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【『光る君へ』感想あらすじレビュー第8回「招かれざる者」】
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道兼の来訪
藤原為時が帰宅すると、いとが慌てた様子で出迎えています。
「誰か来ておるのか? 顔が青いぞ」
酒を持参した藤原道兼様だと答えるいと。思わず為時が驚愕していると、まひろも帰宅するではありませんか。二人を鉢合わせてはマズイとばかりに、為時が「外におれ!」と追い返そうとすると
「為時殿!」
と、道兼が声をかけてきました。しかも「ご息女か」とめざとくまひろのことを見つけてしまいます。
ふらふらと挨拶もせず家に入り、母の形見の琵琶の前でへたりこんでしまうまひろ。
為時と道兼は酒を酌み交わしています。息子がそろそろ大学か、為時の息子ならば心配いらぬと語る道兼に対し、やんわりと否定しています。
道兼に酒を勧められるも断る為時。
「つまらぬな、せっかく訪ねて参ったのに」
そう道兼が言うと、まひろが琵琶を手にして歩いてきて、頭を下げます。
「このようなことしかできませぬが、お耳汚しに」
琵琶を弾くまひろ。
弦を弾くたびに、母の姿が思い浮かびます。
ここはかなり貴重な場面です。
雅楽の琵琶は他の楽器との合奏が多いため、進化した後世のものとはかなり違います。
中国琵琶や薩摩琵琶は縦に持ち、弦も増え、単独で弾き語りをし、かなりスピード感もあります。
けれども雅楽の琵琶は四弦でかなりゆったりしている。
「見事ではないか。身体中に響き渡った。琵琶は誰に習った?」
感心してそう語る道兼は、素直というか、気障ったらしいことを言わない性質なのでしょう。
兼家がどれほど兄と弟と差をつけたのか。道兼の言葉をどこまで信じるかはともかく、根は真面目なのだと思います。
道隆のような崩れて出てくる艶っぽさ。道長の愛嬌。そういうものがない。素直に褒めるだけです。
「母に習いました」
「母御はいかがされた」
「母は……七年前に身罷りました」
「それは気の毒であったな。ご病気か」
「はい、失礼しました」
素っ気なく答えたまひろは、そのまま席を離れました。
会話のひとつひとつがヒリヒリする。道兼に刺し殺された母の姿がまひろの中に明滅します。
知ってか知らずか、
「麗しいが無愛想じゃな」
と返す道兼に詫びる為時。
道兼は、いとを酒に誘うものの、為時が捨て置くように言います。まひろの母が七年も前に身罷ったならば、いとは為時の実質的な妾だと道兼は思ったのかもしれません。
「楽しく飲もうと思うたが、はは、真面目な家じゃ、はははは!」
まひろは琵琶の前で考えています。
道長は言った。一族の罪を詫びる、許してくれと。
まひろは返した。兄はそのようなことをする人ではないと言わぬのかと。
道長は言った。まひろの言うことを信じると……。
目の前で見た母の仇は、どうということのない男だったのかもしれない。悪鬼でもなければ、羅刹でもなく……彼女なりに馬鹿馬鹿しくなってしまったのか。
そこへ為時が声をかけてきて、まひろは外に出ます。
「帰ったぞ」
「そうですか」
「すまなかった」
詫びる父に、まひろはこう問いかけます。
「なぜおわびなされるのですか?」
「よく辛抱してくれた」
「私は道兼を許することはありません。されどあの男に自分の気持ちを振り回されるのはもう嫌なの。それだけにございます」
まひろが淡々と答えると、鳥籠から小鳥が出ているのが映ります。
まひろは恩讐という籠から飛び立つ気持ちがあるのかもしれません。籠は右大臣家で、小鳥はまひろの運命でしょうか。
地獄に堕ちるのは誰だ?
花山天皇の前に藤原道兼がいます。
右大臣の子は去れと追い返そうとし、藤原義懐もそれに続いて道兼が去ってゆくと、藤原為時が言葉を挟みます。
「恐れながら……」
右大臣の子でありながら道兼は疎まれていると告げるのです。
途端に笑顔を浮かべる花山天皇。
「あいつ、父とうまくいってないのか!」
「打ち据えた傷さえあります」
そう聞いて面白がり、呼び戻すよう命じると、早速、その痣を確認しています。
「病に倒れてもお前を殴るのか! 地獄に堕ちるな右大臣は、はははは!」
高笑いする花山天皇ですが、そのころ右大臣兼家は地獄に堕ちるどころか、目を覚ましていました。
道長が月を見ていると、騒ぎ声がします。屋敷に盗賊が入っていました。
直秀は首尾よく逃げようとするも、仲間の窮地を見過ごせず引き返し、捕まってしまいます。
捕えられた盗賊を見て、道長は驚愕します。それは直秀だったのです。
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