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【高階貴子】
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政争に敗れ、左遷される伊周と隆家
道隆の死後、高階貴子の長男・藤原伊周と次男の藤原隆家が事件を起こしてしまいます。
発端は伊周の恋です。
伊周が通う故太政大臣・藤原為光の娘のもとに男の姿が見えたため、伊周は隆家に相談し、相手が何者か調べることにしました。
長徳2年(996年)1月、武装した従者と共に、相手を追い詰める伊周と隆家。
このとき矢まで射かけ、袖を貫通してしまったのです。
矢を射られた相手は、なんと出家していた花山院でした。
花山院は伊周の相手の妹のもとへ通っており、いわば勘違いだったのに、この一件は【長徳の変】と呼ばれる一大事に発展します。
史実の藤原伊周は長徳の変で左遷され その後どのような生涯を過ごしたのか
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花山院は出家しながら女のもとへ通っていたことを恥じたのか、しばらくは黙っていたのですが、藤原道長の耳に入ると、この失態を見逃すわけもなかったのです。
結果、藤原隆家は出雲権守に左遷。
藤原伊周は呪詛の罪により太宰府へ左遷となり、一族は次々と没落してゆきました。
夫を失ったばかりの貴子にとって頼りとなる息子たちが、揃って地方へ飛ばされてしまうのです。
一条天皇の寵愛を受けていた藤原定子は、兄弟を庇おうとしますが、それも叶うことはありません。
そして失意の中、定子は自ら鋏を手にして髪を切り落飾してしまいました。
没落の失意のうちに死す
高階貴子が復権の日を迎えることはできるのか――。
左遷される我が子の車にしがみつき、同行を願った貴子ですが、許されるはずもありません。
貴子は病に倒れ、激動の同年10月に没してしまいました。夫の死後、激動に揉まれるようにして世を去ってゆくのです。
夫とは仲睦まじく暮らし、子にも恵まれた貴子。
彼女は愛と共に生きたのかもしれません。
娘である定子は一条天皇の寵愛を受け、一族揃って華やかな出世を遂げるものの、伊周と隆家は、愛による不祥事をつけ込まれ、失脚してしまった。
後に、一族は罪を許されて都へ帰り、このとき定子も一条天皇のもとへ戻りますが、もはや彼ら中関白家に以前のような輝きはありません。
藤原隆家は【刀伊の入寇】で指揮官として博多で応戦、見事に外敵を撃退するも、貴族社会での評価には至らず……。
★
平安歌人の詠む恋歌はロマンチックであり、後世の人々は『こんな恋をしてみたい……』とうっとり憧れてきました。
しかし、当時の愛とは甘いだけではありません。
通い婚では、女性が捨てられ、愛する人の足が遠のくことを恐れたとされます。伊周の場合は、暴力沙汰を起こす原因ともなりました。
こんなややこしい婚姻制度でなければ【長徳の変】など起こらなかったでしょう。
貴子の歌は情熱的で、普遍的な愛への想いを詠んだものと解釈されます。
それはその通りですが、平安時代の愛とは、今よりもハイリスク・ハイリターンだったのかもしれません。
そう踏まえてあの歌を詠むと、また別の見方も見えてきます。
愛で人生が転変する平安時代は、どこが平安なのか、大変な時代ではないか、と。
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文:小檜山青
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【参考文献】
倉本一宏『紫式部と藤原道長』(→amazon)
糸井通浩『小倉百人一首を学ぶ人のために』(→amazon)
平田澄子・新川雅朋『小倉百人一首―みやびとあそび―』(→amazon)
他