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【『光る君へ』感想あらすじレビュー第5回「告白」】
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右大臣家・兼家一家の家庭事情
面白い話はないか?と聞く兼家に対し、「父上が聞いてもうれしい話はない」とそっけない道長。
兼家はそんな我が子の言葉に、内裏の仕事は騙し合いだから嘘も上手になれと助言します。
道長が、公任や斉信は帝の在位は長くなりそうだと語っていると明かしています。となると、兄・藤原道隆による「帝の在位は短い」という流言飛語作戦も不発だとわかりますね。
帝は若くとも志は素晴らしいと道長がいうと、兼家が真意を探るかのように、お前も同意なのか?と問いかける。
「わかりませぬ」としながら、道長が本音を明かします。
帝はどなたであろうといい。大事なのは「支える側だ」と。
すると兼家は喜び、こうきた。
「我が一族は、帝を支える者たちの筆頭に立たねばならぬ」
そして筆頭に立つためには東宮を即位させねばならない。
生きている間は兼家、その後は道隆、道隆のあとは道兼、道長、さらに道隆の子……と言いきると、最後に釘をさす。
「お前もそのことを覚えておけ」
脂ぎった口調で言う兼家には、何の政治的ビジョンもありません。花山天皇とその側近の方がよほど真っ当だ。
それにしても段田安則さんの醸し出す、権力にギラついた姿が素晴らしいですね。俳優ならば、一度はこういう役を演じたくなるのではないでしょうか。
そのころ、後継者筆頭として期待されている道隆は、妹である藤原詮子の御機嫌取りに出向いていました。
賢い詮子はそんなものには流されないどころか、兄に対し「わざわざ説教しに来たのか」と逆に問い詰めます。
困った道隆は、東宮が即位すれば父が後見になり、仲違いしたままではよろしくないと丸めようとします。
そんなこと詮子だって百も承知。だからといって和解する気はない。
父の道具であることを承知していたのに、たった一人の殿方である円融天皇に毒を盛り、それで譲位させるなんて生涯許せないのだと。
そのうえで“裏の手”があると明かします。
道隆が聞き出そうとしても、兄上にも言わないと言い切る詮子のニヤリと微笑む姿が素晴らしい。吉田羊さんの魅力が全開ですね。
そしてこの父と対峙する詮子は、ドラマの後半にも思い出されることでしょう。
愛のために家父長制に逆らうヒロインが、今後もきっと出てくる。実に痛快ではありませんか。
関白・左大臣・右大臣の密会
内裏では話せない、関白・左大臣・右大臣の愚痴タイムが展開されております。
彼らもかつてはF4のような時代がありましたが、それも今は昔のこと。花山天皇に排除されたと嘆いております。
右大臣・兼家は東宮の祖父として先はあるけれども、関白・頼忠はそうでもない。公任のことがなければいつ死んでもよいとまで嘆いている。
左大臣・源雅信はそこまで権力にこだわっていないようで、見過ごせぬと巻き込まれています。
「我らの意見が合うのは何年ぶりじゃ」
「初めてのことかもしれんな」
「フフフフフ」
笑い合うこの人たちはなんなのでしょうか。政治に対して全く理想がなく、あるのは自分の利益だけですか。
そりゃ、こんなのを見ていたら荘園も没収したくなりますね。
確かに平安貴族は仕事をしています。でも、保守に回ったこの人らは見ちゃいられない。
いつもは小声だった頼忠が大きな声を出し、兼家も驚くほど。
兼家のライバルだった藤原頼忠~関白まで上り詰めた公任の父はなぜ無名なのか
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すると、ここで
「小麻呂! 小麻呂!」
と雅信の娘である源倫子が猫を追いかけてきました。
当時の猫は紐で繋いでいるため、逃げたら一大事。だからといって追いかけてくるとなるとはしたない。雅信は娘の無礼を詫びます。
兼家はねっとりと、よい娘で入内させるつもりはあるのかと聞いてきます。そうなれば邪魔ですね。
「いや、あのような礼儀知らずの娘、入内などとてもとても……」
そう謙遜する雅信ですが、兼家からすればそんなことは信じちゃいないでしょう。
同時に、倫子と道長の結婚への道筋も浮かんできます。この関係性を、猫と追いかける倫子で示すのは、『源氏物語』の女三宮と柏木のオマージュでしょうか。
なんですかね。平安貴族の生きている姿をやっと掴めた気がします。
百人一首やらなにやら、文化の世界だけでは華やかで仕事をしている姿が想像つきにくい。
仕事ぶりを探ってみても、生きて、喜怒哀楽を見せている姿はピンとこない。
そういう背後の部分がピタッと重なり、生々しい姿が見えたと思える、まさにドラマの力を感じます。
確かにこの時代は馴染みもないし、合戦もありません。だからこそ、新鮮な驚きがあっていい。こういうのが見たかったんじゃないか?という思いが心の奥から湧いてきます。
知っているようで知らなかった世界が目の前にあります。
とにかく明るい道綱
散楽の一座でも倒れた「五節の舞姫」が話題になっています。
しかし、藤原為時の娘であると、身分が低くてつまらないと興をそがれる一同。
直秀だけが、何か思うところがあるようです。
兼家はそのころ、妾(しょう)の一人である藤原寧子のもとにいます。
この「寧子」という名前はあくまでドラマ上の設定で、本来は藤原道綱母という名前で知られていますね。父・藤原倫寧(ともやす)から「寧」をとった、北条時政と政子父娘と同じパターンの命名のようです。
『蜻蛉日記』の作者で、紫式部にとっても遠い親戚……と言っても、突き詰めれば藤原はみんな大体親戚同士となります。
中国や韓国の場合、ルーツが同じ者同士の結婚は避けてきたものですが、このころの日本はそうではないのです。
二人の前に、一人の青年がいます。寧子が、あれは道隆様の次の子だと兼家に言うと……。
「はい! 父上のために精一杯舞いました!」
ともかく明るいこの青年が藤原道綱。兼家は可愛く思っているそうですよ。
しかし、同時に「時姫を母とする三人と同じとは思わないよう」にと釘を指す。法外な夢を抱かず、控えめにすればよいこともあるとさらに付け加える。
実父からこんなことを言われても、道綱は素直にハキハキと聞き、母である寧子も達観しているように見えます。
母も、我が子はマイペースでのんびりしていると理解しているのでしょう。
それでよいのかもしれない。なまじギラギラとしていて、きょうだいに敵愾心を抱いていたら危うくなる。
上地雄輔さんがいい味を出しています。舞の所作もキビキビしていてよい。
この道綱があの実資に「アホのくせに出世早くてムカつく!」と罵られるのかと思うと、期待が高まります。
道長の異父兄・藤原道綱は史実でもノーテンキだったのか 母や父・兼家との関係は?
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直秀がまひろと道長を引き合わせる
直秀が藤原為時邸の屋根の上で梟の真似をしています。
顔を出したまひろに対し「憑き物のついた女の顔を見にきた」と皮肉ると、そんなに噂になっているのかと彼女が驚いています。
“三郎“が道長だと知っていたのか?と尋ねるまひろ。
倒れた理由はそれだったのかと逆に問われて、彼女が「それだけじゃない」と答えると、身分が違いすぎるから諦めろと直秀が諭す。
思わずまひろがムッとします。身分に縛られなくないからこその、散楽ではないか?
それはそうだと認めつつ、世の中変わりもしないと呟く直秀。
彼はどこか達観したようで変わっていますね。世の中の外にいるからこそ、仕組みがわかって、天の声すらわかってしまうような不思議さがあります。
歴史劇のこうした「オリキャラ」は、そんな役目があり、毎熊克哉さんが見事に体現されています。
しかし、そこへ
「姉上〜」
と弟の藤原惟規が出てきて、会話は中断されるのでした。
紫式部の弟・藤原惟規は実際どれほど出世できたのか モテる男だったのか?
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そのころ藤原道長が文を書いていました。
字が綺麗だとかえってダメ出しをされる個性的な筆跡にご注目ください。
この文が直秀経由で届けられ、まだ呑気な乙丸に対し、いとは苛立っています。下人からの手紙だと聞くと、いとは聞かなかったことにします。
手紙の内容はこうでした。
五節の舞姫が倒れたと聞いて胸を痛めている。ぜひ会って話したい。次の満月の夜、藤原為時の屋敷を訪ねる――。
そんな道長の文を見て、まひろは考え込んでいます。
道長にはここに来てほしくない。父の前では話せないことがある。だからどこかで会えるように手はずを整えて欲しい。
逢引きではないとして、直秀に頼むと「断る」と言われてしまいますが、実際どうなるのか。
満月の夜、道長が馬で移動していると、その背中に直秀が乗ります。為時の屋敷にまひろはいない。六条に迎えと告げるのでした。
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