五感組

amazonより引用

この歴史漫画が熱い!

もしも『鬼滅の刃』五感組が現代に存在したら 一体どんな職が向いてるか?

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理解が大事

五感が敏感な相手は、生まれた時から【理解】が得られず、変人扱いをされ、傷ついていていることが想像できます。

・嘘つき、変な子扱いをされる、理解されない!

優れた感覚で理解したことを、周囲に話すと、時に嘘つきだと思われてしまう。

臭いで原材料がわかる。

音符に色がついて見える。

特定の触感が好きで、お気に入りのぬいぐるみを持ち歩く。

他の人が見落とすものが見えたという。

腐っている、材料がおかしいと何かを食べて気づく。

こういう鋭い感覚を口にすると、当人には思わぬ反応が返ってきたりする。

「考えすぎでしょ」

「嘘つかないで」

「はいはい、おもしろい空想だね」

「気にしすぎ!」

気にしすぎも何も、ありのままに感じてしまうのだから、仕方ない。

そういう感覚を嘘だの妄想だの言われ続けて、当人がどれだけウンザリゲンナリしているか……。

本作は、心の声が過剰であるという批判がよくあります。

あまりに敏感な五感の持ち主は、他の人よりもインプット量が過剰になることもあります。そういうインプット量を再現すると、理解できない、非現実的であるという感想も当然出てくるのでしょう。

・ビビリじゃない! ヘタレじゃねえ!

なまじ感覚が鋭いだけに、不穏な何かや恐怖心を先んじて探知できてしまうこともある。

そういうとき、怯えたり、警戒をするとこう言われてしまう。

「ビビリだなあ。こんなもんなんでもねえだろ」

「ヘタレにもほどがある」

その警戒心が的中したところで、ビビリヘタレ扱いをした周囲は忘れてしまう。

これが一番わかりやすく発揮されているのは、善逸でしょう。

・共感することは得意だけど

相手の感情を理解するのか?

切り捨てるのか?

寄り添えるのか?

それが何度も出てくる『鬼滅の刃』にあるテーマです。

主人公である炭治郎は、鬼を倒すときでも彼らの哀しい過去を理解しようとします。

ただ、炭治郎は精神力を伴っているため、処理し切れておりますが、相手の悲しみに圧倒されて心身まで傷ついてしまわないか、不安に思えてくることもあるのです。

共感は判断力を落とすという意見も、鬼殺隊内部にはあります。それも理解できる判断ではあります。

・心が脆いか、あるいは強いか?

精神力が強いか、脆いか。精神力に開いた穴を塞いでいるか?

そんな要素を見せてくることも『鬼滅の刃』の特徴です。

精神力とは簡単に判断できるものでもないということも描かれています。

ヘタレだのなんだの言われる善逸ですが、夢列車では「異常に我が強い者」であると明かされます。敏感だからびびるけど、自我が強固であるがゆえに異常であるとされているのです。

敏感さと心の強さは別物であることは重要です。

・休ませて!

すぐに寝てしまう善逸はおもしろいといえばそうですが、それだけ疲れるということです。

・自信が持てません

ずっと考えすぎ、嘘つき、妄想だと言われていたら、自分にむしろ自信が持てなくなります。

五感組はじめ鬼滅隊には、特性を理解されているために、実力を発揮できている人が多いものです。

かつて周囲に理解されなかったがために、鬼になって発散している者もいる。

周囲が理解するか、しないのか?

その差は紙一重であると思えばこそ、炭治郎は鬼の思いを汲み取り、鬼も安堵したように消えていく場面が多い。

そんな理解の大切さを見せてくる、繊細な作品です。

 


同調圧力→排除の理論をアップデート

2010年代にこの作品がヒットしたことには、大きな意義があります。それと共に、かつて少年少女だった読者の皆様にも、考えて欲しいこともあります。

五感組のように、敏感な誰かをバカにしたり、嘘つき呼ばわりをしたり、除け者にしなかったかどうか。

近所、学校、職場にいたそういう人を、

「考えすぎじゃないの?」

「もっと素直に見ればいいでしょ!」

「妄想乙w」

だのなんだの、一蹴していなかったかどうか。

敏感であることを、ヘタレだのビビリだの言っていなかったかどうか?

『鬼滅の刃』の低評価を見ていると、怒りや激しい反応もしばしば見られます。憎悪をこめて、吐き捨てるようなレビューが多いのです。

もっとすっきりと戦え!

かつての少年漫画にあった豪快さがない!

説教くさい主人公だ、こんなもの納得できるか!

キャラクターの行動が理解できない!

理解できないのだとすれば、それは当然のことだとは思います。

炭治郎はじめ、本作の人物は身近にいる平凡な人物のようで、感覚の範囲が異なるものが多いのです。

人は、理解が全くできない存在に対し、同調圧力を加え、それがダメなら「排除する方が楽だ」と考えてしまいます。

『鬼滅の刃』を見て生まれるモゾモゾとした感覚が、不安や怒りに変わり、やがて長文のアンチレビューを書いてしまうのでしょう。

ゆえに私達は意識せねばならないのでは?

世の中には、感覚の範囲が普通とは違う人がいる。

というか、そもそも普通って何なのか? 普通の範囲を疑ってみませんか――。

そんな問題提起を促す『鬼滅の刃』は、紛れもなく有用な作品です。

「ねえねえ、あの子、音がうるさいからいつもイヤーマフつけているんだって。何なんだろうね」

「善逸みたいな状態なんだよ。聴き慣れない音があると、怖くなってしまうから。自分を守るためにそうしているんだ」

こんな風に考え、見守ることができたら、どれだけ良いでしょう。

もちろん、マンガですから何も考えずにパーッと楽しむのも、それはそれで結構なことです。

しかし、本作にはそれだけでは捨て置け無い深みがある。

『鬼滅の刃』の想定読者は2010年代の子どもたちであり、ジャンプ黄金期を生きた元少年少女は今や親や祖父母の世代ですよね。

本作を機に、ご自身の子供・孫から、価値観のアップデートを学ぶ良い機会かもしれません。


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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link

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