島津斉興

島津斉興/wikipediaより引用

幕末・維新

斉彬と久光の父・島津斉興~藩財政を立て直し薩摩躍進の礎を築いた功績に注目

大河ドラマ『西郷どん』で鹿賀丈史さんが演じて話題になった、薩摩藩主の島津斉興――。

その横に座る側室・お由羅(小柳ルミ子さん)とセットで、『あぁ、あのダメなお父さんね~』とイメージしてしまう人が増えたと言います。

無理もありません。

主役の西郷隆盛(西郷吉之助)も、そしてその吉之助が尊敬する次藩主の島津斉彬(渡辺謙さん)も、揃いも揃って島津斉興を軽く扱っており、なんなら薩摩藩のお邪魔虫ぐらいの扱いでした。

不人気になって仕方ない話ですが、かといって史実までそう受け止めてしまうのも妙な話でしょう。

実はこの島津斉興、ボロボロになった薩摩藩の財政を建て直した人物と言える。

正確には、彼の重臣が中心となって改革を進めたのですが、その結果なくして、島津斉彬の幕府に対する影響力も、西郷隆盛の台頭も、大久保利通(正助・一蔵)の明治政府もなかった――そう断言して差し支えないほどに、薩摩藩に影響を与えています。

安政6年(1859年)9月12日はその命日。

ドラマでは窺い知れなかった島津斉興に注目してみましょう。

 


「江戸生まれめ!」←自分も江戸生まれです

島津斉興は寛政3年(1791年)、江戸で生まれました。

大河ドラマ『西郷どん』では、折り合いの悪い我が子・島津斉彬(渡辺謙さん)に対し

「江戸生まれめ!」

なんて悪態をついておりましたが、そもそも彼自身も江戸生まれだったんですね。

というか、それだけでなく彼の父・島津斉宣も江戸生まれ。

参勤交代制度で江戸暮らしを課されていた当時の藩主一家としては、むしろ一般的な話です。

ただ、斉興の場合は、生母の実家がなかなかのトラブルメーカーでした。

斉興の生母・八百は、浪人である鈴木甚五郎の娘です。

後に斉興自身が、同じく身分の低いシンデレラガール・お由羅を側室にしており、ドラマ等では異例だのなんだの言われますが、実はそこまでおかしな話ではありません。

ただし、八百の実家・鈴木家の場合は、別の問題がありました。

「うちの娘が薩摩のお殿様の子を産むなんて、大変なことだよ!」

そう浮かれた八百の母や家族が「生活費くださいよ~」と島津家にねじこんできたのです。今で言えば、いわゆるDQN一家的な香り……。

島津家としても、これには相当困ったことでしょう。

とりあえず、一代に限り、生活費と住居を与えることで済ませております。

 


祖父・重豪が金をバンバン使ったせいで……

文化6年(1809年)、斉興は藩主に就任します。

キッカケは、父・斉宣の藩政改革挫折のあおりを受けてのこと。

当時の実権は、コワモテの祖父・島津重豪が握っていたため、若き藩主として藩政に取り組む――そんな爽快感とは無縁のスタートでした。

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息子の島津斉彬が藩主に就任する際にゴタゴタが起きたり、その斉彬が死んだ後に、斉興が再び島津家の実質トップに返り咲いたり、彼らの周囲が何かとお騒がせな政治体制だったのも、斉興自身が過去にストレスフルな藩主生活を体験していたからかもしれません。

そんな祖父・重豪が亡くなったのは天保4年(1833年)のこと。

やっと俺の時代が始まるぜ!

しかし斉興に待ち受けていたのは借金のそびえ立つ山でした。

「総額いくらの借金があるのだ?」

「500万両でごわす」

「んなっ……!?」

メンタルの弱い藩主なら、プツッと何かが切れ、やけっぱちになって酒池肉林ライフを送るとか、引きこもるとか、そんな現実逃避をしてしまいそうな状況です。

普通に考えれば財政破綻をしている自治体のようなもの。

助けてくれる国もなく、途方に暮れるような状況でした。

 


経済感覚に優れると同時に冷酷な判断も

そんなとき斉興に心強い味方が現れます。

「殿、こん調所笑左衛門がおいもす。共に、こん借財を何とかしていっもそか。殿のためなら、おや鬼にんもんで」

調所広郷――。

彼は、経済感覚に優れると同時に冷酷な判断もいとわない、デキる男でした。

借金帳消しのためならば、鬼と呼ばれてもいとわない本物の忠臣。西郷どんでは、竜雷太さんが演じられておりましたね。

西郷隆盛(西郷吉之助)とは立場が異なるため、なにやら悪い印象で描かれておりましたが現実はさにあらず。

調所広郷
ボロボロの財政を立て直したのに一家離散の仕打ち~調所広郷が薩摩で味わった苦悶

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斉興と調所は、二人三脚による藩政改革を進め、ついに借金は何とかなりました。※詳細は上記の調所広郷記事をご参照ください

しかし、やっと一息つけると思ったら、今度は別の試練に襲われます。

【欧米列強による外圧】です。

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