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【三国志美女の時代考証・イラストの描き方】
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髪型は?
髪型も、なかなか面倒なことになっています。
本場の中国でも、放映当時の流行を反映しているもので、ロングヘアにシニヨンを作ってヘアアクセサリを使えばいいんじゃない♪ というノリの作品も多かったりします。
『三国志』の場合、定番の参考絵画はあります。
東晋の絵画『女史箴図(じょししんず)』です。
世界史資料集あたりでご覧になられた方もおりますでしょうか。
当時の女性風俗を描いた絵画として、それはもう参考になるものですが……こうは言いたくなります。
「どういう結い方してるんだよ!」
はい、これはもうわからないとしか言いようがない。
基本的に上流階級の女性は、侍女に結わせており、一人ではできません。それを絵にするのはかなりの難易度ですし、再現したところで美女らしく見えるかどうかも問題ではあります。
むろん、あの絵から当時のあるべき美女の髪型はわかるのです。
・前髪を作らないこと
→まったくないわけでもありませんが、あると幼い印象が強くなります。既婚者、20代以上は避けた方がよいでしょう
・黒髪ストレートが前提
→逆に、不美人設定がある諸葛亮の妻・黄氏をウェーブヘアーの茶髪にするという手は使えます。当時の基準では不美人でも、現代からすれば美しく見えるのようできるわけです
・毛先があらわになるようには垂らさず、結って頭上でまとめることが基本
ただ、髪型も「現代人が好きなようにすればいいでしょ!」という話でもありまして。
男性も含め、イケメンはバッサリとそのまま流すことが本場でも定着しております。最近は、ドレッドヘア、細い三つ編みにビーズやアクセサリを編み込む時代劇イケメンヘアスタイルも出てきているほど。
辮髪にしちゃうとか。金髪にしちゃうとか。際立ったものを用いず、それっぽく見えればよろしいかと思います。
そしてこれも注意点!
日本人が「中国人の髪型」としてやらかしがちなお団子ヘアー。
『ストリートファイター』シリーズの春麗や『銀魂』の神楽のものが典型例ですが、あれは「丫頭(あとう)」という年少の女中定番のものです。
有名武将の妻ではなく、そこへお茶を運んでくる少女というイメージで捉えた方がよろしいかと思います。
「なぜ日本人は、あれが中国の伝統的な女性の髪型だと思っちゃったのかな?」
ということで、ちょっとした謎現象なのです。
インパクトに残ったんでしょうね。
アクセサリーは?
中国はアクセサリーの国。日本よりもバラエティ豊かです。
「やっぱ好きな子にはアクセサリーを贈ってこそ、イケてる男じゃね!」
そんな意識は『三国志』の皆さんにもありました。
例えば曹操が卞氏(曹丕や曹植らの母)に耳飾りを送った話は有名です。
曹操はアクセサリ類を入手すると、妻たちに選ばせていました。
すると卞氏はそこそこイケてる中級クラスを選ぶ。
気になって曹操が尋ねてみると、こんな答えが帰ってきた。
「高いものばかり選ぶのは、欲深くてどうかと思うし。かといってこれみよがしに安物ばかりを選んでも、アピールしすぎでしょ。そういうことをふまえると、それなりのものに落ち着くよね」
「そこなんだよな!」
曹操は当時の男性として、当然ながら外戚政治の排除(妻の実家の影響力を削ぐこと)を念頭においていたことでしょう。
卞氏は派手なことは好まず、常に謙虚なバランス重視タイプで、自分の一族を出世させるようなことは好まなかったのです。謙虚さと賢さゆえに、彼女は曹操の心を掴んだのでした。
そういう性格が反映されるものとして、装飾品を使うのはありだと思います。
中国風のアクセサリは販売されておりますので、それを参考にするとよろしいかと思います。漢字をあしらったものは、描く時に面倒なのでおすすめはできかねますが。
時代劇や映画だけでなく、気軽に参照できるものとして『ミラクルニキ』のような中国語圏発祥の着せ替えゲームもお勧めします。
中国では若い女性世代に時代劇が大人気。日本でも最近ブームが来そうですね。
そうした背景もあり、時代劇ファッションを再現するアプリは大好評なのです。時代考証がしっかりしておりますので、遊びながら参考にするのはありだと思います。
アクセサリーは細かいようで、性格が出るので大事です。
卞氏があまりに派手なアクセサリーを身につけていると、曹操がクレームを入れたくなるのでご注意ください。
「俺の卞ちゃんは派手過ぎねえし! そこがいいんだよぉ!」
各人の個性も大事です
卞氏は地味大好きで、装飾品も日用品もともかく質素でした。
曹操自身が倹約大好きで、自分の墓すら地味にしろと言い切っていたので、そういうことなのでしょう。
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曹植の妻・崔氏に至っては、服装が派手すぎると曹操が激怒して、死を賜っているのですから、さすがにやりすぎ感も滲んできますが……。
曹操のイヤすぎるドケチ伝説はさておき、そういう性格ゆえのファッションや表情演出も大切です。
おてんばで気が強い孫権の妹・孫氏ならば、ボーイッシュで強気な表情にしたい!
貂嬋については、大勢のクリエイターが憂国の志を持って悩んでいるところを賞賛。「貂蟬拝月」は、悩んで月を見る貂蟬が題材です。
「そういう意識の高さを絵に出して!」
伝統的な観点からいくと、そうなります。
絶世の美女であり、かつ意識が高い表情にしてみてはいかがでしょうか。
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楽しんで描くことが大事ですので、そこをまず考えていきましょう!
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文:小檜山青
絵:小久ヒロ
【参考文献】
陳寿/裴松之『正史三国志』(→amazon)
他