『武侠映画の快楽―唐の時代からハリウッドまで剣士たちの凄技に迫る』/amazonより引用

世界史

北斗の拳にも影響大! 中国エンタメ「武侠」は日本と深い関係にある

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エンタメに国境なし

押川の小説は教科書には載りません。

それでも彼のようなエンタメ作品は、世の中に出回り、講談、映画、芝居、大衆小説として、日本人の生活に馴染んでいきました。

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中国のエンタメで【道士や少林寺僧がマスターした武芸】は、日本では【忍者や美少年剣客がマスターして】暴れ回ります。

そして戦後へ。
日本のエンタメ界は中国と奇妙な結びつきを始めます。

日本人の精神性に影響を与えたとして、GHQがエンタメですら禁止した【武士道】。

それに取って代わるようにして中国古典を題材にした小説が増えていきました。

が、これはあくまで一時しのぎ。

昭和が進み、とある一人のミステリ作家が世に出てきます。

山田風太郎――。

かの江戸川乱歩にも師事した新進気鋭の作家でした。

山田風太郎/wikipediaより引用

彼がある出版社から原稿料をもらおうとしたところ、現物支給をされたことがありました。

現物とは『金瓶梅』という、中国古典ポルノ。

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このポルノをベースにミステリを描いたら面白いのではなかろうか?

そう考えた山田は1954年、ミステリにアレンジした『妖異金瓶梅』を発表し、高評価を得たのです。

『金瓶梅』の次は『水滸伝』にしてみたらどうだろう?

次に山田はそう考えました。

かつて、かの滝沢馬琴は『新編金瓶梅』というアレンジ作品を書いていました。

そのあとで、和製『水滸伝』として『里見八犬伝』を書いているのです。

ならば山田の水滸伝もありでしょう。

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梁山泊のように百八人を集めるのは面倒だ。

ここは忍者でいいだろう。

義侠とか、そういうことはさておき、異能力者同士をひたすら戦わせたらおもしろそうだ。

そんなアイデアのもと、1959年に発表されたのが『甲賀忍法帖』です。

漫画バジリスク
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忍者がひたすら殺しあうわ、首は飛ぶわ、エッチな展開もあるわ。

エンタメのA級とはされませんし、教科書には絶対に掲載されません。

むろん大河ドラマになるわけもない。

とはいえ、ここから忍者ブームが爆発的に広まりました。

忍法帖には、現在の異能力バトル漫画とも一致する特徴が、しっかりと備わっています。

異能力バトルといえばアメコミというイメージがあるでしょう。その影響もあるでしょうが、忍者も忘れてはいけません!

・チーム構成員の異能力は、事前には不明である。探りながら戦う

・圧倒的な戦闘力ではなく、能力の組み合わせや相性によって勝敗が決まる

・使い所がほとんどない能力でも、適材適所で時に極めて有効となる

※その典型例が『ジョジョの奇妙な冒険』ですね

真面目な大人が顔を背け、子供には「読むな」と言おうが、圧倒的に面白いので広まってしまう。

これぞエンタメの世界でした。

そういうバトルの元ネタが、実は『水滸伝』なのです。

甲子夜話』あたりから始まるエンタメ忍者ネタとか、真田十勇士とか、いろいろな日本のエンタメネタもあります。

それでも、日中エンタメがハイブリッドしてきたことは、否定できないわけです。

漫画が出たついでに、別の日中エンタメハイブリッド例もみてみましょう。

ブルース・リー
ジャッキー・チェン
ジェット・リー
ドニー・イェン
ウー・ジン


かようなカンフースターたちも日本では人気がありますね。

 

カンフー映画には、武侠小説の伝統を汲む物語の構成や世界観がありました。

『北斗の拳』のケンシロウがブルース・リーをモチーフにしていることは有名です。

彼が突く「秘孔」も、元ネタをたどれば武侠小説の「点穴」(=特定のツボをつくと動きを封じられる)にあります。

特定のツボを突くとあべし!

これは元をたどれば、中国でした。

『北斗の拳』とテイストが似た中国映画があっても、何ら不思議はないんですね。

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『ドラゴンボール』も、モチーフは中国四大奇書『西遊記』です。

バトルで正義を為すところは、武侠やカンフー映画に通じるところが多い作品と言えます。

『西遊記』は『最遊記』という作品もありますし、『水滸伝』ともども日本でも映像化されていますね。

 

『機動武闘伝Gガンダム』に出てくる東方不敗ことマスター・オブ・アジア。

 

彼の名は、武侠小説のレジェンドにして先日亡くなられた武侠小説巨匠にして国民的大作家・金庸の代表作『笑傲江湖』の悪役由来です。

自分で去勢しているという衝撃的な悪役ですので、ぜひ原典やそのドラマ版でご確認ください。

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中国エンタメを排除できるか?

最近、こんなご意見を見かけます。

中国憎しのあまり『三国志』好きの自分に葛藤を感じているとか。

『三国志』だけは例外と割り切ろうとするとか。

中国が関与したものはともかく貶すとか。

この言動に合理性はあるのでしょうか?

いくら中国が嫌いだろうと、中国に少しでもかすったものを排除しようとしたら?

無理です。

もう一度言います。

絶対に無理です。

中国は無関係だと思っているエンタメも、元をたどればその要素があっても、何ら不思議はありません。

漫画だって、ゲームだって、中国人モチーフのキャタクターは定番です。

 

アメコミのマーベルなら大丈夫だろう、って?

そうでしょうか?

サミュエル・L・ジャクソン「ニック・フューリーは深作欣二監督映画の柳生十兵衛を参考にしている」

映画『魔界転生』は忍法帖が原作

前述のとおり、忍法帖シリーズの元ネタは『水滸伝』=中国

 

やっぱり無理、不可能なんです。

カンフー映画も「武侠小説」の影響は当然ある。

そのカンフー映画が、ここまで世界に大人気であること。日本発の忍法帖や異能力バトルだって、同じことです。

大切なことは、

【エンタメに国境はない】

ということではないでしょうか。

日本でも人気のある周星馳は、武侠にぞっこん惚れております。

彼の『少林サッカー』は、サッカーなのに空を飛ぶ超展開で大好評でした。

これも、武侠の設定を活かしているのです。

※『少林サッカー』も武侠でわかる!

他にも『カンフーハッスル』はじめ、彼の作品は武侠ネタがてんこもりです。

 

中でも日本と中国は、海を隔ててこの分野でもしっかりと足並みを揃え、互いに影響を与えあってきたのです。

「こういう発想ができるのは、日本人だけだ!」

ルーツを強調したいのであれば、まずそう思ってしまう前に中国文学史をあたってみることも大切なことではありませんか。

優劣を決めることに、さしたる意味はないはずです。

エンタメは、国境など無く、ともかく皆が楽しめればいい。そんな気持ちが大切ではないでしょうか。

「どうして私たちは、こんなにも『三国志』はじめ、中国モチーフのエンタメが好きなのか?」

それも伝統であり、歴史なのです。

我々はご先祖様からずっと、はるか昔から楽しんできました。これからも、その楽しみを広めていきましょう。

※ツッコミどころ満載の超展開でも「武侠だから」で許される。だがそれがいい

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文:小檜山青

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【参考文献】
岡崎由美『漂白のヒーロー』(→amazon
岡崎由美『武侠小説』(→amazon
日下翠『金瓶梅』(→amazon
伊波律子『破壊の女神』(→amazon
井波律子『中国侠客列伝』(→amazon
鶴間和幸『人間・始皇帝』(→amazon

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