べらぼう感想あらすじレビュー

背景は葛飾応為『吉原格子先之図』/wikipediaより引用

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『べらぼう』感想あらすじレビュー第3回千客万来『一目千本』重三郎には吉原しかねぇんだ

「これが蔦重が作った『細見』」

「まぁ、俺のってのは言い過ぎだけど」

『吉原細見』が出来上がり、唐丸は感心しています。

しかし、最後のページ(奥付)には蔦重の名前が入っている。

版元の鱗形屋としては、よかれと思ってのことだろうと唐丸がフォローをするけど、蔦屋重三郎は顔が引き攣ってしまう。

そりゃちっとばかし甘ぇんじゃねえか……?

鱗形屋も、別に好意だけじゃないでしょう。

吉原細見の“改”となれば話題になり、売れ行きも伸びるはず。その辺を見込んだのでは?

 


『吉原細見』の御目見

さて、そんな抜け目ない鱗形屋は、吉原の旦那たちに『吉原細見』をお披露目しております。

鱗形屋の、なんとも渋い色の着物の美しさ。

そして片岡愛之助さんの抜け目なさと気品あふれる姿。只者じゃねえ感じはしますわな。

『吉原細見』は確実に売れるのです。

『吉原細見』

元文5年に発行された『吉原細見』/wikipediaより引用

吉原で一定数を買い取ってもらい、配布してくれるので、外さない売れ筋ですね。

忘八たちは「よい出来だ」と大喜び。しかも「序」の執筆者である福内鬼外が、あの平賀源内だと知り、皆驚いております。

大文字屋が、これは売れて客が増えるんじゃねえか!とはしゃぐと、鱗形屋は蔦重が「序」を頼んでくれたと種明かしをします。

「うちの重三郎が?」

そう驚く駿河屋。鱗形屋はずいぶん丁寧にあらためてくれたと全部バラしてしまいます。

そして駿河屋の目はどんどん険しくなってゆき……。

店に戻った駿河屋は、重三郎を見つけるやいなや、ぶん殴りました。

「勝手なことをしやがって!」と怒鳴り、殴り続けますが、それでも重三郎は改を続けたいと引かない。吉原に客足を戻したいと訴えても、駿河屋から足蹴にされ続けます。

次郎兵衛がそんな父を止めに入るも、叶うわけがねぇ。ボコスカにされる仕置き、継続中です。

さて、何がそんなに気に食わねえんですかね?

これが江戸時代を考えるうえで大事なことで、今回を貫くテーマになっております。

重三郎が吉原の痛みを知らないだの、一方的に搾取しているだの、そんな批判も目にしますが、大河ドラマで序盤からここまでボコボコに殴られる主人公は稀有でしょう。

吉原に生まれ、親に捨てられた時点で彼の人生は道が決まっている。

それが江戸時代中期――彼もまた、哀れな境遇に生きているだけなのです。

 


田沼政治は、どっさどっさ!と儲けたい

まだ諦め切れない蔦屋重三郎に対し、次郎兵衛は「やめとけ」と釘を刺します。

しかし、重三郎はしつこい。親父さんに認めさせてぇ、このままじゃ吉原は廃れるばかりだと一歩を引かない様子。

さて、あの序を書いた平賀源内は、お年玉として田沼意次に『吉原細見』を献上していました。

息子の田村意知が手に取り、面白そうに『細見』を見ています。

意次が秩父の鉱山について尋ねると、どうやら銀は無いようです。ただ、鉄は出る。鉄は掘っても損はないと補足説明しています。

もっと前の時代、『鎌倉殿の13人』ですと、鉄は武器製造に必須であり、坂東武者と製鉄には大きな関わりがありました。

そこからずっと進歩して、今度は貴金属を求めているわけですね。

鉄で銭を作って儲ける政策として、仙台藩伊達家の話を意次が持ち出します。源内もこれを受け「どっさどっさと儲けている!」と相槌を打ちます。

ただ、この仙台藩の政策は失敗に終わっております。

仙台藩から鉄銭を持ち出した人々が、周辺の藩で別の銭に交換する。その交換によって利益が生まれるわけですが、相手からすれば大損。

いわば「悪貨が良貨を駆逐する」状態になってしまったんですね。

結果的に周辺諸藩から抗議され、この計画は頓挫しました。

七代藩主・伊達重村の時代に鉄銭を発行/wikipediaより引用

実は、江戸時代中期ともなると民衆の抗議は割と通りやすくなります。

江戸の人々はお上の理不尽に黙って耐えているわけではない。戦国時代のように、武士層が力づくで民を黙らせることはそうそうできなくなっていたのです。

すると『細見』を眺めていた意知がめざとく、昨年いきなりやってきた吉原者が関わっているのではないか?と気づきます。

意次は蔦屋重三郎に気付き、客を呼ぶ工夫をしたのかと理解し、こう返します。

ありがた山の寒がらすか!」

意次も意知も、人を見る目があるようです。

それで源内が序を書いたのか!と納得する意次。

「これで吉原に人が呼べるようになるのか?」と源内に問いかけると、「それはもう、どっさどっさ!」と笑い返す。

どっこい、そう簡単な話でもないようでして……。

 


『吉原細見』で客が増えるかというと

新たな『吉原細見』が売り出され、正月が過ぎた。

しかし、客足は全然戻っていない。

一体どういうことなんだ?と、重三郎が鱗形屋に話を聞くと、『細見』そのものの売れ行きはよいとのこと。

源内の「序」だったら読んでみてぇな――そう思って買われていっても、読むだけで吉原までは足が向かわない。

そんな分析を鱗形屋から聞かされています。

重三郎は客足の戻りを期待していたわけですが、版元の鱗形屋は本が売れれば良いだけですからね。

鱗形屋は、言葉巧みに重三郎に改を続けてもらうよう、誘導しているんですね。

吉原遊女の情報に詳しい人間がタダ働きで中身を修正してくれるんですから、そりゃありがたいに決まってる。

しかし、駿河屋には反対されている。

「まぁ……俺は親父様に拾われなきゃ死んでたかもしんねえ身の上ですから。んな奴が出過ぎた真似をすんのが気に食わねえんでしょう」

淡々と語る重三郎。

SNSなどでは、重三郎が吉原女郎の苦労を知っているようには思えないという意見を散見します。

それは彼が陽キャだからそう思えるだけでは?

幼いころ両親に捨てられ、駿河屋に拾われ、青年に成長した現在では吉原女郎を相手に貸本屋などができるほど信頼関係を構築しているのに、彼女たちの苦労を知らないわけがないでしょう。

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