富士山登山での禁止事項を無視したり、神社の鳥居で懸垂をしたり。
円安と物価安によって外国人旅行者が増加したことで、日本人には思いもよらぬトラブルが日本各地で起きています。
振り返れば文化や風習の違いによる騒動は幕末にも多発しています。
島津久光の一行(大名の往来)を馬に乗ったまま横切り、刃傷沙汰になった【生麦事件】は歴史の授業でもお馴染みですね。
それまで鎖国(制限外交)をしていた日本は、外国人にとって慣れない光景ばかりであり、例えば丁髷(ちょんまげ)・月代(さかやき)一つとってもワケのわからぬスタイルでした。
いったい当時の訪日外国人は、江戸期の日本を見てどう思ったのか?
幸いなことに、彼らはワンダーランドのような幕末ジャパンについて記録を残しています。
今回はトラブルばかりではなく、単純に日本を見て驚いていた、その記録を振り返ってみましょう。
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ガールはキュート、でもレディは……
「外国で可愛いお嬢さんに出会えればいいな!」
そんな妄想めいた願望は、幕末の来日西洋人にもありました。
彼らが目にした日本人のお嬢さんはSOキュート――美しいストレートの黒髪、しっとりした白い肌、切れ長の瞳を持つ、そんな姿に惹かれる一方、彼らは残念がりました。
「未婚女性は可愛いし美人なのに、結婚すると老けるし、気持ち悪い……」
気持ち悪いって何だ、コラ!
と突っ込みたくなりますが、これは既婚女性がお歯黒、眉剃りをしていたせいです。
化粧の流儀も西洋と異なるため、どうにも不気味。
理由も習慣も理解出来ない西洋人からすれば、こんな屁理屈まで生まれたほどでした。
「きっと既婚女性が醜いのは、浮気しないようにだね、貞節を守るためだ!」
いやはや、なんちゅう理屈でしょう。
しかし明治政府が成立すると、お歯黒と眉ぞり、アイヌ民族女性がしていた口の周辺の入れ墨等も禁止しています。
これについては、現代日本人も大きな口は叩けないでしょう。
大河ドラマはじめ、時代劇ではお歯黒、眉ぞりを再現しません。現代日本人も、気持ち悪いと感じてしまうからですね。
ちなみに日本人男性については「醜い……」という記録も……。
飛脚のような肉体労働者の頑健な肉体は、目を引いたようですが、当時の西洋人ですから人種偏見もあります。そこは差し引きましょう。
露出度と風呂にビックリ!
日本人は西洋流のハグやキスを見て「いやらしい!」とビックリ仰天。
一方で、外国人は日本人の露出度や入浴を見て「いやらしい!」と驚きました。
当時の日本は、褌一丁で移動する職人や肉体労働者もおりました。女性ですら、上半身裸で腰巻きだけつけて、涼むこともあったとか。
西洋人は、他の熱帯地方でもこうした露出を嫌い、無理矢理厚着にする傾向がありました。
現代人からすれば、そんなことよりもクールビズだと言いたくなりますね。
高温多湿の日本の環境を考えてみますと、露出度が高いかつての方が快適だったかもしれません。
女性の露出に関して言えば、乳房を性的なものと見なす傾向は、東洋では薄い傾向がありました。
例えば近代化以前の中国でも、乳房を強調してオシャレとしていたのは、グラマーで人気のあった楊貴妃の唐時代くらいだとか。だから平気だったのかもしれません。
今は当たり前の胸元強調は、明治維新以降、西洋の影響あってのことです。
江戸時代以前、大きな胸元はむしろ老けて見えると不評だったようです。
明治政府成立以降は、こうした露出は厳しく制限されました。
そのせいで「裸体で取っ組み合うとは何事か!」と、相撲が禁止されかけたのですから、大変なことです。
露出度の高さにおいて、西洋人にとって最もショッキングだったのは【混浴】です。
大ヒット漫画とその映画化作品『テルマエ・ロマエ』を思い出してください。
※映画『テルマエ・ロマエ』予告編
あの作品は、古代ローマ人が現代日本のお風呂文化に驚くというものでした。
逆に言いますと、古代ローマ人でもなければ、日本の風呂文化が理解出来ないということ。
彼らの愛した風呂文化が、ヨーロッパで消えたわけではございません。
イギリスのバースには温泉文化がありましたが、その中身は日本とは大違いです。
風呂に入るための専用服があり、籠を担がせて乗り込むこともある。
男女別。
そういう入浴文化しか知らない人からすれば、日本の温泉は驚くべきものです。
「げええっ、若い娘さんの横に男がいる!」
「お湯が熱すぎるから、日本の女は皮膚がふやけて老けるんだ」
「お湯の交換があんまり細かくないから、皮膚病が流行するんでしょ」
割と言いたい放題だったのです、オイオイ。
混浴制度は確かにビックリかもしれません。
しかし、当時は照明が薄暗く、良家のお嬢様だと周囲を女中がガードしたため、そこまで見たい放題でもなかったようです。
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