桐野利秋

桐野利秋/wikipediaより引用

幕末・維新

桐野利秋(中村半次郎)は幕末最強剣士か?人斬り半次郎の生き様・実像に迫る

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桐野利秋(中村半次郎)
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それは「桐野の戦争」だったのか

明治維新のあと、桐野利秋と改名。

陸軍少将にまで出世しました。

藩閥政治の結果というよりも、それだけの実力があったのでしょう。

そして明治6年(1873年)、征韓論が原因となって西郷が下野すると、桐野も彼について鹿児島に向かいます。地元で畑を開墾をし、私学校で指導をしながら過ごすことになったのです。

もちろん、そのままでは済まないワケで……。

現政府への不満から、立て続けに不平士族の反乱が勃発。

神風連の乱(不平士族の反乱の一つ)を描いた錦絵/wikipediaより引用

迎えた明治10年(1877年)、西郷らのいる薩摩において「火薬庫襲撃事件」が起き、「西郷暗殺計画」が桐野にも伝わりました。

暗殺計画まで立てられて、桐野のような男が、どうしておめおめと引っ込むことがどうしてできましょうか。

かくして暴発する桐野らに引きずり出されるようにして、西郷は戦争に身を投じることになってしまったのです。

後に「西南戦争は桐野の戦争だった」とまで言われたりします。

本当にそうだったのか……。

西南戦争を描いた錦絵、桐野の姿も見える/wikipediaより引用

暴発しやすい短気というイメージがある桐野に、西郷をかばうために、責任を背負わせている面があるのでしょう。意見が暴発するような局面では、誰か一人の責任を問うのは難しいわけです。

大西郷になすりつけることは、憚られる。

そこで選ばれたのが、桐野利秋であるように思えてなりません。

「人斬り半次郎」というイメージも、こうした事情から膨らんだものでしょう。

桐野は、最期まで西郷に付き従った側近の一人でした。

敬愛する西郷の死を見届けています。

そして1877年9月24日、額を撃ち抜かれて戦死しました。享年40。

 


桐野のシルクハット

人斬りというイメージが先行し、どうにも印象が悪化してしまった桐野。

しかし、彼には南国薩摩の愛すべき「ぼっけもん(大胆な人、乱暴者)」の一面がありました。

彼はお洒落で、身の回りの品には気を配っていました。

ドラマ『西郷どん』ではボロボロの布切れに身を包む、極貧少年の姿で登場しましたが、実際は美意識が意外にも高いのですね。

軍服はオーダーメイドのフランス製。

金の懐中時計。

腰のサーベルは、銘刀・正宗を仕立て直したもので、金の鍔に銀の鞘がきらめくというもの。

体からは、フランス製香水の芳香が漂っていました。

そんな桐野は、西南戦争の最後となった「城山の戦い」において、なぜかシルクハットをかぶっておりました。

準備も十分でないまま始まった西南戦争では、服まで不足していました。

桐野は鹿児島の官舎から紳士服を略奪していたのですが、そこにシルクハットが混じっていたのです。

城山の激戦の最中、場違いなシルクハットを被っていた桐野。悲惨な戦いですが、ちょっとユーモラスでもあります。

と同時に彼は「シルクハットの持ち主が誰なのか」、そんなことを気にしていました。

捕虜の中に、県庁職員がいると知ると、持ち主について尋ねます。

そしてその捕虜に、服を借りたことを詫びる書状を託して解放したというのですから、几帳面というか、何というか……憎めない。

西郷が自決した洞窟

人斬り、無教養、猪武者といったイメージが強いようでいて、情に篤い面や義理堅い面も備えた桐野。

西南戦争を背負わされて割を食っている部分がある人物です。

本当に人斬りであったのか、それとも他の部分があるのか。

現在もその像の解明が進んでいます。


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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link

【参考文献】
国史大辞典
桐野作人『薩摩の密偵 桐野利秋―「人斬り半次郎」の真実 (NHK出版新書 564)』(→amazon
関良基『赤松小三郎ともう一つの明治維新――テロに葬られた立憲主義の夢』(→amazon
泉秀樹『幕末維新なるほど人物事典―100人のエピソードで激動の時代がよくわかる (PHP文庫)』(→amazon

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