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【魏無羨と藍忘機のルーツ】
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無表情だけど愛は深い
といっても、服装だけではまだ足りません。
小龍女は美形とされておりますが、特定のイメージはあります。
丸顔ではなく面長で、表情豊かではなく、冷静であること。喜怒哀楽をおおっぴらに出さないのです。
それでも見慣れてくると、彼女なりの深い愛情や感情がわかるようになる。そんなクールビューティであることが大事。
日本の女優ならば清原果耶さんあたりが近いかと思います。
これまた藍忘機と一致する特徴です。
最愛の人と崖落ちで十年以上離別……
いきなり崖落ちから始める世界観。どういうことなのでしょうか?
これ、ある意味親切設計と言えます。
『神鵰侠侶』では、猛毒に冒された小龍女が「十六年後に会いましょう」と告げて楊過の前で崖から落ちます。ちなみに武侠ものでは崖落ちで重要人物が死なないこともお約束です。
そして長い年月を経ても、二人の愛は変わらない。そこが感動的な話として有名なのです。
落ちる側と、落ちて待つ側という違いはあるけれど。崖落ちで十年以上引き裂かれるところが、まさしく楊過と小龍女!
あの崖落ち場面だけでグッと心を掴まれる人は多いのです。
ちなみに原作では13年の離別が、『陳情令』では三年延長されているのは、どう考えても『神鵰侠侶』を意識しているとしか思えません。
そんな崖落ち離別を見て『神鵰侠侶』を知っていたら、誰と誰が愛し合っていて、どういう話なのかは想像がつきます。
「あっ、崖から落ちて十六年後! そうか、この二人が伝説のカップルなんだな」
そう判断して、ボーイズラブが苦手ならばそっと鑑賞をやめてもよい。
実に行き届いた配慮があると言えます。
小龍女は伝説的で浮世離れしており、しばしば仙女(女性の仙人)にたとえられます。庶民的な小龍女は誰も求めておりません。
隣のお姉さん系女優をキャスティングしてしまった2014年版は批判が殺到しました。日本で最も鑑賞しやすいドラマ版はこの2014年版です。
見るべきかどうか。それは各自の判断にお任せしますが、原作ファンからは大ブーイングであったことはご留意いただければと。脚本も出来が悪いとのこと。
※これでは小龍包とさんざんつっこまれた2014年版
※近年の小龍女役で好評であったのは、2006年版の劉亦菲(リウ・イーフェイ)
しかし、ネットユーザーからのブーイングは収まらず、「小龍女が『小籠包』になった。どうして、毎回女優のイメージが変わるのか?」との声が上がっている。
そこまでハードルが高い伝説人物の男性版。藍忘機は実に高度な像に挑んでいるのです。
この歴代小龍女と並んでも、王一博の藍忘機ならばまったく見劣りはしないことでしょう。
江澄――暴虐のツンと哀愁のデレ
人間関係が同工異曲である『神鵰侠侶』。江澄はこの作品に登場する郭芙の同工異曲と言えます。
先にお断りしておきます。
郭芙は性格が最低最悪であり、武侠ファンならばまず嫌っている、難ありの人物です。
よりにもよってアイツと江澄を比較するな! そういう反発は覚悟の上です。
まずは名前から。
名が「澄」です。これは藍忘機の名である「湛」と似ています。似たところはあるのに、何かが違ってしまう。それは果たして何でしょうか?
彼は字の「晩吟」が切ない。「吟」は苦しい思いを切々と訴えるとか。ぶつくさ言っているとか。そんな意味です。
晩吟――この字は「もう俺のバカバカ!」と夜になってから一人でつぶやく。そんな姿を連想させるのです。
三毒聖手という号からは、二面性も感じます。
毒はあるけど、聖なる手。なんとも複雑な人物像が浮かび上がってくるよう。
彼の武器は紫電という鞭です。鞭は男女双方使うとはいえ、イメージとしては女性的な武器といえます。
息子でありながら、母から紫電を継いでいるところも、彼のヒロイン属性を感じさせます。
人間関係がそっくり
前述した通り、魏無羨は江夫妻に引き取られています。江夫妻の元にいた実子が、江厭離と江澄です。
郭芙は、楊過を引き取った郭家の長女であり、引き取られた楊過に反発する。いちいち楊過に対し「引き取っているのにどうして逆らうの!」と反発してしまいます。
江澄の苛立ちと同じ構図ですね。
ちなみに、引き取った夫婦の母親(黄蓉と虞夫人)が引き取った子の親に悪感情があり、あたりが厳しい点も共通しています。
名門出の重圧
郭芙の両親は、前作『射鵰英雄伝』主人公である郭靖と黄蓉。名門出としての重圧はかかります。
江澄も江家嫡子、のちの宗主としての重圧があります。
アイツに酷いことをした
郭芙は怒りに任せ、楊過に取り返しのつかない怪我を負わせてしまいます。
江澄は、魏無羨を死に追い詰める討伐を開始しました。揃いも揃って、ろくでもないことをしていると言えるのです。
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