『鬼滅の刃』では、主人公・炭治郎の同期5名には特徴があります。
五感が優れているということです。
漫画を読んでいると、とても便利で素晴らしいように思える特徴ですが、そういう単純なだけの話でもない。
一人ずつ考察してみましょう。
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『鬼滅の刃 しあわせの花』(→amazon)
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『鬼滅の刃 風の道しるべ』(→amazon)
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【嗅覚】の炭治郎
主人公である炭治郎は、嗅覚に優れていることがわかります。
登場してすぐに、彼は割れた皿の臭いから、猫の仕業だと見抜きました。
猫は全身を舐めて体臭を消そうとする生き物――そんな匂いすら嗅ぎ分ける時点で、炭治郎には特異能力があるとわかるのです。
【嗅覚】の特異性は、さらに明かされてゆきます。
・相手の臭いで位置を把握できる(「隙の糸」)
・体調や心情まで読み取れる。嗅覚だけで対象者が嘘をついているか、そうでないかまでわかる
単に優れた嗅覚を持つだけでなく、常に頭を働かせているからこそ炭治郎はそれを使いこなせる。
嗅覚でとらえ、周囲の状況を判断し、時に相手の気持ちも察することにより、能力として発揮させているんですね。
では、人は訓練次第で彼のようになれるのか?
嗅覚を鍛えられるのか?
これは炭治郎以外の感覚でもそうですが、【先天性】と【後天性】があることから「誰でも炭治郎になれる!」と断言はできません。
先天性の才能があるだけではなく、鍛錬し、思考し、推理している。
そして周囲の理解や環境があるからこそ、能力を発揮できています。
すべてが合致せねば到達できないスキル。
本稿では、炭治郎のような人物が能力を発揮できる環境も含めて考察してみたいと思います。
【嗅覚】炭治郎のハローワーク
炭治郎が現代にいたら?
そう想像することも、本作は公認のお遊びです。
『鬼滅の刃』のお楽しみ要素に、単行本で描かれる「 中高一貫!! キメツ学園物語 』(以下、キメツ学園)があります。
作者自らが現代パロディをする試みで『進撃の巨人』等にもありますね。
ただのお遊びのようで、彼らのような特徴を持つ人が現実にいたらどうなるか。
なかなか奥深いもので、実際に受け入れられるかどうか?読者のほうが問いかけられています。
その問いかけをもっと掘り下げるため、彼らが社会にいて、仕事を選ぶとしたらどうなるか、ちょっと考えてみましょう。
『キメツ学園』の炭治郎は、パン屋になる設定です。
【嗅覚】のスペシャリストにはどんな職業があるか。
調香師:香りを嗅ぎ分け、生み出してゆく。専門教育が必要です。
香水専門ジャーナリスト:各メーカーの香水を嗅ぎ分ける能力を持った選ばれしプロ。
原材料が天然か、合成か?
調合に変化があったのか?
保存が適切か?
香りから情景やイメージがまざまざと浮かび上がり、脳内に浮かんでくる。
映画化もされたパトリック・ジュースキント『香水 ある人殺しの物語』には、彼らの住む世界が再現されています。
【嗅覚】炭治郎の悩み相談室
そんな【嗅覚】の達人は、素晴らしい芸術性の世界を生きられるようで、それとは逆の困難も想像できます。
生きていくとなれば、よいことばかりでもありません。
現代社会でその能力を考えてみますと……。
◆体臭等が気になってしまう
→教師や上司の体臭が気になってしまうと、彼らには辛い日々が待っています。指摘もなかなかできないことでしょう。今後はソーシャルディスタンスが救いになるかもしれません。
◆香害
→近年、香りが強い柔軟剤が流行しています。その香りにうっとりするどころか、めまいや吐き気を感じてしまう人もいます。
あるいは体育の時間、制汗スプレーを皆が使った後、更衣室に入って頭痛がしてくるかもしれない。
優れた感覚とはそういう困難と紙一重であり、理解されないことも苦しいのです。
『鬼滅の刃』は王道と言われることもありますが、意図的にその手のヒーロー像とは決別しているように思えます。
人間として生々しい苦悩がある。
だからこそ人を惹きつけます。
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