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【聴覚】の善逸
全体的に優等生である炭治郎と違って、善逸は性格の難しさがよりわかりやすく出ています。
ヘタレ、問題児、臆病者。
あんな奴がいることそのものが馬鹿げている――そんな意見も見かけました。
確かに彼の個性は、常識からすればトンデモナイと言えるでしょう。
善逸は突然寝る。
不安感に苛まされている。
臆病。
そのせいか、優しそうな女性相手に対して妄想を見せるだけでなく、自分が気に入った、受け入れてくれそうな相手に依存してしまう。
しかし、ここでは敢えて主張したい。
善逸は、臆病ではありません。
彼は敏感であるがゆえに、危険性を周りよりも感じてしまう。
それに先んじて怯えているだけで、戦う時は「恐怖を我慢して立ち向かえる」のですから、立派なものです。
恐怖を感じない鈍感さと、恐怖を感じた上で戦う勇敢さは別物でしょう。
そんな善逸の【聴覚】は、なまじ音楽が華やかな分野であることから、憧れの眼差しで見られやすい五感です。
『キメツ学園』ならばバンドマンとしてモテ街道を歩んでもよさそう……なのに、そうはなれないところが善逸の哀しさなのかもしれません。パロディネタにはなっていますが。
【聴覚】善逸のハローワーク
音楽関連、耳を使う仕事は想像しやすいかもしれません。
音楽家や作曲家:音楽を作る才能や教育も必要です。
自動車整備工やメカニック等:異音を察知し、不調を探る。ヘタレでビビリ、慎重な善逸には向いているかもしれません。
【聴覚】善逸の悩み相談室
【聴覚】に敏感ということは、本人にとっては辛いこともある。善逸のような人はなかなか大変なのです。
◆睡眠が大事
→善逸は即座に寝てしまいますが、疲労回復という目的があります。学校や職場でも、休憩時間に寝る人はいるはずです。「パワーナップ」という概念も近年はやっと定着しました。けれども、「24時間戦えますか!」と歌い、徹夜自慢をする上の世代からすれば、ヘタレ根性なしと捉えられません。
◆騒音に敏感
→自分の側を電車、飛行機が通過するだけで、苦痛を感じてしまう。そういうところに学校や職場があると、全力を発揮できなくなる可能性があります。
◆選挙前は悪夢だ!
→日本では、ともかく候補者名を叫ぶ選挙カーが走り回ることで有名です。国によっては騒音にあたるとして規制されていますが、そこまで至らない。あれを聞き流せない人にとっては、嫌なものです。
◆飲みにケーションが嫌!
→人の声が複数あるとからみあって、聞き取れなくなることも。レストランのような場所でパニックに陥りそうになっても無理がないところです。ましてやカラオケなんて辛すぎ。
◆買い物だけでもしんどい
→スーパーマーケットの鮮魚コーナーに立ち寄っただけで、魚の歌が流れている。なんか知らんけど流れているラジオやJ-POP。なまじ敏感なだけに、感性が合わないと苦痛です。
善逸は、その優れた【聴覚】ゆえに、テレワークの方が実力を発揮できるタイプかもしれません。
彼の負担を軽減するものは、現代社会に存在します。
◆パーティションで区切られて静かなオフィス
→そんな環境が用意できないなら、今後もテレワーク続行で。
◆イヤホン
→好きな音楽を聴いていれば、かえって集中できる!
◆防音イヤーマフ
→これをつけていれば、不快な音から耳を守れます!
ただ、そういう技術が追いついたところで、人間の意識と社会通念が追いつかねば、それまでのことではあります。
「甘えるな、みんなと話し合って作業しろ!」
「なんだそのイヤホンは、人の話を聞け!」
いくら敏感な【聴覚】について説明したところで、甘えだの、嘘つきだの、理解しない相手もいる。そういう辛さがある。
かっこいいだけではない――それが敏感な【聴覚】の世界です。
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