こんばんは、武者震之助です。
前回、家康の寝所に侍った万千代(井伊直政)。
「いっそ本当に色小姓になっちゃわない?」と徳川家康は誘うのですが、彼は「己の立場ではなく働きでライバルをねじふせます!」と宣言。家康はそんな万千代のガッツを認め、小姓に出世させるのでした。
つまり、実際には色小姓にはなっていない、と。
このアレンジ、最高ですわ。最ッ高にうまいですわ。
実際のところそういう関係になったかどうかは、結局のところはっきりとわかるのはこの二人だけなんですね。
信頼されていて寝所で話し合っていただけなのか、性的関係にあったか、そんなものは実のところ断定できません。
子供ができるわけでもないし。
口裏あわせて「イエス!」といえばそうなってしまう、と。
本作はその路線を採用しました。うまいですねえ。
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小姓の仕事って? 殿の洗顔を手伝ったり部屋を掃除したり
その頃、井伊谷では……。
木を伐採し過ぎたのでしょう。保水力を失った山が崩れてしまいます。
って、戦国の世の環境破壊を描いてきたか!
普通はそこまで考えないでしょう。
戦国と言えば華やかな合戦ばかり見てしまうでしょう。しかし本作は違うのです。
さて、めでたく小姓に出世した井伊万千代と小野万福。
しかし、酒井小五郎はじめ先輩たちは「なんか感じ悪いよね~」という雰囲気で冷たい態度です。彼らは業務指示をしてくれません。
万千代は家康の身の回りの世話を甲斐甲斐しくする小姓を見て、「仕事なさそうだなあ」とボヤきます。
この場面、いいですよね。
小姓が家康の歯の掃除をしたり、顔を洗う手伝いをしたりする。
こういうの見たかったんですよね。こういう日常、見たかった。
生活感が溢れていていい!
とりあえず足場をならしつつ、どうやって食い込むか悩む万千代と万福でした。
論功行賞のため草履番ノブもパニック
指示待ちでは駄目だと考えた万千代は、仕事がないか家康に尋ねます。
家康は「手柄改め」、いわば論功行賞の手伝いをせよと命じます。
手柄を訴えるため、多くの人々が登城したため草履番のノブこと本多正信はパニック状態。
そこで万千代は、草履のための札に名前を書いてくれるよう、皆に頼みます。
草履番をやめても心配して手伝う主従コンビ、いいね!
井伊谷では、おとわが甚兵衛から山崩れが起きたという訴えを聞きます。
現場に駆けつけると、木材伐採現場は崩れた土砂に覆われています。土砂は川底にまで至り、水害にまでなりそうだ、と。
伐採のしすぎです。
領内に注意を促し、山崩れを防ぐ対策をするよう指示するおとわ。彼女は山の声に耳を傾けます。
30分以上も手柄の熱弁を振るう元今川家臣 彼らも必死
家康は手柄訴えを辛抱強く聞き入れます。
武田重臣の内藤昌秀を討ち取った元今川家臣の朝比奈泰勝は、四半刻(30分)も熱弁をふるうのでした。
うんざりしながらも、律儀に話を聞いた徳川主従っていい人ですね。
鬱陶しがられている泰勝の気持ちを察したのでしょう。
今川滅亡後、なんとしても這い上がりたい、そんな心情を理解しているのでしょう。
『泰勝ってしつこいなぁ』と私はもう思えません。
真剣な表情で手柄を訴える元今川家臣の皆さんにも、きっと井伊家のようなドラマがあったことでしょう。
彼らも主家滅亡のあと、必死で生き抜こうとしたはず。
桶狭間のあとから、ずっと今日まで大変だったはず。
なんとしても生き延びて這い上がりたい、そんな心情を想像するとうっかり涙すら浮かんできそうです。
エクセルマスター万千代の表制作テクニック!
万千代は家康の寝所に、疲労回復効果のあるヒメハギの煎じ汁を持参し向かいます。
新参者だと止められるものの、万千代は無事寝所に到達したのでした。
万千代に「薬に興味あります?」と聞かれて「あるっていえばあるかも」と返す家康ってばもう。普通は薬研を自室に置きませんって。この健康マニアめ。
家康は健康マニアという情報をしっかりと仕入れる万千代。
一方、家康は手柄改めを夜まで行っています。
ここで万千代は、表にして手柄をソートするテクニックを思いつきます。エクセルマスターみたい!
流石ですね。草履の棚に名前をつけることにも通じる手法です。現代を生きていたとしても、万千代はエクセルとパワーポイントを使いこなす、プレゼンの鬼であることでしょう。
このとき進言する万千代の得意げな顔が、寿桂尼と対面していた時の直虎そっくりで、びっくりしていまいました。
万千代の中には、いろいろな先人の要素が生きていますね。
朝帰りの万千代を見て、小五郎はオロオロするしかない
万千代は夜が明けるまで表作りに取り組み、ついには眠りこけたところを家康に起こされてしまいました。
しかし、傍から見れば完全に朝帰りなわけでして。
その姿を見た小五郎は目を疑うのでした。
万千代は、薬を持ち込む役目を果たそうと考え出します。
そうなると、井伊谷の薬の知識が役立つはず。
ただ万千代としては、井伊谷に頼むと材木の件のようにおとわに余計なことをされるかも、と考えるのでした。
そこへ松下常慶が井伊谷から、「土砂止め」の技術を知りたいとやって来ます。
得意の絵で工事指示書を描くかわりに、薬をもらいたいと万千代は頼むのでした。万千代はイラストだって得意なんだ!
家康は万千代の表ソートのおかげで、手柄改めがスピードアップしました。
ただ、悩みが……。
武功を立てたのは浜松勢ばかりだったのです。岡崎勢にはほとんど手柄を与えられない、それが悩みの種なのです。
榊原康政はそれも仕方ないと言うのですが、家康はまだ悩んでいます。
山を復興させて残るのは近藤の名前?
井伊谷では、万千代の描いた工事指示書を受け取って喜んでいます。
奥村六左衛門は、これは万千代の描いたものと確信していますが、南渓はシラを切ります。
そして「松下源太郎が薬を欲しがっている」とおとわに言うのでした。
おとわは扱いが簡単なものを送るようにと言います。明らかに南渓を疑っているようですが。
土砂止めの工事をしましょうとおとわに提案された近藤は、費用がかかりそうだと嫌そうなそぶりを見せます。
おとわは「今荒れている土地を、近藤様が復興したら名が残りますよ! あれは近藤の松だと後世の者は言いますよ!」と「巌谷に松を栽える」という禅語を駆使しつつ近藤をうまくのせて、やる気にさせるのでした。
近藤は説得できましたが、実際工事に従事する領民は不満げです。
伐採は武士の都合で関係ないと。
ここで甚兵衛が「山の前では皆ただの人。武士だのそうでないだの分け隔てせず襲う! 災害を防ぐためにもやるぞ」と一喝します。
うーん、格好いいですね。
「某は殿のご寵愛をいただいたぞ!」
井伊谷から薬を受け取った万千代。
さらに方久から南蛮渡来の「サボン」(石鹸)を託されます。
これで覚えがめでたくなるぞ、とうれしそうな万千代と万福です。
家康は実際に、長らくサボンを愛用していたそうです。
その夜、早速、薬とサボンを持参して寝所に向かう二人。
小五郎らが止めようとしてもみ合いになったところで、万千代は叫びます。
「某は殿のご寵愛をいただいたぞ!」
殿に衆道の気はないぞ、と否定しつつ焦る小五郎。
それは俺みたいなイケメンがいかなかったからじゃね? この間朝帰りするところ見たっしょ♪ と万千代はさらに畳み掛けます。
豊臣秀吉とはタイプの違った人たらし
結局、色小姓設定を使うんだな、そう面白がる家康。
家康は万千代が差しだす薬を毒味もせず口にします。
家康は井伊を信じているのです。
何故そこまで井伊を信じるのかと訝しむ万千代。
家康は、おとわは井伊の民を守ることしか考えていないから、と語ります。
もう、ひっくり返りそうなほど「人たらし」の家康ですよね~!
「人たらし」といえば秀吉のことですけれども、家康の場合、馬の鼻先に人参を吊り下げる方式ではなく、相手をよく見て信じているのが家康なのです。
これは信じられた方は心をぐっとつかまれると思います。
『真田丸』でも本作でも、家康は「もの凄い天才!」と強調されているわけではないのです。
カリスマ性なら、信長と秀吉のほうが絶対的に上。家康はただ、下につく人が「あの人は俺を信じている」と言うだけ。これだけなのです。
しかし、これが大事なんですね。
信頼です。
信じることで「俺を信じるこの人のために頑張ろう!」とやる気を引き出す。そういうタイプです。
家康ってやっぱり理想の上司ですし、最終的に天下を取るに足る人物ではないですか。
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