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【『光る君へ』感想あらすじレビュー第8回「招かれざる者」】
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猫にしか興味がなかった倫子が!
右大臣・藤原兼家、左大臣・源雅信、そして関白・藤原頼忠のトリオが密会しています。
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ライバルの藤原義懐は従二位中納言になる。年末に宣旨がくだってしまう。帝はきっと義懐を関白にしてしまう!
もう終わりだと頼忠は弱っていると、兼家が励ましています。
三人で手を組めばよい、義懐になんか負けていられない!と雅信がチームワークを主張すると、すかさず兼家は道長を倫子に婿入れさせたいと提案する。
雅信は、渋っています。
道長の官位が、従五位下程度の右兵衛権佐(うひょうえごんのすけ)であり、婿にするには低すぎる。
ちなみにこれは「佐殿」であり、唐名(とうみょう)は「武衛」ですから、2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の源頼朝でお馴染みですね。
平安京の中ではまだまだパッとしないけれど、都の外ではすごい人という扱いになります。
雅信は、倫子を大事にしすぎました。ただ可愛いというだけではなく、入内を視野に入れていたから、惜しんでしまうのです。
そんなわけで、雅信は妻の藤原穆子相手にもぼやいている。
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義懐が力を持てばどうなるかわからないし、右大臣家は嫌いなのだとか。関白家の藤原公任ならば良いって……。
確かに兼家はなぁ。道綱母の藤原寧子が、兼家のつれなさを詠んだ歌がバッチリ出回っていますからね。娘があんな歌を詠むかもしれないと思うと、そりゃ嫌ですよ。
しかし穆子は夫のあしらい方を身につけています。
確かに藤原公任は見目麗しく、賢い。しかしそのぶん遊びすぎて、倫子が寂しい思いをするのでは?
雅信はそれでも、道長だって打毱で大層騒がれたと赤染衛門から聞いたと言います。
柄本佑さんの使い方が見事なこの作品。道長って、パッとみたら冴えない。いわば淡い色の翡翠ですね。水晶のように澄み切った公任とはどこか違う。
しかし見ているうちに、なんだかこれはよい。もっと見たい、じっくり観察したいと思ってしまうような魅力があります。
すると穆子は、夫が赤染衛門と話したという点にチクリ。ただ話しただけだと雅信は慌てています。
穆子はかわいい嫉妬ができる女性ですね。『鎌倉殿の13人』の政子は、金剛力士像顔になって頼朝に怒っておりました。ああいうのは怖い。
でもスルーしてもかわいらしくない。拗ねる程度に嫉妬するのが、彼女の超絶技巧です。
するとそこへ、倫子が小麻呂を探して走ってきます。
どこにいるかと探し回っていると、穆子は猫にしか興味がないのかと呆れています。
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そして右大臣三男の婿入りについて聞いてみると、花が開くように微笑む倫子。
「なんだその、まんざらでもない顔は!」
「まんざらでもない顔などしておりませぬ」
そう言い、一人自室へ戻ってゆく倫子。
「道長様……」
そう打毱での彼の姿を思い出し、夢見心地となる倫子でした。
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黒木華さんが愛くるしいのは言うまでもない。
それにしても、この恋する顔の美しさはどうしたことか! 花の蕾がふくらんでほころんでゆくようで、甘ったるくてかわいらしくて素晴らしい!
こんな顔をさせた時点で道長は有罪なので、さっさと婿になりましょう。
まひろと結ばれて欲しい気持ちもないわけではありませんが、この倫子を見てしまうと難しい。
まひろは書く楽しみもあるし、ここはもう、倫子でよいのではありません?
ついでにいうと、雅信も穆子もかわいいですね。小麻呂も言うまでもない。ドロドロした右大臣家が嫌だというのは理解できますとも。あちらは全員可愛げがありませんから。
雅信の予感は当たるのかもしれない。今はまだ純朴な道長も、いずれは……。
右大臣兼家 倒れる
寛和2年(986年)になりました。
藤原義懐は帝からのお達しだとして、陣定(じんのさだめ)を当分の間開かぬことにすると告げます。
これまで出てきた帝の前での会議ですね。
帝の決定に異論があれば、書面で提出すること。よい意見と判断すれば上奏が許されるそうです。
これでは独裁だ!と反発されると、義懐は語気を強めて反論する。
「帝の叡慮に口を挟むは不忠の極み!」
すると兼家がやおら立ち上がります。
「不忠とはどちらだ!」
慣例を破り、帝だけで決めることは天意に叛く、世が乱れる。それを帝が理解していないのならばお諌めしろと訴えています。
世を治める為政者とは、天から選ばれている。それに背けば帝に禍が及ぶかもしれない。そんな東洋の考え方です。
彗星や白虹貫日(日暈)がその証とされ、こうした考えを【天譴論】と呼びますが、日本では関東大震災時の渋沢栄一による誤用が広まってしまいました。
大河ドラマの主役に選ばれた人物であろうと、過ちは犯すのでそうそう信じてはならないという悪例です。ご注意ください。
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天意に叛いていいのか?と脅しながら、兼家が
「これより帝をお諌めに参る!」
と、関白、左大臣に宣言すると、義懐が止めようとします。
するとここで、兼家が派手に倒れてしまいました。
一報を聞いた花山天皇はすっかり大喜び。きっと忯子の助けだと、うっとりとしている。義懐も天の佑けだと浮かれています。
倒れた後、寝込む兼家。医者の見立てによると、毒は盛られていないながら、命は危うい。
藤原道隆が手立てはないか?と聞けば「魂が去らぬよう呼びかけるのがよい」とのことです。中国の『礼記』にも記載がある風習ですね。
「父上! 父上! 父上!」
息子たちがそう呼ぶ中、吉田羊さん演じる藤原詮子だけは黙っています。
権力者の父親が倒れた以上、息子たちは対応策を考慮しておかねばならない。そこで藤原道隆が、家中では父の代理をつとめると宣言します。
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すると詮子が冷淡に口を開く。
兄の官位は義懐に負けている。参議になっていないから、父上に死なれたら困るだろう。
「それは詮子だって同じだ」と道隆が反論。父上がいなくばれば東宮様とて後ろ盾を失う。帝が義懐を寵愛すれば即位すらできないのではないかと訴えるのです。
弟の道兼も、四人で力を合わせるべきだと言い出しました。
しかし詮子には策がありましたね。自分にも東宮にも源雅信がついている! 大臣家に道長婿入りを勧めてもいる。そのうえで、道隆も源と手を組む覚悟を決めろと言い出します。
この場を凌ぐにはそうすべきだといい、文を書いたら道長に持たせると言います。
道隆はひとまず父を回復させるべきだとして、安倍晴明を呼び出しました。
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