠牲を軽んじないところに特徴があると思えます（味方側でも、清々しいほどに無視する奴もいるけど）。
炭治郎たちが乗客を守ろうと刃を振るうように、私たちもデマ拡散や誹謗中傷には敏感になるべきかもしれません。
そういう意義を考えてみても、教育的に優れたアニメだと思えます。
現実社会の電脳空間にも、既に魘夢は暗躍しているようでして。
◆東京五輪の妨害狙い、ロシアがサイバー攻撃 英政府が発表（→link）
◆SNSにコロナ感染のデマ 中傷被害で一時休職のコンビニ店長の苦悩（→link）
◆善意のつもりがデマ拡散!? フェイクニュースを見抜く方法とは（→link）
『鬼滅の刃』は、昔ながらの典型的な少年漫画だとは言われる。確かにそう思える要素は多い。
ただし、人間の意識についての知識は、過去の作品より深まっています。
インターネットがこれだけ普及し、人間の心の動きが究明されているからには、それは必然といえます。
ありえない空想、それこそ夢の話のようで、現実とつながっている。だからこそ生々しくおもしろいと思える。
そんな時代を代表する作品なのです。
煉獄杏寿郎の物語
今回、柱として炭治郎たちを導く、それが杏寿郎です。
性格もよく、曲者揃いの柱の中でも良心的。それがあんなに早い退場であることは惜しまれるのです。
とはいえ、最初から家庭環境が明かされるあたりには、その予兆はありました。
彼は当時らしいともいえる、悲しい家庭環境ではありました。
母の死後、酒浸りになった元柱の父から認められない。それでも長男として、幼い弟の面倒を見て、生きていこうとします。
片親を早くに失い、長男として家庭を支えようと奮闘する。これも当時らしい家庭像です。
当時は現代以上に家長制度が強固です。
炭治郎のように男親を失った場合、長男が家長となります。
杏寿郎は女親を失ったために父が大黒柱として守るようで、そうはなりませんでした。子どもだから可哀想だと思うよりも、そういうものだと受け流すのが当時の社会です。
それでも杏寿郎は、強く生きていこうと努力しているのです。
本作には、当時の厳しい時代環境がしっかりと反映されています。
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彼のように、幼いながらも家庭を支えようとしてきた人たちがいたのです。
そんな重圧を感じつつも、後進の隊士に伝えるべきことを言い残す。
「弱き人を助けることは 強く生まれた者の責務です」
そんな母の思いとともに去る――それが杏寿郎の最期なのでした。
彼を葬った上弦の参・猗窩座は、これからも重要な敵として登場します。
今後のアニメ登場を待ちましょう（もちろん漫画では完結していますが）。
アニメ遊郭編は12月5日の放送決定！
待望のアニメ『鬼滅の刃 遊郭編』の放送が12月5日23時15分～に決定しました！
子供に見せられない。
あるいは、どう説明したらよいかわからない。
ネット上では「セーフティネットだった」なんて主張が問題視されたこともありました。
そうした状況から、懸念を拭いきれない親御さんが多い遊郭編ですが、その対処法は色々とあるはずです。
同時に、親御さん自身が遊郭の悲惨さを知っていくことも重要かもしれませんので、よろしければ以下の記事をご参考にしていただければ。
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遊郭のリアル～鬼滅の刃遊郭編でも話題になった苦海の地獄を振返る
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遊郭がセーフティネットだと？鬼滅の刃遊郭編で学ぶべきはむしろ大人だ
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※弊サイトの関連記事リストです→鬼滅の刃
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文：小檜山青
※著者の関連noteはこちらから！（→link）
【参考】
劇場版『鬼滅の刃 無限列車編』（公式サイト）
『鬼滅の刃』アニメ（→amazonプライム・ビデオ）